今の株式市場をコロナバブルと称する人が増えてきました。バブルとは理論的な意味づけができないぐらい価格が高騰することを言いますが、今はその点からすればバブルとまでは言い切れないかもしれません。今の理論的価値は「こじつけ可能」です。理由は株式が6カ月先を買う先行指標だとすれば我々が現在見ている株価は今年の終わり頃の経済と経営状況を映し出しており、その頃にはこうなるだろうと期待できるからです。
1月頃のアメリカ及び日本の株価の高値から3月の底に対しての戻り率はそれぞれ77%、84%程度になっています。コロナの前には更に高値を目指す展開だったことを考えれば現在の株価は2割程度安い水準にあるといえます。以前に比べて安いのですから経済が元に戻れる前提ならば理論的な裏付けはできるわけで厳密な意味でのバブルではありません。
そのロジックを押し通すプラス材料としては各国政府が惜しみない支援策を講じたこと、圧倒的金融緩和を進めたこと、金融システムなど経済の仕組みは今のところ壊れていないこと、各国、各地の「緩和」で経済の巡航速度を少しずつ上昇させていることがあげられます。
一方、不安材料としては国家の財政が相当痛んでおりこの修復をどうするのか、人々の価値観が激変し、コロナ前とコロナ後でビジネス環境が全く変わってしまった業界、業種があること、コロナは北半球では収まり始めているものの南米や途上国で拡大の一途を辿っていることがあげられます。
このポジティブ、ネガティブの考え方がその時々のニュースを通じて綱引きをしているのが相場であり、上がったり、下がったりするのはこれが理由であります。
ではかつて言われたW底の可能性ですが、ここまで戻した上でのW底はチャート的にはあり得ません。仮に再び3月の底値に向かうような事態が生じるとすれば新たな強烈な悪材料がないと起こりえません。W形の形成の場合、一時的な戻りがせいぜい1割とか2割ぐらいで再び下落に転じるわけであり、今回の急激な戻りは売り方の買戻しが原動力になったともいえます。
但し、買い方についても私はスピードオーバーで調整があるべきとこの2週間ぐらい申し上げています。個別の株価を見るとまだらです。今、上げているのは今までの戻りが遅かった業種、例えば航空業界や一部のREITなど回復に時間がかかると考えられタイムラグがあったような銘柄です。日本の株価ボードを見ても投資家が必死に出遅れ株を探す展開になっており、例えばバイオ関連で「ナノキャリア」ようなところがひと月も出遅れて急騰したりしているわけです。
ここからの展開ですが、多分ですが、利食いの売りと収益機会を逃した投資家、更には二匹目のドジョウを狙う投機家などで売り買い交錯の踊り場を形成するとみています。その中で経済の回復が確実に感じ取れるようになれば上昇のベクトルがかかってくるとみています。
アメリカについては大統領選が7月ぐらいから本格化するので株価対策は絶対であり、あらゆる手段を使って刺激させるとみています。ただし、仮に世論調査の通り、バイデン大統領が誕生するような雰囲気が強くなれば株価は確実に下がります。よって秋は昔から大暴落がよくあるわけですが、今年の秋は最大限の注意が必要だと考えています。
仮にバイデン氏が大統領になればドル安、円高で日本の株も下落のシナリオになります。一方、中国に利することになりますのでそのあたりの先読みは必要でしょう。金(ゴールド)がその時点で輝きを増すこともあり得ます。金は基準がドル建てですのでドル安は金価格の上昇のバイアスがかかります。
今年も半分近くが終わったわけですが、投資の世界を見ると前半はコロナの大乱高下、後半は不安な大統領選、更には米中問題や収まらないコロナ、航空業界や旅行業界の行方を含め、手探りが続きそうで相場の勝ち負けを見極めるのはまだまだ早いと思います。
投資をする方はこれから半年、相当引き締めて世界を俯瞰し、個人の勝手な期待感ではなく、きちんとした分析をすることを心掛けるべきかと思います。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2020年6月11日の記事より転載させていただきました。