孫正義氏が、太陽光発電などの再生可能エネルギーの普及を促進する「自然エネルギー財団」を設立すると発表した。震災の被災者に100億円を投じた上にエネルギー開発に10億円を投じる行動力には敬意を表するが、この財団は的はずれである。
以前の記事でも説明したように、日本のエネルギー政策が混乱してきた一つの原因は、何よりも先に「原発か反原発か」あるいは「化石燃料か再生可能エネルギーか」というイデオロギー対立があり、経済成長のためにどういうエネルギーのポートフォリオが最適かという戦略が置き去りにされてきたことにある。
経済学的にいえば、目的関数はエネルギーの(安全性を内部化した)効率性であり、社会的コスト当たりの発電量を最大化することだ。もう一つの変数は、地政学リスクなどに対応するオプション価値である。この二つの変数で最適化すると、原子力と化石燃料をベースロードに使い、分散型の再生可能エネルギーはその負荷を減らすピークロード対策にあてる現在のエネルギー政策はおおむね妥当なものだろう。
もちろん再生可能エネルギーを普及させるのは結構なことだが、そのために必要なのは技術開発ではなく採算性である。現在の地域独占のもとでは、電力会社が再生可能エネルギーを導入するインセンティブはない。高コストで出力が小さく、送電網が不安定になるからだ。民主党政権が「グリーン・エネルギー」に補助金を出したりして熱心なのでおつきあいしているだけで、補助金のハシゴがはずされたら、どうなるかわからない。
最初に「再生可能エネルギーを最大化する」という特定の手段を自己目的化すると、採算を無視して太陽光発電所を建てろといった話になりかねない。これは孫氏が主張した「光の道」と同じく、戦略(エネルギー政策)よりも先に戦術(特定のインフラ)を決める主客転倒である。被災地では、NTTは復興に光ファイバーを敷設するよりも携帯電話の基地局を優先している。そのほうが費用対効果が高いからだ。光ファイバーが通信手段の一つに過ぎないように、再生可能エネルギーも発電手段の一つに過ぎない。
それよりも業界が孫氏に期待しているのは、IPP(独立系発電事業者)として電力事業に参入することだ。霞ヶ関では、東電の解体や発送電の分離が論議されているが、いくら送電網を分離しても、新しい事業者が参入しなければ意味がない。いま日本には50以上のIPPがあるが、ほとんどは重厚長大企業やガス会社などの公益企業で、東電に正面から挑戦するベンチャー企業はいない。
いま電力事業に必要なのは、技術開発ではなく地域独占を超える新しいビジネスモデルである。孫氏がこれほどエネルギー産業に関心があるのなら発送電の分離を提唱し、ソフトバンクをどこかに売却して、その資金で電力事業に参入してはどうだろうか。もし再生可能エネルギーが本当に原子力や化石燃料より効率的なら、既存の電力会社よりもうかるだろう。何が最適のエネルギーかは市場で決めるのがベストである。
コメント
孫氏がめざしているのは、「太陽光発電などを促進するエネルギー政策の提言」ですから、「太陽光発電に補助金をいっぱいくれ」という予算ぶんどりのことです。
「10億円を出すから、何百億円もの補助金をくれ」ということです。もしそれが実現したら、補助金をたっぷりもらうために、会社を設立するでしょう。そうでなければ、設立しません。
「国の金をたっぷり戴いて儲けよう」というのが孫氏の方針ですから、首尾一貫しています。賄賂を出して受注するようなものです。受注運動費ですね。別に善行をしているわけじゃありません。
非常に同感です。特に戦略と戦術の取り違え、のところは全くその通りですが、一方で、世間的には受けがいいんでしょうね。
民主党で演説をぶつ時点でなんだかおかしな方向だな、と思ったのが
ますます拍車がかかっていますね。
今回の震災で携帯ネットワークの脆弱性が非常に明らかになったのですから、それを改善するのが本来、彼の責任として最優先だと思うのですけどね。震災から1ヶ月経ちますが、相変わらずSBのネットワークは不安定ですよ。テキストすら遅れてくるし。もう少し本業をきちんとしてほしいです。
以前から書いていますが、自然エネルギーでは、此の国の基底エネルギーを賄うことは全く出来ません。
太陽光にしても、風力にしても,バイオマスにしても、今現に、1%にも満たず、基幹エネルギーとしてはほど遠いし、その安定性においても,全く意味の無いほどに微力です。
地熱エネルギーなどというものも、本来火山地帯である我が国では、不純物が多すぎてとても実用になりません。
自然エネルギーと言うのは、現実を全く理解できない素人の夢想、幻想なのですl。
