きのう(2月13日)夜になって新型コロナウイルスの感染拡大がさらに懸念されるニュースが相次ぎました。
横浜市内の80代女性がお亡くなりになり(国内初の死者)、さらに女性の義理の息子にあたる都内在住70代の男性の方の感染も明らかにされ、千葉県でも20代男性の感染が、また和歌山県でも医師の感染が判明しました。いずれの方も直近では中国への渡航歴はないといいます。
また70代男性はタクシーの運転手さんで、感染経路は調査中ですが、羽田で中国人のお客さんは乗せておらず、マスクをつけて乗務されていたそうです。
警戒レベルが一段と上がりましたが、先日も申し上げたように、とにかく手洗いの励行が一番大切です。こういう有事のときだからこそ、冷静に対処しましょう。厚生労働省の特設ホームページなどから最新情報もチェックしておきたいところです(参照:厚生労働省HP「新型コロナウイルス感染症について」)。
昨日には、政府の新型コロナウイルス感染症対策本部から緊急対応策の発表があり、本年度予備費も活用し、本年3月までの緊急対策として153億円を投入することになりました(資料はこちら)。
感染拡大防止、水際対策の強化などが打ち出されましたが、ここでは経済対策について一言申し上げたいと思います。対策の中では、「影響を受ける産業等への緊急対応」として次の3点が発表されました。
①国民及び外国人旅行者への迅速かつ正確な情報提供と風評対策
②観光業等の中小企業・小規模事業者対策等
③雇用対策
①は、訪日外国人にSNSを活用して正確な情報提供を行うとともに、日本国民の不安・疑問にお応えすべく、厚生労働省のコールセンターを充実します。報道によれば、すでに欧州では中国人、ひいては外見が似ているアジアの方に対する差別的な対応もみられるという残念な話もあります。東京オリンピック・パラリンピック開催への懸念につながらないようにする意味でも、国内の感染拡大防止とともに迅速かつ正確な情報発信に努めなければなりません。(東京オリ・パラについては、「準備に万全を期す」と明記されました。)
また、観光業等に関連して③の雇用対策から説明しますと、日中間の人の往来の急減により影響を受け、前年度の中国関係の売上が激減するなど一定の要件を満たす事業者を対象に雇用調整助成金(従業員の給与助成)の支給要件を緩和します。
②の中小事業者対策については、先日、自民党から政府にお願いしたとおり、観光業などですでに影響の出ている企業に対して必要な資金繰りなどの支援を行うこととし、日本政策金融公庫等に5,000億円の緊急貸付枠を確保しました。
主に自動車産業等において、日中間で部品や製品においていわゆるサプライチェーンが形成されていますが、これへの大きな影響が懸念されます。日産自動車は、中国からの部品調達が滞って九州の工場の操業を停止することになり、きのうの決算発表では、前年比約70%減の大幅減益の見通しを明らかにしました。トヨタ自動車も天津や広州など、中国4工場の操業再開を先送りしており、日本国内の工場でも一部生産ラインを止め始めています。
大企業でもこういう事態ですから、経営基盤の弱い中小企業への資金繰りなどの支援は喫緊の課題です。今回の緊急対策では、金融庁から既存の貸付先に対して、経営相談、必要な資金供給、既存融資の条件変更など適切な対応を行うよう促すことが盛り込まれました。サプライチェーン毀損等に対応するための設備投資、販路開拓に取り組む事業者に対し、ものづくり補助金等の支援補助金の優先的供与も行います。
こうした支援は中小企業を助けるだけの目的ではありません。たとえば自動車産業は、近年、「自動運転」等の先端技術を取り入れる等の変革期に入っていますが、部品が日中間を往き来する分業体制、多層的なサプライヤーシステムで成り立っている構造は大きく変わることはありません。
そしてその「生態系」の一定部分を中国で担い、あるいは日本国内の小規模企業で請け負っているわけですから、どこかが行き詰まると、ゆくゆくは大企業の足元を脅かすことになりかねません。自動車という基幹産業の盛衰は、日本経済全体の命運を決めるといっても過言ではないわけですから、このサプライチェーン毀損の問題は、日本にとって当面の乗り越えるべき大きな課題です。
自動車だけではありません。経産省に確認したところ、日系企業は数千社が中国各地に進出しており、自動車以外でも電子部品、建設機械、家電、医療機器など多岐に渡ります。サプライチェーンへの影響はこれからも注視し、さらに果断な措置を講ずるべく、私自身も積極的に働きかけていきたいと思っています。