北米らしいザッカーバーグ氏の社会還元

フェイスブックの創業者であるマーク ザッカーバーグ氏が氏の持つ同社の株式の99%を慈善事業に使うと公表しました。その額450億ドル、円換算で5兆4000億円にも上ります。

高く称賛したいと思います。

ちょうどこの時期は各方面の寄付集めがピークを迎える時です。様々なNPOが様々な目的意識をもって慈善活動をするのは北米の風物詩であります。私も一定のことは毎年させて頂いております。

私が日本に住んでいた時は寄付という言葉は何か遠い話のように思っておりました。せいぜい、歳末助け合い運動ぐらいだったと思いますが、今でもやっているのでしょうか?

寄付の習慣が特に北米で強く根付いているのは宗教の博愛精神が背景にあることは否定できないでしょう。特にクリスマスを含むホリディシーズンは全ての人が暖かく、幸せに過ごせるように、という気持ち、そして今までの幸せに感謝し、その一部を恵まれない人とシェアする発想であります。また、歴代大統領をはじめ、政財界のリーダーたちが率先して多額の寄付、ないし、社会貢献をし続けてきたことはリーダーとして当然の振る舞いであり、高い尊厳につながっていくと見られています。逆説的に言えば寄付や社会貢献をする心を持ち合わせなければリーダーになれないともいえそうです。

フェイスブックのザッカーバーグ氏の場合、氏の子供が出来たことでその考えが固まったようです。神に感謝ということでしょうか?彼の場合はユダヤ教ですが、ユダヤのクリスマスに当たるイベントは12月7日のハヌカですのでそれも考えての発表だったと思います。

それにしても5兆4000億円とはとてつもない金額ですが、彼はそれでも残り1%は自分の分として持っているわけでその価値だけでも500億円相当あります。更に彼はまだ若く、新しいビジネスはいくらでも生み出せるわけです。となれば、正直言って彼の持つ巨額の株式価値は用途として意味のない資産であり、個人で使い切れるものでもなく、北米の場合にはせいぜい、ファミリーツリーを太くするぐらいになろうかと思います。

最近は裕福な親元に育った子供たちが働かない、長続きしない、汗をかかない、努力しない、パラサイトになる等の社会問題が存在します。それを考えると成功して巨額の富を得たところで家族皆が幸せかといえば必ずしもそうでもないわけです。社会貢献では横綱級のウォーレンバフェット氏にしてもコーラとハンバーガーの生活を崩していないと理解しています。ビルゲイツ氏も若かりし頃、私がのちに経営を任されたシアトルの日本食レストランで照り焼きチキン定食を食べるなど着飾らない普通の印象があります。

金持ちだから毎日うまいものを食い続け、セレブなライフをしているかといえばそれはゴシップ記事に出てくるようなごく一部の層であり、それも毎日そんなことしているわけではないのです。フィッツジェラルド氏の「華麗なるギャツビー」で描かれていた1920年代の良きアメリカに於いて上層階級が毎週末狂ったように華やかなパーティーを開くといったスタイルは今や単なる成金のレッテルを貼られるだけかもしれません。

もう一つ、収入格差として99%と1%といった問題が過去生じていますが、少なくとも北米では社会還元装置がワークしており、成功した富裕層が札束を大事に抱え込んでいるわけではないことはあまり大きく取り上げられません。また日本でもほとんど体感として理解できない部分ではないかと思います。

この社会還元装置ですが、必ずしも成功した富豪だけの話ではなく、ごく一般の市民が出せるお金や社会貢献を積み上げていることがもっと重要です。そういう意味での社会の豊かさは日本はまだまだ未成熟であり、学ばねばならないところではないでしょうか?外から見ると日本人は強欲な感じがします。相続で揉める兄弟姉妹の話を聞くと何か寂しいものがあります。清貧とは日本人を表すとても良い言葉でありますが、人々のお金に対する貪欲さは必ずしも清貧とはいかないのでしょうか?もちろん、北米の人も皆が皆というわけではありません。ただ、その比率はかなり違う気がします。

欧州をみても難民を受け入れるドイツのボランティア精神は尋常ではありません。メルセデスベンツなど代表的企業が難民に仕事を教え、一日3時間半もドイツ語を教え、多少の報酬を与えるといった草の根の体制は見習うべきものがあるのではないかと思います。

では今日はこのぐらいで。

岡本裕明 ブログ 外から見る日本、見られる日本人 12月4日付より