今年も冷え込むようになってきた。
けれども昔に比べると、冬はすっかり過ごしやすくなっている。都市熱のおかげだ。
下図は、東京での年最低気温の変化である。青の実線は長期的傾向、 青の破線は数十年に1回の頻度で発生する極低温の出現傾向である。
昔はマイナス7~8℃、ときにはマイナス9℃ということもあったようだが、近年ではせいぜいマイナス2℃程度になった。
じつに、5℃から7℃ほど、東京の年最低気温は上昇した。
これは都市熱によるものだ。
このことは、東京から離れた地点での気温と見比べるとわかる。伊豆半島先端の石廊崎では、1℃程度しか気温は上昇していない。これは地球温暖化による日本全体の気温上昇に対応する。
都市熱というと、とかく悪者扱いされる。けれども冬の冷え込みが和らぐことは、健康には随分良いはずだ。
そして寿命も延びると思われる。というのは、既に書いたように、超過死亡のデータを見ると、冬の方が夏よりも断然死亡数が多いからだ。
地球温暖化も少しばかり長寿に貢献していそうだけれども、都市熱の効能(?)に比べると陰が薄そうだ。
かつて「疾病と地域・季節」という本で、籾山政子先生は「日本人は冬季に死亡が多いので、都市全体を暖房すると良い」という主旨のことを書いておられた。1971年のことである。
それから50年、日本人は、意図することなく、都市全体の暖房を実現してしまった!
それに、考えてみると、アーケード、地下街、公共交通や自動車などで、吹きさらしの戸外に出る機会すらだいぶ無くなっている。
かつて東京でマイナス9℃の寒さに震えていたというのは今となっては信じがたい。暖かくなって本当に有り難いと思う。