師走に入り、みなさんお忙しい日々をお過ごしのことでしょう。
政界では、12月31日の政党交付金の公布の基準となる12月31日をめぐり、静かに政局争いの攻防戦が起こり、永田町はより一層ばたばたなようです。
今年を振り返ると、
・4年に一度の「統一地方選挙」
・18歳選挙権が実現
と、実はとても「選挙イヤー」な1年でした。
選挙年齢は1945年以来、実に70年ぶりの引き下げで、引き続き来年以降も話題になることが期待されます。そんな「選挙イヤー」だった2015年を振り返るべく、「2015年印象に残った選挙ベスト3」を簡単にまとめてみました。
第3位 5月17日 大阪市特別区設置住民投票
橋下徹大阪市長率いる維新の党の中心政策である「都構想」を巡る住民投票が第3位です。
賛成が49.6%、反対が50.4%と、とても紙一重の選挙結果でした。
また、世代別に投票結果を見ると、20代から60代の間では賛成が上回っているのに対し、70代以上が反対を上回っており、高齢者の票の影響力の大きさが注目されました。
「シルバーデモクラシー」という言葉が頻繁に飛び交っていましたね。
「住民投票」は公職選挙法の定める「選挙」ではありませんので、選挙前の広報活動も、公職選挙法のルールに縛られる必要がありません。
その結果、「1週間で数億円のテレビCMを流す」「選挙運動員(ボランティアのお手伝い)の人数は数百名!」といった大規模な選挙運動が見られました。
(通常の選挙ではチラシの枚数の制限、選挙運動員の数は10名程度までと決められています)
東京にいると体感としては分かりませんでしたが、大阪では街全体が盛り上がり、まるでアメリカ大統領選挙のようだったようです。
ちなみに、僕も、「このお祭りを体験しなくては!」と、人づてに「OneOsakaのTシャツ」を入手し、いまでも毎日大事にパジャマにしています。
第2位 9月13日 山形市長選
山形市長選挙は選挙ドットコムでもかなりの注目を集めた選挙でした。
参考:山形市長選挙ルポ(前編)あらゆる点で常識外れな死闘しかも記録的な大雨の中で
地方のひとつの市の選挙ですので、普段だったらそこまで注目は集まらないのでしょうが、9月19日に可決された安保関連法案の影響を大いに受け、注目を集めました。
自民・公明・次世代・改革の推薦を受けた佐藤候補VS民主・共産・社民・生活の推薦を受けた梅津候補、という完全に安保関連法案と同じ構図が出来上がっていました。
民主・共産・社民・生活側は、地方選挙にも関わらず、熱心に安保に関して言及していました。
結果も僅差でした。
佐藤孝弘:56,369(当選)
梅津庸成:54,596(落選)
さらに、未だに揉めている維新の分裂の原因となったのも、この選挙でした。
維新は党としては態度を決めていなかったのですが、柿沢未途幹事長(当時)が梅津氏の応援に拘った結果、松井一郎大阪府知事が幹事長の辞任を要求し、分裂劇が始まっていきました。
分裂有りきで、その引き金を探していたとも言われていたのですが、12月2日に解党に向けた糸口が見つかるまで3ヶ月程度もかかったことを考えると、山形市長選の影響の大きさを感じます。
なお、佐藤市長はその後、議会の答弁に対して「短歌」で返答するなど、活躍ぶり(?)を見せています。
参考:質問に短歌で答える山形市長10首披露し議場沸かす(12月2日朝日)
ちなみに・・・海外では?
11月8日 ミャンマー総選挙
アウン・サン・スー・チー氏率いる国民民主連盟(NLD)が圧勝した選挙です。
70年以上も続いていた軍部主導から民主化へと向けて、ミャンマーが動き出しており、これは歴史的にも意義のある選挙でした。
しかし、「外国人の家族がいる人物は正副大統領になれない」という憲法により、アウン・サン・スー・チー氏自身が大統領になることができなかったり、議会では引き続き、非改選の議席を4分の1を軍部が確保しているなど、今後も課題が山積みです。新体制に移行するのは年明け以降の予定で、今後も目が離せません。
第1位 4月12日/4月26日 統一地方選挙
皆様の住む地域でも選挙があったのではないでしょうか?
全国1,788の地方自治体の内40%ほどの自治体で選挙が行われました。
知事では、宮崎・愛知・山梨・鳥取・三重・北海道・神奈川・福井・福岡・大分・島根・奈良・福島・青森・群馬・埼玉・岩手・大阪・高知の19道府県で、議会は東京と沖縄を除く45道府県で行われました。
国政選挙ばかりが注目されがちですが、自分の住む地域の選挙は、その後の生活にも直接影響してきますので、身近で大切な選挙でした。
そして、今回の選挙では「聴覚障がい」を持った2人の議員が誕生しました。
参考:障害当事者の声届けたい明石市議の家根谷さん東京都北区議の斉藤さんら初の一般質問(6月17日産経)
ひとりは筆談ホステスとの名称でも有名だった東京都北区の斉藤りえさん。そしてもうひとりは、兵庫県明石市の家根谷敦子さん。
手話を中心にする家根谷さんの選挙では娘さんが手話を通訳するという街頭演説、口話法を中心とする斉藤りえさんは街頭演説は行わず、筆談を中心とする「音の無い選挙」を行なっていました。おふたりとも知り合いだったわけでもなく、事前に連絡を取っていたわけでもなかったそうです。なのに、全く同じタイミングで障がいを持った方が、関東と関西で誕生したことから、「政治の世界が変わって来てる!」と感動したことを今でも覚えています。
さて、来年は7月に参院選が予定されています。
ここに来て、「衆参同時選挙」の可能性も出てきました。
来年も大きな選挙が続くかもしれませんね。
選挙から目が離せませんが、単なる政局分析に留まらず、その選挙の持つ意義や影響まで考え、皆さんにお伝えできるよう努めていきます!
増沢諒:食べる政治代表
1988年長野市出身。早稲田大学卒業後、ITベンチャーでの勤務を経て、現在、東工大大学院修士課程。研究テーマは「ネットと政治」。ネット選挙解禁を目指す活動「One Voice Campaign」をはじめとし、様々な啓蒙活動を展開。2014年マニフェスト大賞受賞。
Twitter:mojamoja_megane
WEBサイト:http://taberuseiji.com/
編集部より:この記事は、選挙ドットコム 2015年12月3日の記事『18歳選挙権に、シルバーデモクラシー…選挙マニアの僕が2015年を選挙から振り返った』を転載させていただきました(見出しはアゴラ編集部で改稿)。オリジナル原稿をお読みになりたい方は選挙ドットコムをご覧ください。