バイデン大統領は外遊中ですが、ホワイトハウスは行動しました。
何かと申しますと、9月9日に発表したばかりのコロナ対策強化のガイドラインを緩和したのですよ。12月8日までのワクチン接種義務化期限をめぐり、政府委託業者(ボーイングやアメリカン航空、IBM、食品加工業者などを含む)である企業に、信教上による事情などに加え、義務化の裁量を与える方針です。
従業員や労働組合の猛反発を受け、企業側に譲歩したとみられます。例えば、サウスウエスト航空は10月11日のコロンバスデーの3連休を控え、バイデン政権のコロナ対策強化に対応し全従業員にワクチン接種義務化を発表していました。その結果、3連休初日の9日に1日当たりのフライト数の約2割に相当する808便、10日には1,000便以上が欠航を余儀なくされました。理由として、悪天候と人手不足を挙げていましたが、他の航空会社の欠航数と比較すれば不可抗力でなかったことは明白です。
実際、同社のパイロット9,000人を抱える労働組合”サウスウエスト航空パイロット協会”は、ワクチン接種義務化が鉄道労働法に反するとテキサス州連邦地裁に提訴(州連邦地裁は取り下げ)。また同社は、ワクチン未接種者に対する無給休暇措置を撤回したものです。アメリカン航空の労組”連合パイロット協会”も、10月1日に声明を公表し個人の判断に委ねるべきと主張していましたよね。
足元、政府委託業者だけではありません。バイデン政権のコロナ対策強化では100人以上の従業員を抱える企業のワクチン接種義務化あるいは最低1週間に一度の陰性証明が必要となりますが、年末商戦の書入れ時を前に難色を示す企業も。大手企業の場合は賞与など人材確保が比較的容易なのでしょうが、ただでさえ供給不足の苦境に瀕する上、「グレート・レジグネーション(Great Resignation)」と呼ばれ大量離職時代を迎えるなかで、企業側としては痛し痒しなのでしょう。
バイデン政権のコロナ対策強化をめぐっては、テキサス州やフロリダ州、ミズーリ州など共和党知事の19州が提訴する状況です。
さて、ここで気になるのが米国でのワクチン接種状況です。足元では以下の通り。
こうしてみると、決して低いわけではありません。バージニア州知事選を控えた世論調査結果で明白になった通り、自由の国アメリカの市民らしく、ワクチン接種義務化を「強制」と捉え、反対する人々が少なくないのでしょう。今回のホワイトハウスの措置は、政権側によるバージニア州知事選を見据えた対応と見えなくもないような・・。
政府委託業者以外の企業はワクチン接種義務化のガイドライン緩和を狙ったロビー活動を展開中との報道もあり、バージニア州知事選の結果次第では修正もありうる?
ちなみにリベラル寄りのNY市でも、ワクチン接種義務化反対のデモが発生中。医療従事者が解雇される事態に発展しており、ワクチン未接種の警官や消防隊員などが無給休暇を迫られ街の安全が危ぶまれる見通しのなか、ワクチン支持派のニューヨーカーの間でも「コロナ禍で命を削ってくれた人々をないがしろにするなんて」との声が聞かれていました。
編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK –」2021年11月1日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。