東京都決算審議続く
現在、東京都議会は令和元年度(2019年度)の決算審議が行われており、各常任委員会では事業全般をチェックする事務事業質疑が始まっています。定例会は11月30日開会ではありますが、閉会中審査が続いておりコロナ対策含めて気の抜けない毎日を送っています。
私は今回、公営企業会計決算特別委員会の理事に指名され、各局質疑を繰り返してきました。特に、今年は病院経営本部(都立病院、公社病院所管)に行政的医療の使命について質問を行いました。
「数字」を求められる経営体制の苦しさと将来に受けての改善案をテーマに質問を繰り返し、時に自民党議員と意見が真っ向からぶつかりました。決算審議ですから、当然、自民党に関わらず各会派が赤字体質について改善を求める質疑になります。
しかし、行政的医療の担い手としての都立病院、公社病院は「利益」外での使命があると考えています。勿論、無駄の点検をする事は大切ですが、どうしても民間病院が手を出したがらない特殊な難病治療やエボラ出血熱などに対応する感染症対策室などを整備しているという事情があります。平時において、いつ使用されるか分からないからという理由で整備しないという選択肢は持ってはいけないと私は考えています。
それ故、これらの特別対応の為のハード、ソフト整備は必要不可欠ですが、当然ながらかなり高額になってしまいます。採算ベースで考えていく民間病院と、谷間の患者さんを救う医療は目的・使命が異なるという大切な視点を持たなければいけません。
数字だけの黒字化はいつでもできる
私からすれば、都立病院も公社病院も、徹底したスリム化をして、需要機会が少ないと思われる医療体制を放棄し、医療スタッフをカットすれば「いつでも黒字に出来る」と考えています。しかし、それをやってしまったら、最後の砦としての行政的医療の意味が無くなってしまうのです。こういう視点での質問を繰り返し行ってきました。
ただ、都立病院も過渡期にきていて、地方独立行政法人化(以下、独法化)への道を歩んでいます。過敏な労働団体が、この独法化議論に対して、人件費削減等を恐れてか声を大にして反対運動を展開していくと雰囲気があります。
しかし、独法化=民営化ではないので、すぐに人件費カットなどを考えてのことではありません。前述のように、何も考えず人件費カットをする事は行政的医療の担い手を切ることになります。生産性のない人件費は見直しするのは公も民も関係はありません。
行政ルールの壁
では、今、何故ゆえに独法化かということについて触れます。
例えば、今回、私達が決算審議をしているという事を考えてみてください。都議会で審議され予算が成立した事をうけて行われてきた病院経営の予算執行に対してのチェックであり、毎年予算委員会、決算委員会が行われます。そうすると、どうしても単年度的な視点で病院経営を語らなけばなりません。
特に今年、私は今回のコロナ禍でも、この行政ルールの壁を感じ、どうやったら前進できるかと考える事がありました。例えば、重症救急患者の受入れのために必要な人員の拡充が必要となるケースで急がなくてはと思っても、原則的には実際の人員配置は翌年度となってしまいます。
これでは、医療ニーズの変化などに合わせた医師、看護師等の確保や医療機器の整備などをタイムリーに実施することが難しいというのは明白です。特に、今回のコロナ禍は正に年度跨ぎのタイミングでしたから、感じる所がよりあったわけです。
また、皆様の命を救うために、高額医療機器を購入しようと思っても、定められた時期に導入費用の予算要求手続きを行い、予算措置の裏付けの下、翌年度に契約手続きを行う必要があり、結果的に、予算要求から機器が設置されるまで1年以上を要しているのが現状であり、医療ニーズへの迅速な対応が困難なのです。
こうした課題を克服し、より充実した行政的医療を提供するには独法化のみが正解とは思いませんが、少なくとも現状では極めて難しいのです。
これまで、私は都議会初当選以来、7年間「医療」と「教育」を政治行動のテーマに掲げて参りました。この期では東京都医療審議会委員にも指名されました。都立病院改革を「都民視点」「現場視点」で成し遂げていきたいと考えております。
私の地元・墨田区には都立墨東病院もあります。各都立病院の院長先生のご意見もよく聞きながら、行政的医療の充実と広く多くの皆様への理解を推進していきたいと考えています。