確定申告の季節である。自営業者や副業収入のあるサラリーマン、また所得が2000万円を越えるサラリーマンは毎年この時期税務処理で忙しい。筆者も様々な書類を整理して税理士に渡したところである。筆者は常々税制が国の形を決めると思っている。日本がこれからのグローバル経済の中で生き残っているいくためには、思い切った税制改革が必要だ。がんばった人に報いるフェアな税制が求められているのである。政府はそういったフェアな競争のフレームワークを提供しさえすれば、優秀な日本人は自ずと創意工夫を重ねて世界が驚くようなモノやサービスを次々と産み出していくだろう。
そこで今回は所得税の改革案を提示したい。アジアでは香港やシンガポールを筆頭にスタンダードになりつつあるフラット課税、つまり定率の所得税である。アジア諸国間で世界の優秀な人材を獲得するための競争が激化している。いわゆる”War for Talent”に日本も巻き込まれつつあるのだ。日本も優れた人材獲得のため、世界の趨勢となっている低率のフラット課税を可及的速やかに実施するのが喫緊の課題となっている。
筆者は所得税を10%フラットにするのが理想だと考えている。これで個人に対する課税では香港やシンガポール、それに韓国や台湾といったアジア諸国に対抗できる。また日本は深刻な財政問題を抱えており、歳入を増やすことが大きな課題だが、所得税を定率の10%にすることによって大幅な税収アップが可能である。
フラット10%の課税で大幅な税収アップが期待できるのだが、それは何も労働インセンティブが高まるだとか、ラッファー・カーブを持ち出すまでもなく、現在の日本の平均所得税率はそもそも10%よりはるかに低いという事実による。国税庁による平成21年分民間給与実態統計調査によれば、平成21年末での給与所得者数は5400万人。民間の事業会社が払った給与総額は192兆円。192兆円から支払われた所得税は7.5兆円。平均所得税率はなんとわずか3.9%なのである。つまり所得税率を10%に引き上げれば、10兆円以上の税収増が簡単に実現できるのである。
日本は低・中所得層の税負担が極めて軽い一方で、所得税の最高税率(所得の1800万円以上の部分にかかる税率)が住民税とあわせて50%と世界で最も重い。大多数の日本の給与所得者が所得税を払っておらず、過酷な税が課される高所得者層の人数は非常に少ないので、平均した所得税率はおどろくような低率となっている。これが高所得者層の海外移住を加速させ、また、高所得者の海外から日本への流入を阻んでいる。そして結局はそういったツケが低・中所得層に返ってくるのである。愚かなポピュリズム政治ここに極まり、だ。
社会の共通経費を皆でフェアに負担しあうのは当然のことである。一部の高所得者にだけ過酷な重税を課すというのは、いかなる理由をもってしても正当化することはできない。また、そうやって金の卵を生むガチョウを日本から追いだしていくことは、結局は税負担を巧妙に逃げたと思っている層をも苦しめていくとになるだろう。
このように所得税をフラット10%にして、がんばる人に報いる政治をするという強いメッセージを世界に発すれば、日本はまだまだ世界から優秀な人材を惹きつけることができる。何よりそれは抑圧されていた日本人の創造性を解放することでもあるのだ。経済が発展したくさん金持ちがいる国のほうが、弱者を守る社会福祉がはるかに充実するだろうことはいうまでもないだろう。
参考資料
今後は普通のサラリーマンが一番増税される、金融日記
「租税競争」に日本は生き残れるか、池田信夫、Newsweek
平成21年分民間給与実態統計調査、国税庁
コメント
低所得者層が税金をほとんど払っていないのはもちろんですが、サラリーマン家庭の主婦は年金を負担しなくてもいい制度になっていて、自営業者よりも有利な立場です。もちろん自営業者は税金を誤魔化しているからというのもわかりますが、サラリーマンの多くもあまり税金を払っていません。
それなのに税金が高いと言ったり自営業者を批判しているのだから滑稽です。実際に所得税を払っているのは高所得者層がほとんどです。自営業者も高所得層はほとんど誤魔化せません。というより誤魔化す余地がありません。誤魔化せる自営業者は元々所得が少ない人です。それなのに自営業者への批判がやみません。この国の国民の異常な嫉妬心には末恐ろしいものがあります。少しは無責任な低所得者層にも税金を支払わせるべきです。
10%は国税のみの部分かどうか分かりませんが、国税のみならそれだけで十分だと思います。消費税も国税分は10%+α(地方税)で法人税も同様にすれば、むしろ税収が増えるでしょう。何しろ儲かっても脱税する気のおきない税率なので、わざわざ誤魔化すのも馬鹿馬鹿しくなります。手元にお金が残るのなら余計な節税もしなくなります。
フラット化は節税のために働く時間を減らそうとするインセンティブも消滅させ、結果的に女性の社会進出も促していくことになると思います。
こういう当たり前なことがわからないのは日本の病なのでしょう。
