IMF(国際通貨基金)が20年の世界経済の成長率を1月に予想したプラス3.3%からマイナス3.0%に一気に6.3%ポイントも引き下げました。IMFがわずか3カ月でこれほど予想を根底から覆すのは異例中の異例であります。
個別を見るとアメリカがマイナス5.9%、日本がマイナス5.2%に対し中国はプラス1.2%、インドがプラス1.9%とばらつきがみられます。報道は悲観調で「大恐慌以来」の文字が躍っています。ただ、もう一つ注目しなくてはいけないのは「感染を封じ込めれば21年は6%近い経済成長が可能とみる」という点であります。
一般的に将来の見通しについては楽観論と悲観論があります。それはどこに焦点を置くかということでもあります。今回の場合、このままでいけば今年の4~6月期が最悪になる前提になっていますが、そこに向かって下がっていくと考えるのか、そこから来年に向かって上昇していくと考えるか次第で見る絵図は全く違ってきます。
特に日本の場合、IMFは21年度を3.0%の成長とみているようですが、感染が収まればもっと良くなると予想しています。最大の引き金は延期されたオリンピックの開催なのですが、それ以外に約半年ほどの間に延期となった様々なイベントが目白押しで並ぶはずで消費行動を大きく刺激すると予想しているからです。
消費者も数カ月の我慢の生活から解放されるため、一気にお財布の紐が緩む行動パタンが社会心理学的に想定できるとみています。トランプ大統領が示しているようにアメリカなどが先陣を切って規制緩和策の指針を発表をすれば日本はそれを見倣うと予想されます。半年ぐらいかけた段階的緩和になると予想していますが、むしろ、それの方が経済への刺激期間が長期に及ぶ効果を生み出すことになるともとれます。
以前から何度か申し上げたと思いますが、今回の新型肺炎の問題はリーマンショックの時のように経済や金融の基幹システムに問題が生じたわけではなく、疾病が経済を停止させている状態であります。そのため、企業は一時的に減益、ないし赤字を計上しますが、コロナの終息と共に確実に回復、業種によってはV字回復を見込める性格のものでもあります。
例えば日本ではファーストリテイリングやソフトバンクが悪い決算見込みを発表しましたが株価は逆に上昇しました。個人的には投資家の目線がそこにはなく、悪材料出尽くしの底打ち、ないしユニクロの場合は「それでも黒字」という点ではなかったかとみています。アメリカでもフォード自動車やJPモルガンがひどい決算見込み発表をしていますが、これを受けた株価は一時的には下がって売り崩される状況にはありません。
株価は景気の先行指標であり、3~6カ月先を見込むとされます。その点からすれば秋以降の回復を読み取っているとみています。また、アメリカは大統領選がある年の株価は高いとされます。夏になればいよいよその舌戦も見られるでしょう。
また、世界的に今回の新型肺炎がもたらした人の行動パターンへの影響は大きいとみています。日本の場合は中小、自営業者の淘汰がぐっと進むと思いますが、資本や経済の効率を考えると全体としてはプラスになりそうです。見方を変えると、日本の悪い部分の岩盤を切り崩したかもしれないと思っています。
楽観的過ぎるとご批判はあるかもしれませんが、人間の英知とは困苦を乗り越えるたびに強くなるという歴史を見れば今が耐える時ともいえそうです。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2020年4月15日の記事より転載させていただきました。