英国の教育専門誌Times Higher Education(THE)が毎年発表する世界大学ランキングで2020年度版が出ました。日本からは東大が36位、京大が65位に留まり、不本意なランクはさほど変わっていません。日本の大学に何が求められるのか、この辺りを考えてみたいと思います。
まずこのランキングで東大が位置する36位までの上位を見るとアメリカの大学が21校、英国が7校でこの2カ国で78%を占めています。特にトップレベルは両国の大学で占められており13位でようやくスイスの大学が入ります。アジアでは23位の清華大学がトップで24位に北京大学が入ります。ほかにアジアからはシンガポール、香港が東大より上位にランクされています。ちなみにカナダはトロント大学とバンクーバーのUBCが東大より上位になっています。
では、この大学ランキングの信ぴょう性はどれぐらいあるのか、であります。THEの作るランキングの評点項目は13ほどありますが、大きく影響するのが論文被引用数が30点、研究評判調査が18点、教育評判調査が15点の配点になっています。この評判調査がどういうものかかなり主観性が入りやすい項目ではないかと思うのですが、英米の大学が大多数を占めるその理由はこの辺りに若干のゆがみがある可能性はあるかもしれません。
ちなみに世界大学ランキングはいくつかあるのですが、大学の教育内容を比較的ストレートに反映しやすいとされるのが「世界大学学術ランキング」でこちらの2019年度版ランクは東大が25位、京大が32位であります。ちなみに東大より上の大学はスイスとカナダが一つずつ食い込んでいるほかはこちらも残りは全部英米であります。
こう見ると英米上位大学は評判が評判を呼んで大学規模が大きくなり、パワーアップし続けていると考えられそうです。
となれば日本の大学が悩むべきところは国際的な評価を引き上げ、留学生を呼び込み、優秀な教授陣の招聘、英語での授業の大幅増加がまず考えられます。次いで改革された新しい大学入試制度が2021年から始まりますが、考える力、創造する力、複数の答えを引き出す能力に主体性を置き、記憶装置としての教育からの置き換えを早急に進めるべきと思います。
次に卒業生と在校生、大学の連携が薄すぎます。私も母校校友会の評議員をしていますが、校友会上の登録数が30数万人いることに校友会が満足してしまうのではなく、それらの人たちとのつながりをなぜもっと密接に取り込もうとしないのか、不思議なのです。また私大の場合、何かと寄付金というのですが、(私の母校も当然そうです)何に使うのか明白な目的がなく、募金総額の目標だけがそこに存在しています。校友会の会議である方が「募金をどうするつもりか?」との質問に「これから有意義に使えるよう検討します」というわけです。これでは誰も募金なんてしません。
英米の大学の特徴は卒業生からの巨額の寄付金で支えられてることにあるのですが、カナダでよく目にするのは〇〇研究センターを作るとか、〇〇財団を通じた学術的展開を図るといった明白な目的に対して卒業生が「よし、それなら」と多額、時として億単位の寄付すら平気でするのであります。
これに対して例えば東大に今年度、これまでに寄付をした件数は297件約790万円しかありません。私はこれを見た時、ゼロが2つ足りないと感じました。日本人の寄付に対する感性なんてそんなものです。東大を卒業して「東大卒です」とあちらこちらでそのブランドを掲げながら母校のことにはまったく振り向かず、懐にしこたま溜め込む様子が目に浮かびます。
どうせなら人気クイズ番組の「東大王」で東大チームが勝ったら東大に寄付するぐらいの太っ腹になってもらいたいところです。
ところで私どもの会社はカナダの多くの大学とビジネスをしている関係にあるのですが、今夏、カナダ、アメリカ、日本から先生方が集まるあるアカデミックな年次会合があり、その会合そのものへの参加と寄付を今年も求められました。大した額ではありませんが、寄付をし、参加のための諸経費を含め全部で20万円ぐらいかかりましたが、あとで大変感謝されました。もちろん、ほとんど全部持ち出しです。
日本の人は儲かるならやるというスタンスが強く、例えばカナダの日系のイベントへの出店希望者が多いのはやればそれなりに懐が温まるからですが、私どもがやるような寄付は直接的な見返りはほぼありません。しかし、私どもが何らかのお手伝いをすることでそのような学会を援助できるなら私にとってはそれの方がずっと意味あることだと思っています。
最後に日本は大学全入時代と言われています。正直、その必要はないと思います。文科省も大学への交付金をばらまくのではなく、一定の絞り込みをしながらよりレベルの高さやユニークなポリシーを打ち出させるなどの「らしさ」を考えてもらいたいと思います。MARCHとか関関同立はどこもドングリの背比べで令和版「大学は出たけれど…」に近くなっている気がします。少なくとも偏差値への偏重は早急に改善すべきかと思います。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2019年9月16日の記事より転載させていただきました。