今週のメルマガ前半部の紹介です。先日、こんなニュースがネットで話題となりました。
あー、これは採用担当者なら誰でも一度は経験してるはず。それくらい大企業ならどこでもある話です。筆者もなんだか懐かしくなりましたね。良い学生を採る→工場に配属→半年くらいでエスケープされる、というプロセスは実際に何度か目にした経験がありますから。
なぜ、採用と配属のミスマッチは起きてしまうのでしょうか。そして、個人が取りうる対策はどんなものがあるんでしょうか。組織について考えるいい機会なので簡単にまとめておきましょう。
結論から言うと、新卒採用のミスマッチは、ある程度の規模の日本企業であれば必ず存在し、解消することはまず不可能です。これはメーカーに限った話ではなく、筆者の知っているケースでも総合商社に就職したのに国内スーパー担当になってブチ切れてるトリリンガルとか、財務経理志望でインターンも複数社経験した上で入社したのになぜか営業配属になったりか、そういう人は掃いて捨てるほどにいます。だいたい4月の配属発表の場で泣いてる人は数人はいるものです。
そうやって泣いている人を、日本企業はゼロにはできないし、そもそもするつもりもないでしょう。なぜか?それは、そうした涙こそが「日本型雇用の強み」だからです。
採用ミスマッチがどうやっても避けられないワケ
ミスマッチが生じる理由としては、まず採用活動と配属決定の時期的ズレがあげられます。当たり前ですが、企業は採用活動を開始する前に、大まかな配属枠を決めます。たとえば2017年4月入社者に対する配属枠は、だいたい2016年の春先に決まっているものです(従業員数が数万人いるようなマンモス企業だと各事業部から数字を集めるだけで2か月くらいかかるので2015年末くらいだったりもします)。
すると、実際に配属先の決定する時期(2~4月上旬)との間に、1年以上のズレが生じることになります。新聞社とか公務員ならともかく、普通の民間企業で一年間というといろいろビジネス環境に変化が起きるものです。はっきり言えば、1年前の人員計画と現実のニーズの間にはかなりのギャップが生じるはず。
我が国においては内定が事実上の雇用契約とみなされるので、一度内定を出した以上は65歳まで面倒を見ることが前提となります。「予定変わったからよそへ行ってくれ」というのは許されません。そこで、あえて配属約束は曖昧にしておき、配属発表で一部の人に泣いてもらうことで上手く調整するわけですね。これが「涙は日本型雇用の強み」と言った理由です。
ついでに言うと、事務方である人事部門が一括して採用する手法もミスマッチの原因の一つですね。その業務に携わっている各事業部門が直接採用する方が、間違いなく人事部門が選ぶよりもよりマッチした人材を採用できます。営業にせよ開発部門にせよ、即戦力度は大きくアップするはず。
でも、そうして職場がダイレクトに採用してしまった人材は事実上の配属約束付きであり、入社後に別の部門に配属したら絶対に納得はしないでしょう。入社時は志望通りの部署に配属されても、5年経ち10年経つうちに、本人の希望よりも組織の都合を優先して異動してもらわなければならないタイミングが必ずやってきます。
だって終身雇用である以上、人が余っているところから足りないところに会社命令で異動するのは当然の義務だから。そういう時に、はたしてピンポイントで一本釣りされた人はあっさり異動を受け入れ、翌日から新たなキャリアに邁進してくれるでしょうか。筆者は難しいと思いますね。
まとめると、現在の終身雇用制度を前提とする以上、やはり間に人事部門が入って大雑把な採用活動をやり「いざ入社してみるまでどういう仕事をどこで行うのかすらわからないし、その後のキャリアパスも深い霧の中」状態で新人を採用するのが一番合理的ということになります。そして“ミスマッチ”は入社時だけではなく、その後も異動などで定期的に発生するものであり、日本企業で働く以上は腹をくくって付き合っていくしかないわけです。
本気で採用ミスマッチを無くそうとするなら、
1. とりあえず新卒一括採用は廃止、各事業部門ごとに通年採用する
2. 雇用死守が原則の終身雇用をやめ、職務をベースとした流動的な労働市場に移行する
くらいやらないといけませんが、こればっかりは明日明後日に実現する話ではありません。というわけで、これまでも多くの新人が「聞いてないよ!」という部署に配属されてきましたし、これから先も配属され続けることでしょう。
以降、
ただし、強みは同時に弱みでもある
大学での研究内容がそのまま活かせる職に就ける新人はほとんどいない
氏の判断は正しかったか
希望と違う部署に配属、異動となった際の処方箋
編集部より:この記事は城繁幸氏のブログ「Joe’s Labo」2016年4月21日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった城氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はJoe’s Laboをご覧ください。