その前提で、電力会社は、事故の寡占体制を維持し、民間の参入を断固排除するための様々な障壁を築いてきました。
その最大の理由は,安全性であり,系統の安定性を確保するという理由によるものでした。
此の国には,数十万台を超える自家用発電機があります。それは,一つには,建築基準法によって定められた、非常時の消火ポンプ用電源を確保する非常用発電機であり、もう一つは、エネルギーコストを自前で賄おうとする,自家用発電所であり、ピークカットなどの電力料金低減策として用いられる発電機です。
このそれぞれに、安全性、安定性を理由に様々な難癖を付けて、系統への接続を厳しく制限してきました。
実はその本心は、取りも直さず、電力会社による電力供給の寡占体制を維持することを最優先とする利益独占体制があったのです。
企業や、民間の発電施設を、負の需用設備と考えると、自家用発電所は、系統にはなんの影響も与えません。
自家用発電設備の、無制限の系統への接続を自由化することで、電力の営利体制は、見違えるように変わります。
その事をこそ、先ず問題にすべきです。
太陽光発電は2000年のほぼゼロからスタートし、指数関数的に導入量が増加し2010年現在18GWpに達しました。そして重要なことは、普及とともにコストが下がるということです。今のところ普及量が二倍になるとだいたい二割安くなるという経験則に従い推移していて、100Gwp導入でグリッドパリティを達成するとも言われています。
再生可能エネルギーにこういった特性があるのなら、使えば使うほど価格が高騰する化石燃料に安易に身を任せるより、超長期的な世界のエネルギー戦略として推進するべきでしょう。
> 企業や、民間の発電施設を、負の需用設備と考えると、自家用発電所は、系統にはなんの影響も与えません。
私は、 電力系統の制御にかかわったことはありませんが、 発電機の制御と電力系統の制御システムの設計を担当している友人がいました。 私の担当分野は、 その間の発電所の制御でした。
系統に外乱があったときに、 発電機をどう制御するかというのは簡単な問題ではありません。 電力系統の制御システムはもっと難しいです。 詳細はとてもかけません。
しかし、 これをスマートグリッドとして、 制御できるようになるかもしれません。
原発のコストやリスクは後から付いてくるという性質が、原発を儲かるものだと思わせているに過ぎない。
そして、原発の事故が起きても、電力会社の負う責任が軽いことも、原発のコストを軽くしてしまっている。
今回の原発事故関連の経済損失は数兆円と言われているが、それでも原発のコストは低いと言えるのだろうか。
金の問題だけじゃなく、国民の資源や資産を台なしにして、実際は金じゃ解決できないところまで来ているのに。
インセンティブが問題だとするのなら、たとえば、由来する電力によって課税を調整すれば良い。
そして、原子力由来の電力に関しては、高い税率にして、そこから得た税金は事故の補償にも使っていくようにすれば良い。
また、国民も購入する電力を選べるようにすれば良い。
原子力由来はいくらで、化石燃料由来、自然エネルギーはいくらとして。
もちろんIPPやスマートグリッドも進めていくと良いと思う。
そうすれば電力会社も原子力追求にメリットを見出せなくなる。
経済成長としても、もし政府が原発推進なんてしないで、自然エネルギー開発に力を注いでいたら、海外にももっと売り込めていたのではないかと思う。
またソーラーパネルや蓄電池の早期コストダウンは国民にとってもとてもメリットがある。
スマートグリッドにも役立つし。
ソーラーパネル付きの電気自動車なども面白い。
脱石油依存を目指すのも、大きな経済効果につながる。
エネルギー産業としてはほとんど成り立たないでしょうね。ただ人類の文明のリスクヘッジの一環としては面白いかも知れません。
核融合などの次世代エネルギーの開発に失敗し、本格的に資源が枯渇し始め、人類が衰退期に入ってしまったときには、風力発電や太陽光発電が最後の頼みの綱になるでしょう。そのときになってから開発に取り掛かっても遅いので、今から研究しておくのは無駄ではありません。ただ、そのとき世界は「風の谷のナウシカ」のような世界になっているでしょうが。
また岩瀬さんが記事で書かれておられるように、「貨幣を所有している人に非経済的な理由での投資を促すことができれば雇用は増える」という効果もあるでしょう。国が無駄な金を使うのは長期的にはマイナスでしかありませんが、金持ちが使う分にはマイナスではありません。
