若者よ!やっぱり「FIRE」はやめなさい!

ご存知の方も多いと思いますが、FIREとは「Financial Independence, Retire Early(経済的自立と早期リタイア)」の略称で、日本の若者には相変わらず甘美な響きがあるようです。

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書店に行くと、若くして仕事をやめて、のんびりと暮らす方法を指南する書籍や雑誌が大量に並んでいます。

しかし、以前から書いているように、私はFI(経済的自由)を獲得することには賛成ですが、若くして仕事を辞めてしまう RE(アーリーリタイアメント)には反対です。

なぜなら、若くして仕事を辞めてしまうと、自分の仕事のスキルはその時点で止まってしまうからです。時間が経てば経つほど、世の中は変化していきますから、求められるスキルと自分の能力との乖離が広がり、もう一度働こうと思ってもその機会は失われてしまいます。

つまり、RE(アーリーリタイアメント)は「稼ぐ力を失う」ことにつながるのです。

と言われても、FIREを目指す若者からすれば、そもそも一生仕事をしないのだから、スキルの劣化は全く問題ないと考えるのかもしれません。

しかし、FIREの前提となるコツコツ積み上げてきた資産や、不動産収入などによる不労所得は、残された長い人生に対し、未来永劫に十分なものとは限りません。

自分の稼ぐ力がなくなってしまえば、経済環境の想定外の変化があった場合、生活水準を切り下げることでしか対応することができなくなります。

昨年後半から株式市場が変調をきたし、アメリカ株式投資などで資産形成してきた人たちが試練に立たされています。

例えば「レバナス」と呼ばれるアメリカのナスダック市場のインデックスにレバレッジをかけたハイリスクの投資信託を保有している人は、リスクの取りすぎで大きな逆風にさらされています。

株価が変動するのは当たり前のことですが、株価の右肩上がりを前提にライフプランを考え、アーリーリタイアした人たちにとっては、想定外です。

しかも、このようなマーケットの変動は、今回だけではありません。これからも繰り返されることを考えれば、仕事のスキルアップを放棄して、資産運用だけに依存する長期のマネープランが極めて危険であることが理解できると思います。

資産1億円で年間リターン4%で400万円で生活するといった、楽観的な前提条件でFIREした人たちには、残念ながらこれから過酷な人生が待っていると思います。

以前のブログにも書いたように、今のFIREブームは、私にはフリーターブームと重なってみえます。雇用環境が激変しフリーターブームが終わったように、金融マーケットの投資環境が激変すれば、FIREブームも終焉するのではないかと思っています。

経済的自立を確立する一番安全な方法は、どのような環境になっても自分でお金を稼げる力を常に維持しておくこと。この原則を忘れてはいけません。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2022年1月21日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

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資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。