私は社会の目的は第一に国防、第二に治安維持だと考えているので、その考えには反対です。経済はそのあとの問題だと思います。
高所得者から低所得者へのお金の(強制的)移転がなくなると貧富の差が加速的に進み、国防や治安維持を担う層は低所得者のみになります。
これが社会としての国防や治安維持能力の低下を意味する事は明らかでしょう。
国防に関しては、日米同盟に頼るという考えがありますが、これは米国に切られれば終わりというリスクがあまりに大きいと思います。自分の国(社会)は自分で守るというのが基本でしょう。
治安に関しては、経済が発展して金持ちがたくさんいてもその金持ちが常に自分や自分の家族が誘拐されるリスクをかかえる国(社会)が良いとは思えません。
私は累進課税には国防と治安維持の観点から大きな意味があると思うのです。
補足:
私は日米同盟に完全に賛成ですが、それに頼りすぎるのはかえって危険だと考えています。
所得税フラット10%は、悪平等を好む日本人からは「貧乏人から毟り取る悪税」と叩かれるかもしれませんが、日本の未来をきちんと考えるという意味では大変興味深い提案かと思います。
税制を考えるという事で、フラット10%に付け加える案として下記を提案します。
1)国民背番号型身分証を全国民に持たせて、
2)税金の給料天引きを止めて、
3)企業が税務署へ申告する労働者の賃金所得と、
4)労働者個人からの税務署への申告を、
5)税務署が国民背番号で名寄せ可能にして、
6)双方の申告額を背番号毎に確認できるようにする。
7)監査法人は、企業が労働者の所得を税務申告しないと人件費として経費計上を認めないようにする。
以上で、企業が人件費として経費計上する、あらゆる人件費について、を税務署は課税対象としてカバーできるようになり、生活費を経費計上可能な自営業経営者以外の給与所得者全員にとってフェアな条件になります。
更に追加提案:
8)労働者の年間の非課税限度額を、一人あたり100万円(限度額は調整可能とする)
9)夫婦の年間所得を合算して申告できるようにする。
10)夫婦合算の場合、2人分の非課税限度額を足す事ができる。妻が専業主婦の場合、夫の収入の非課税限度額が200万円になる。
これで、専業主婦も夫の非課税限度額を倍にする役に立ち、税制上の存在意義が生まれます。
がんばる人に報いる税制というのは、なんでもあるけど希望だけが無い日本に、「希望」を生み出す灯りになるかもしれませんね。
石水
詳しい方に、教えて頂きたいが、566万8000円が平均所得で、中央値が451万円なのに、どうして、平均所得税が3,9%なんですか?所得が、195万円以下でさえ、5%ですよ。
大賛成です。自営業とかだと、社長が稼ぎまくっても給料でとれないんですよね。奥さんとか親戚を役員にして給与を付けないと大損するような気がすると。税率がフラットだとそういうこともなくなります。節税を考えなくてもいいわけで公平性の観点からいうと、こんなに公平なことはないですね。
余談ですが、その点、医療法人なんか酷いですよ。最近の法改正で、今後医療法人の解散時には、残余資産は国が没収することになってるので、開業医はとにかく法人に資産を残さないように給料をうたないといけない。しかし税金が馬鹿にならないと。とにかく節税に汲々としてる開業医は多いみたいですね。
全体像としては大賛成です。所得税をフラット10%にすれば、税収もアップするというのが事実ならば、早速やるべきだと思います。しかし、「優秀な人材を日本に集まられる」という期待には少し疑問があります。それは、今回の金融危機は特に、アメリカでは中間所得者層が10年近く実質給料が上がらず、経済成長を維持するために、無理やり借金付漬けにしたという歪んだ事実があるからです。
ジャックアタリも指摘するように、今後ソブリンリスク(国家債務)の償却の時代に突入します。現在、先進国の債務はあまりにも巨額になりすぎて、いつ国債の暴落が始まってもおかしくない状況にあると思います。しかし、国家債務の歴史を見てみると、そんなに珍しい話ではなく、国家債務危機は通常、インフレや戦争でカモフラージュされてきています。
「グローバリゼーション」という命題の下に、このまま自由貿易が発展することはないと思います。私は、保護主義政策を支持しているわけではないですが、過去2000年近くの歴史を見ても、「グローバリゼーション」はしていないのです。これが現実と理論との違いだと考えます。
グローバリゼーションでの「歪み」は今回の金融危機で「先進国の債務の増大」という形で現れています。
3.9%という数字は、各種控除が全く計算に入ってないからです。(源泉徴収票でいう収入金額と所得額の差など)
給与総額のなかにはかなりの非課税部分があります。
3.9%と言う数字はちょっと「作りすぎ」ですね。
経費なんて考慮しねーよという議論ならわかりますが、このへんを考慮すると10%からあまり離れていない数字になると思いますが。。どなたか詳しい数値ご存知ですか?
