昨年に引き続き第2回水素閣僚会議(H2EM 2019)が東京で開催されました。経済産業省、NEDO等が主催する世界の水素関係者が集まる会議です。
水素に関する国際的な議論の枠組みはIPHE等、複数ありますが、施策の決断者である閣僚が関わる会議は、この水素閣僚会議だけです。こうした会議に継続して参加していると、昨年との違い、各国の動向、日本の位置づけが変化してきていることに気づかされるのです。
午前中に非公開で行われた閣僚会議では、東京宣言を着実に実行するために議長声明がまとめられました。この中で注目すべき数字が出てきています。それが「10/10/10」という数字です。10年で燃料電池システム1,000万台(10 million)、水素ステーション10,000か所(10thousand)を整備するというものです。
午後開催された、どのセッションでも語られていたのは、水素価格の低減。そのためには多量に使われることによるボリュームディスカウントしかないということでした。地球温暖化を防ぐためにエネルギーの見直しを行えば、再生可能エネルギーの話になります。その再生可能エネルギーの比率を増やそうとすればするほど、安定供給のバッファーにもなる2次エネルギー、水素が不可欠になってくるのです。
各種セッションの中で印象に残った話は、トヨタ自動車が新社屋を建設しFCVの生産能力を10倍にすること。2020年にFCVの第2世代を世に出すこと。新日鉄が製鉄に水素を使用し、二酸化炭素の排出を減らしたいと思っていること。これが相当に難しいということ。
セッション全体を通じては、政府の補助金や水素を利用させるという意味でのルールづくり(規制)は、当面必要不可欠ということ。水素利用を地域単位で複数利用を前提とすること。様々な活用事例を増やしていく事。セッションの詳細は第2回水素閣僚会議総括文章をご覧ください。
今回の水素閣僚会議を通してみた水素先進国日本の位置づけは、残念ながら変わりつつあります。
自民党に「FCVを中心とした水素社会の実現を促進する研究会(通称:水素議連)」を設立し、水素ロードマップをつくり、施策・予算の充実を図っていた時代は、実証実験、研究開発、日本は正に断トツのトップリーダーでした。
あれから7年、良い意味では世界も水素社会の必要性を感じ取り、各国が施策を充実し始め、多くの企業が水素ビジネスにチャンスを見出そうとして参入してきています。つまり、日本の位置づけが相対的に下がってきているということです。日本では行われていない実証実験が存在し、インフラにおいても日本では走行していない燃料電池鉄道、燃料電池路面電車が実走されています。
研究開発による製品の提供にこだわるだけでなく、水素そのものの利活用を提案していくことが、これからの日本には求められていると思います。正に日本が苦手とする利活用提案です。東京オリンピックでの水素社会のショーケースは正に「五感にうったえるオリンピック」だと思うのです。
水素燃料電池コンサート、燃料電池ライトアップ、水素燃焼料理、水素風呂、水素吸引空間等、まだまだ水素社会が素晴らしい社会であることを伝えきれていないのです。
水素閣僚会議への来場者は相変わらず男性比率99%、女性が関心を示さない、担当者に女性がいない。これで世の中の伝授するとは思えないのです。水素社会は男社会ではありません。女性が水素社会に関心を持ち、そして望むことになって成し遂げられるものです。
第3回水素閣僚会議が、何処の国で開催されようが、先ずは女性来場者比率を50%に引き上げることを目標として欲しい。車(FCV)を購入するのも、自宅にエネファームをつけることも、自宅の電気の選択も、行きたいレストランを決めるのも女性ですから…。
編集部より:この記事は多摩大学ルール形成戦略研究所客員教授、福田峰之氏(元内閣府副大臣、前衆議院議員)のブログ 2019年9月26日の記事を転載しました。オリジナル記事をお読みになりたい方は、福田峰之オフィシャルブログ「政治の時間」をご覧ください。