小田急線に続き、京王線でも凶悪な殺傷事件が起こった。
「電車に乗るのが怖くなった」という人も多数いるようだ。
実は、米国の9.11テロの後、飛行機の利用を控えて車で移動をする人が増え、結果的に自動車事故死亡者数が跳ね上がったという事実がある。
京王線事件の犯人は、「誰でもいいから殺して、死刑になりたかった」という趣旨の発言をしていると聞いている。
誠に自分勝手で歪んだ動機ながら、本件事件は「自殺」の一種と考えることも可能だ。
ちなみに、わが国での年間自殺者数は2万人あたりを推移している。
中には、自殺に巻き込まれて被害に遭った人がいるかもしれないが、電車での巻き添え自殺を図った犯人は、(小田急線事件も併せても)2万人の中の2人だ。
事件に遭遇する確率は、1万分の1になる。
宝くじで1等2億円に当たる確率は1000分の1なので、このような事件に遭遇する確率は2億円当たる確率の10分の1に過ぎない。
だから、いたずらに不安になったり怯えたりする必要はない。
不安になったり怯えたりする必要はないが、用心をする必要はある。
あなたが横断歩道を渡っている時、「用心はするけど怯えたりしない」のと同じだ。
こういう事件を起こす犯人は、往々にして「世の中で自分が一番不幸だ」と思う傾向がある。
昔、市役所で法律相談を受けていたとき、「私はなんて不幸なんだ」と嘆く人が少なくなかった。
嘆く人に対して、「あなただけじゃないですよ。今日、相談に来られた人たちの中ではあなたはまだ状況がいい方です。外の通りをおしゃべりしながら歩いている人たちのほとんどは、人知れず自分の不幸に悩んでいるのです」と言って慰めた。
単なる慰めではない。
相談者自身が思っているほど悲惨な状況でなかったのは、相対的かつ客観的な事実だった。
「世の中で自分が一番不幸だ」と思っている人間が凶行を起こしやすいのは、周囲の人々が浮かれているように見える時だ。事件当日はハロウィーンだった。
これからの時期、クリスマスムードが漂い年末年始のお祝いムードが漂う。
こういう時期こそ、要注意だ。
コロナの時期のように「ステイホーム」をしろとは言わないが、繁華街等では人が密集している場所や、逆に人通りの少ない場所は注意しよう。
「自分は大丈夫だ」というバイアスを捨ててほんの少し用心することで、災厄から逃れられる可能性はウンと高まる。
編集部より:このブログは弁護士、荘司雅彦氏のブログ「荘司雅彦の最終弁論」2021年11月1日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は荘司氏のブログをご覧ください。