ワクチン接種でコロナ感染は拡大するか

池田 信夫

大阪を中心とするコロナの「第4波」は、今までとは違う。高橋洋一氏が「さざ波」とツイートして顰蹙を買っているが、大阪のコロナ死者は1日2.8人/100万人で、インドと同じだ。図1のように今年3月から一貫して増えているので、このペースが今後も続くと危険である。

図1 都道府県別のコロナ死者(100万人あたり7日間)札幌医科大学

大阪府と兵庫県が突出しているので、これは近畿地方の局地的な現象かもしれないが、気になるのはワクチンとの関係である。「大阪のワクチン接種率が高いから感染が増えた」という人がいるが、そういう事実はない。医療従事者の接種率は、大阪と東京はほぼ同じ40%である。

世界的にみると、図2のように欧米ではワクチン接種の効果が出ているが、非西欧圏では逆効果になった国もある。ハンガリーとブラジルでは2月に接種を開始したあと感染が拡大し、4月にピークアウトした。ただ接種率の高いチリの死亡率はほとんど変わらないが、それより接種率の低いインドやトルコで感染が増えるなど、接種率と死亡率の相関は弱い。

図2 各国のコロナ死者(100万人あたり)

ワクチン接種で変異株が増えた

今年の2月から、ワクチン接種国で感染が拡大した原因は何だろうか。共通点は変異株である。AFPによるとハンガリーでは2月からイギリス型変異株が増え、今ではウイルスの80~90%が変異株だという。ブラジルでは、ブラジル株が流行している。

ワクチン接種の直後は一時的に免疫力が弱まるといわれ、そういう効果はアメリカでもみられたが、もともと感染率が高いので目立たなかった。

それに対して「ファクターX」の効果があったアジアでは、もともと感染が少なかったので、それが欧米に近づく平均への回帰が起こっている。かつて「欧米より2桁低い」といわれたアジアの死亡率が、今ではアメリカより高いのだ。

ファクターXの医学的メカニズムは不明だが、広い意味での自然免疫だとすれば、非特異的な弱い免疫なので、変異株の感染力が強いと突破されてしまうようだ。

日本でも、図3のように大阪では変異株が突出して多い。既存のウイルスがワクチンで減ると、それに耐性をもつ変異が増えることは、他のウイルスでもみられる現象である。

図3(厚生労働省の資料より)

だから大阪の感染拡大の主な原因は感染力の強い変異株だろうが、ワクチン接種が変異を促進する間接的な効果もあると思われる。接種した人がスプレッダーになってウイルスを拡散する効果もある。それがワクチン接種の初期に感染が拡大する原因だろう。

長期的には、ワクチン接種が完了して免疫ができると感染はピークアウトするが、問題はそのピークがどの程度かということだ。日本の被害がこれから「世界標準」に近づくとすると、一時的には死亡率がインド並み(現在の5倍)になってもおかしくない。それが今、大阪で起こっていることである。

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