ペルーのカスティージョ大統領、就任から90日余りが経過したがメディアを避ける姿勢が今も続いている。
政権は100日は持ちそうだ
ペルーのペドロ・カスティージョ氏が大統領に就任して90日余りが経過した。メディアとのインタビューは今まで一度もないという状態が続いている。同様に大衆の前に姿を現すことも極力控え、沈黙を守って記者と接触することからも遠のいている。
当初、カスティージョ氏の大統領職は100日は持たないと予測していた専門家が多くいた。一応100日間の政権の維持はできそうだ。しかし、これから先の任期満了まで政権を維持して行くことは恐らく難しいであろう。
何しろ、カスティージョ大統領はこれまで政治を経験したことがなく、彼の所属政党自由のペルーの党首でカストロ氏とチャベス氏の崇拝者ウラジミル・セロン氏が背後から糸を引いてカスティージョ氏の現実に沿った政権運営をより困難にしているからだ。
与党が2つに分裂
一院制の定員130議席の共和国議会で彼の政党自由のペルーは僅か37議席しかもっていない。しかも、今月10月に行われた内閣改造で首相のべリード氏を含め7人の閣僚を入れ替えたことに同党の党首ウラジミル・セロン氏は反対を表明し、新内閣の議会での承認を拒否する姿勢を表明している。
ということで、同党がセロン氏の姿勢を支持する議員とカスティージョ大統領を支持する議員とに分裂。前者には16人の議員が、後者には20人の議員がそれぞれ味方している。また議員のひとりが中立を守っている。（10月15日付「ペルー21」から引用）。
議会は大統領を罷免するのに対象となる条件を広げた
大統領を罷免するにはこれまで精神的並びに肉体的に大統領としての執務の遂行が不能と判断されるようになった時点に限定されていたが、新たにモラルにおいても欠陥ありと判断されるようになった場合も議会は罷免できるという議案を承認した。ということで大統領を罷免できる幅が広がったことになる。
一方の大統領は議会が政権への信任を2度拒否した場合は議会を解散できるとしていたが、今回の議会での立案で大統領の議会の解散権をなくした。政府はそれを違法だとして憲法裁判所に訴えている。10月27日「ディアリオ・フィナンシエロ」から引用）。
このような動きから観察できるのは議会はカスティーリョ大統領を罷免する方向に向かっているということである。それを助長するかのように、与党の自由のペルーの党首セロン氏は大統領が彼の望む通りに動かないのであれば、野党が大統領を罷免するのに足らない8議席を貸す意向のあることを表明して大統領を牽制し脅迫している。（10月24日付「ディアリオ・エス」から引用）。
カスティージョ大統領は国民からの支持率を失いつつある
このような脅しを避ける意味でも、カスティージョ大統領には国民からの高い支持が必要である。が、現在の同大統領はその支持を失いつつある。世論調査Datum社の9月の統計ではカスティーリョ大統領を支持しないと答えた人が46％であったのが、10月には50％まで上昇している。また首都のリマではその率が63％と高い不人気度を示している。
それを助長するかのようにバランスエラ内務相とガリャルド教育相への国民からの不信は強く、前者は62％、後者は73％という非常に高い率で国民が支持しないことを表明している。
前者は警察庁に勤務中に汚職取締などで頻繁に懲戒勧告を受け、しかも前科のある自由のペルーの創設者セロン氏の弁護を務めていたということから、内相に就任しても汚職やテロの取り締まりなどの役目を担えるわけがないと国民から強い不信の念を抱かれている（10月13日付「RPP」から引用）。
また後者は、2017年の教員の全国ストにカスティーリョ氏と一緒に参加したメンバーである上に、彼が属していた教員組合のリーダーたちがゲリラ組織センデロ・ルミノソと関係をもっていたという。このことから前者と同じく彼は教育相としては不適任だと評価されている。（10月17日付「ヘスティオン」から引用）。
首相に就任したミルタ・バスケス氏については、首相に就任したことに国民の間で40％が賛成しているが、また反対も39％と高い。（10月21日付「インフォバエ」から引用）。
このような背景がある中で新内閣は議会での信任を得なければならないのである。
カスティージョ大統領の前任者サガスティー前大統領は暫定的に大統領に就任したが、彼の前の3人の大統領クチンスキー氏とビスカラ氏は議会で罷免され、その後を継いだメリーノ氏は辞任といった具合で、クチンスキー氏からサガスティー氏まで僅か4年間で4人の大統領が誰ひとり5年の任期を満たしていないというのが最近のペルーの政治である。それにカスティージョ大統領も同じ運命を辿る可能性が高い。