面白い冗談ですね。日本はサラリーマンの給与所得者より圧倒的に事業所得者のほうが有利ですよ。
サラリーマンは天引で給与から強制的に税金やら保険料やら惹かれますから逃げようがありません。これに対して事業者は経費でなんでも落とせますし脱税するのも簡単。これだけ税制面ではサラリーマンより事業者が有利なようになっているのに、日本で起業家が増えないのはなんでなんですかねぇ。
藤沢数希さんも税制に文句あるならサラリーマンやめて独立したらいかが?合法的に簡単に税金安くできますよ。
>8
本気でそう思ってるんですか?
給与所得控除がいかに大きいかをご存じないんですか?
それに何でもかんでも経費にできると思ったら大間違いです。ベンツ買っても税務署が認めなければ経費になどなりません。ましてや赤字だったらまず認められないと思った方がいいでしょう。外食の経費も限度があります。スーパーの買い物など飲食店経営者以外はまず認められないと思った方がいいです。そしてサラリーマンの主婦は年金を支払わなくても加入していることとみなされる特典まであります。自営業者は配偶者も年金を支払わなくてはなりません。
そして何より本当に儲けている人は経費の計上なんてたかがしれています。そんなに自営業が税金を払わないでいいと思っているのならやってみればいいのではないですか?いかにサラリーマンの給与所得控除が大きかったか身にしみてわかりますよ。日本は文句なく中低所得のサラリーマンに優しい税制です。自営業者に目くじら立ててるのは筋違いもいい話です。それにしても経費で何でも落とせたなんていつの時代の話でしょうか?
う~ん、素朴な疑問ですがベンツ買ったり外食、買い物って経費なのですか?
>給与所得控除がいかに大きいかをご存じないんですか?
給与所得控除は最低65万であとは収入に応じて決まってきます。そして高額所得者ほど給与所得他に対する割合でみれば比率がさがっていきます。はっきりいって大した控除金額じゃないですよ。
>ベンツ買っても税務署が認めなければ経費になどなりません。
ベンツを会社名義にして個人用で使えばいいだけの話でしょ。しかも税務署の調査が入らないとまずわかりません。ベンツを会社用で使っているのか個人用で使っているのかなんて税務署にはわかりませんし否認不可能です。
>ましてや赤字だったらまず認められないと思った方がいいでしょう。
赤字だったら他の所得と損益通算されるんで余計に有利でしょうね。
>外食の経費も限度があります。スーパーの買い物など飲食店経営者以外はまず認められないと思った方がいいです。
スーパーの買物は無理でしょうが、通勤費など交通費はすべて経費にできるでしょ。経費面では給与所得者より事業所得者のほうが有利なのは厳然たる事実です。
>そしてサラリーマンの主婦は年金を支払わなくても加入していることとみなされる特典まであります。自営業者は配偶者も年金を支払わなくてはなりません。
話題をずらさないでほしいですね。今話しているのは税金の話であって年金の話ではありません。しかも年金自体この先サラリーマンだろうが自営業者だろうがもう長く持たないでしょうね。
>自営業者に目くじら立ててるのは筋違いもいい話です。それにしても経費で何でも落とせたなんていつの時代の話でしょうか?
あなたこそ勉強不足ですね。サラリーマンは収入をごまかしようがないですが、事業所得者はやりようによっては税額を減らすのは簡単ですよ。だからこの不公平が問題になって納税者番号を導入しようという話になっているわけです。
>11
嘘ばかり垂れ流さないでもらいたいですね。
高所得者ほど給与控除の割合が少ないからってだから何?って感じです。俺が書いているのは中低所得層の話です。それに高所得者の自営業者も節税なんてほとんどできません。どうやったらできるか教えてもらいたいぐらいです。大村大次郎さんの本に書いている節税術なんて本当に役に立ちません。
ベンツだって税務署が税務調査でこれは個人所有と認定されたら経費になどなりません。むしろ修正申告させられ、あげく最悪は追徴課税が待っています。
通勤の交通費を出す理由がさっぱりわかりません。サラリーマンは普通は会社から出るので比べる方がおかしい。単純に自営業は汚いということを強調するための屁理屈でしかありません。
保険と税金の払い戻しである年金についても話を逸らすなとは言いがかりです。いかにサラリーマンが支払う税金以外の面でも恵まれているか、そして自営業が年金の面でいかに不利になっているかを教えてあげただけです。年金は実質半分は税金です。ようするに、その面でどれだけサラリーマンが有利だという現実から目を逸らし、自営業は税金泥棒だと思い込みたい典型的なトーゴーサンに洗脳されている証拠でしょう。
都合の悪いことから目を逸らさないで、中低所得層のサラリーマンがいかに税金の面で恵まれているかをいい加減に理解したほうがいいでしょう。でなければ表面的な部分しか見れない感情的な2チャンネラーと同レベルです。
ところでどうやったら簡単に税金の誤魔化しができるのでしょうか?ぜひともご教授願います。こっちが教えてもらいたいほどです。