個人的には、池田さんもおっしゃっているように、孫さんには電力産業に参加して欲しいです。成功する必要はないのです。孫さんのことは現代日本のトリックスターだと思っています。トリックスターの役割は安定した世界をかき回すことです。複数均衡の場合、ある安定状態から自発的に他の安定状態に移ることはほとんどありません。より最適化された安定状態に移るには、一度現在の安定状態を破壊する必要があるのです。それが出来るのが孫さんのような人だと思っています。
太陽光発電や風力発電などのエネルギー源は不安定で将来もあまりあてにできないという意見もありますが、それはどうかと思います。
社会的にそれらが使われ始めてまだ年月があまりたっていません。まだ幼稚園児のようなものです。今からスマートグリッドやバッテリーの技術開発が進めば電力供給の安定性も増すし、値段が安くなれば、普及するのも目に見えています。
現に、発電性能や、バッテリーの性能も値段も急速に向上しています。
自然エネルギーの現状だけから将来性を否定するのは、幼稚園児の能力が低いことでもってその子の将来性をも否定することに似ているのではないかと思います。
天候を操作する技術が開発できなければ、ほとんどの自然エネルギーは不安定供給となります。天候が安定しないことは幼稚園児でも理解できる事実です。成長を見越した上で自然エネルギーは期待できないのです。
安価な蓄電は夢の技術なので、実現したら世界の構造が変わるでしょうね。そのくらい難しい。
リアリティのあるスマートグリッドは原子力発電など既存発電ありきで構想され、自然エネルギーはあくまでも補完と最適化が目的です。
今まで原発ありきで自然エネルギー系開発にほとんど予算をまわして来なかったから現状があるわけで、それをもって自然エネルギーを否定するのは本末転倒。原発が安価だと言うのも今回の事故が起きてまだ言っているのは頭を疑う。政府は全国民が全原発を未来永劫(プロトニウムは4万8千年)無制限保障しようとしているのだよ?ものすごいコストじゃないのかね?安価だと言う根拠が知りたい。
将来性のないエネルギーに多大な予算をまわすのはバカのすることです。
自然エネルギーを重要視したいなら安定供給する技術を提示してください。ここから逃げつつ原子力発電を否定しても説得力の欠片もありません。
「安価な蓄電は夢の技術」なのは確かですが、その技術が急速に進歩してきている事実は認めてほしいものです。
今ハイブリッド車や電気自動車用に開発され量産化されるようになってきている電池は、性能がどんどん良くなってきていると同時に価格も安くなってきています。
人材と資金を投入さえすれば、技術が急速に進歩することは今までの歴史が証明していることです。
かつての原子力でもそうです。当時は不可能であった原子力の利用を、当時のアメリカ政府が多額の資金(当時の額面で19億ドル)と、世界トップレベルの多くの人材を投入することによって成し遂げたことは、歴史に新しいことです。
マンハッタン計画は、国の威信と運命をかけた大事業でした。
今、バッテリー開発に世界中の企業が生き残りをかけて莫大な資金と人材を投入しています。量産化されれば価格は急速に低下します。
また、電気自動車用の電池とソーラーパネルがあれば、将来家庭に安定した電気を供給できるであろうということも目安がついてきています。
必ずしも「夢の技術」ではないのではないでしょうか。
孫さんがやりたいと言うんだから、今のところは、それで良いのではないか…
孫さん自身の金を使っているし、これまで自然エネルギーの利用について消極的だったこの国の事情もある。
誰もこれが今後のエネルギーの主体になるとは考えていない。
太陽光発電所…
まぁ1個ぐらい作ってみたらどうだろうか…
わけの分からん施設を作るより、よほどイイ。
自然エネルギーを多用したエネルギー供給ということで、詳しく説明されたサイトがありますので、紹介しておきます。
頭から否定するのではなく、どうしたらできるのか、考えることで科学技術というものは進歩していくものです。
☆ 新たなエネルギー供給の未来
http://trust.watsystems.net/mirai-s.html
「2010年の世界の発電容量は、風力や太陽光などの再生可能エネルギーが原発を初めて逆転した」
というニュースもあります。
☆ 【放射能漏れ】風力・太陽光エネが原発を逆転 福島事故で差は拡大へ
http://www.sankeibiz.jp/compliance/news/110416/cpb1104161038001-n1.htm
「太陽光にしても、風力にしても,バイオマスにしても、今現に、1%にも満たず、基幹エネルギーとしてはほど遠い」という意見はすでに過去のこととなっているようです。