質問通告の遅れがあったと官僚たちからツイッターで続々と告発され、炎上している森裕子氏(国民民主党)だが、きのう(15日)の質問を見ても生産性の無さに呆れるしかなかった。
禁断の5文字が脳裏に浮かんだ森氏の言動
処理水のことは専門家や東電への不信感、処理水に前向きな維新への悪口を言い立て、小泉環境相に無駄に噛み付くばかり。
災害避難所の環境改善をぶち上げたまでは良いが、自ら理想像とするイタリアの事例を持ち出すばかりで、安倍首相らとの答弁はかみ合わず、事前の根回しもまともにしてないのか相手にされなかった。
全体として質疑から問題解決の期待感、生産性はまるで感じられず、政権非難と揚げ足取りに終始する万年野党の本領発揮とも言える内容だった。
ただ、それだけでならいつものことだが、看過できないのは原英史氏の問題の取り上げ方だ。すでに毎日新聞と係争中であり、常識的には事実関係の精査に慎重になるはずのところ、よほど自信があるのか原氏を「公務員ならあっせん利得収賄罪」などと一方的に犯罪者認定してしまった。憲法の規定により、国会議員は議院内での発言について院外で責任を問われず、名誉毀損の成立は難しいとされるが、裏を返せばそれだけ発言に責任は伴うわけで、原氏が激怒するのは当然だ。
森氏が注目された質問通告の件も、産経新聞の取材に対して「もう終わった話だ」と説明を拒否して幕引きをはかる始末。万年野党の体質に骨の髄まで浸かり、議員特権を乱用して現場の官僚、民間人を平気で振り回す傍若無人ぶりに「ク○B○○」の禁断の5文字を脳裏に浮かべてシャウトしたくなった。
小泉氏のセクシー発言にのっかるバズり狙いの質問主意書
また、昨日流れてきたニュースでは、こんなものもあった。小泉氏のセクシー発言を巡ってわざわざ政府見解を問いただす質問主意書を作成した愚かな議員がいたのだという(参照:産経新聞)。
この質問主意書を出した立憲民主党の熊谷裕人氏、この夏の参院選で枝野代表のお膝元、埼玉選挙区から出馬して初当選。議員秘書、さいたま市議を3期務めてきたという叩き上げだが、本人はツイッターで、「質問の内容は、至って真面目ですので、ご容赦ください」と言いながら、ハッシュタグに「#セクシー発言」をわざわざ入れている。報道とネットでバズりを狙ったのは一目瞭然でなんという白々しさ。
質問主意書の答弁が報道各社で取り上げられ、お騒がせしています。質問の内容は、至って真面目ですので、ご容赦ください。#質問主意書#セクシー発言#環境大臣#熊谷裕人
「セクシーには魅力的という意味も」 小泉環境相発言で政府答弁書(産経新聞) https://t.co/yE7XzGNgm0— くまがい裕人@参議院議員(りっけん・埼玉県選挙区) (@KumagaiHiroto) 2019年10月15日
一応、主意書にも一通り目を通したが、愚問過ぎて、こんなことに現場の役人を疲弊させるあたりは、森氏ほどではないにせよ、悪質極まりない。
質問主意書制度を廃止せよ!
質問主意書制度は、かつては少数野党が活用し、2000年代に新党大地の鈴木宗男氏衆議院議員(現・日本維新の会 参議院議院)が圧倒的なボリュームで政府見解を引き出して注目された。ところが野党第一党だった民主党の長妻昭氏をはじめ、議席の多い野党がフルに使いはじめ、行政府に答弁準備の過剰な負担を負わせるようになった。
鈴木氏や長妻氏のように政策的に本筋の話を狙うのであればまだしも、UFOの話の政府見解を質したことが話題になった頃から、マスコミ露出を狙う議員たちに「悪用」されることが目立つ。
本来の趣旨と逸脱するのであれば、もはやこんな制度は廃止した方がよい。労組に支援される野党政治家が霞が関のブラック職場化を推進しているのではブラックジョークにもならない。それどころか日本国の頭脳を劣化させているのだ。
筆者は、自民党にもダメな政治家はいるし、野党にも期待する政治家はいると思う(だからアゴラには与野党の議員の記事を掲載している)。強い野党がいないと、時の与党は緊張した政権運営をしないので、10年おきくらいに政権交代があるくらいでないと日本の政治はよくならないとも思う。実際、民主党から政権を奪還した直後の安倍政権は2年間、不祥事による閣僚の交代はなかった。
国民が野党を育てる気がなくなった
だから、「安倍一強」でも自民党には是々非々で、野党にもしっかりしてもらわないとと思って政治とメディアの現場で過ごしてきた。しかし野党への失望は大きくなるばかりだった。
それでも一縷の望みは捨てずにいたが、森氏と熊谷氏の万年野党ぶりを見せつけられた昨日、2019年10月15日をもって、四半世紀に渡って抱き続けてきた政権交代論者の立場を放棄することにした。
十数年先に新たな展開はあるかもしれないが、少なくとも安倍政権が続いている間はとても考えられないし、安倍首相の勇退後もすぐには自民党が政権を落とすことがあるようにも思えない。
野党の再建はとにかく時間をかけて、政権交代の前に世代交代とも思ってきた。ただ、それはソフト面のことで条件が不足している。そもそものハードが腐っていては意味がないからだ。
野党再建のためのハードとは国会や政党、選挙など制度面の改革だ。イギリスが二大政党制を誇ってきたのも「政権党は公的に優遇されているから」との考えから、野党第一党への公的助成は手厚く、政策のブラッシュアップの一助としてきた。与党チェックの重要性を具現化した制度で、議席数に応じて配分が多い“勝者総取り的”な日本とは対照的なのだ。
しかし、この話を持ち出すと「選挙で負けた野党に税金を払ういわれはない」との批判をネットで浴びる。
結局、時の政権をチェックし、定期的に政権交代することも含めた野党の必要性を国民が認めるかといえば、自民党支配が長らく続いたこの国では容認されそうにない。だからといって、尖った主張をして特定層にだけマーケティングをして、目先の選挙の生き残りを図る野党政治家たちの体たらくを見せられ続けては、国民の広い階層で野党を育てようとする気持ちが生まれようがない。
小選挙区制なのに政権交代が全くないというのも困ったことだが、もう投げるサジもない。政権交代が持論だった政治ウォッチャーとして、2019年10月15日は、一縷の望みを打ち砕かれた「終戦」の日となった。年内の解散総選挙も取りざたされているが、いっそのこと木っ端微塵になってしまえと思う。焼け跡から何か生まれるかもしれない。アーメン。
新田 哲史 アゴラ編集長/株式会社ソーシャルラボ代表取締役社長
読売新聞記者、PR会社を経て2013年独立。大手から中小企業、政党、政治家の広報PRプロジェクトに参画。2015年秋、アゴラ編集長に就任。著書に『蓮舫VS小池百合子、どうしてこんなに差がついた?』(ワニブックス)など。Twitter「@TetsuNitta」