パンチ不足だった岸田総理会見:すべて受け身でディフェンスの姿勢

リーダーシップとはこの人について行きたいと思わせる魅力の強さでありますが、どうも今回の記者会見では岸田首相の弱い面が全面的に出てきてしまい、先行き不安を感じさせるものになってしまいました。この先、何もなければ3年近く選挙がなく、大きな政策を実行するには絶好の機会です。つまり、大仕事を全力で全うする最高のチャンスに巡り合えたともいえたのです。

参議院選挙の直前に安倍氏が凶弾に倒れたのですが、岸田首相はそれをプラスに持っていけなかった、これが現状であります。少なくとも選挙戦ではあの事件で多少なりとも自民党に票が多く入ったとされ、岸田政権にそれなりの期待が込められていたのです。野党も党首交代や幹部の入れ替えが続き、今後も見込まれる中、自民党がこれほど躓くとは私としても想定以上に悪いな、という印象です。

岸田首相Fbより SeanPavonePhoto/iStock

コロナ隔離後の31日の記者会見の内容はすべて受け身でディフェンスの内容です。旧統一教会、国葬、コロナ対策…にあたってどうする、と国民や野党からの突き上げを受けての話ばかりで首相として、あるいは政権として何をしたいのか、ビジョンを見せる強気の姿勢が見られず、むしろ謝罪に追い込まれたのは失望であります。

まず、旧統一教会問題ですが、私なら話題に上がる国会議員との関係を指摘するのではなく、なぜ、多くの日本人が、そしてその大半が女性なのか、そこを探ったうえで論理展開する手はあると思います。

つまり、将来の不安なりを抱える日本人女性が新興宗教に頼らざるを得ない現代社会を変えていくという強力なメッセージを打ち出すことがまず1点目。次いで党としては「勝共」として膨張していた共産主義との対立という観点から歴史的に旧統一教会とのつながりが出来たが、時代の変化を議員が見抜けず、党として情報の更新と共有化もできなかったことは党執行部の反省するところであり、ここは党が議員と党員の教育プログラムを構築すること。3点目が「信教の自由」という観点があるものの政治家は広く国民から選ばれた代議員であることを認識し、特定の息がかかるところや疑念を持たれる付き合いは旧統一教会に限らず行わないこと、これがメッセージではないでしょうか?

つまりアンケートや、その調査結果を発表する、といったほとんど「やっています」「対策しました」的ないかにも議員が考えそうな小手先の内容は真の価値はないと思います。

次に国葬ですが、自民党の悪い癖は昔から「隠す」ことなのです。警備費がいくらかかるのか目途ぐらい公表したらよいと思います。岸田首相は必死に見積もれない理由と予算内だという自己正当性を述べていますが、これは自分の都合のよい解釈です。

その上で外国要人の警備になぜ莫大な資金を投じるのか、説明すればよいのです。つまり「外交」です。お亡くなりなった安倍氏には申し訳ないのですが、安倍氏が首相時代に築いた外交があったからこそ、数多くの海外要人が日本を訪れる、そしてその間に総力を挙げて外交をするのだ、ということを理解していただくのです。

今、世界は「不和」なのです。ましてやコロナで要人も動きにくかった中で日本は全方向型外交を行ってきている中で通常の国際会議とは違うレベルの下地を作ることは重要です。今回の国葬にはウクライナのゼレンスキー大統領も参列を検討しているとされます。野党は安倍氏に対して金を使うという理論なのですが、そうではなく、日本国のために金を使うのだ、と言い返す胆力が必要でしょう。

最後にコロナですが、第7波がやや沈静化する方向にありますが、今回の波は今までとかなり様相は違ってきたと思います。つまり、コロナが変質化する中で国の方針と専門家の躊躇、都道府県の足並みの不揃いが目立ってしまったということです。例えば更なる調査が必要ですが、コロナで死亡したとされる人は本当にコロナが主因だったのかが私は疑問なのです。つまり統計をどう読むか、なのですが、統計の原資料を作る段階で正しいデータ処理をしていなければアウトプットされるデータは正ではありません。つまり無意味なデータです。

なぜそう思うかといえば東京都の小池都知事が一定の死亡者が出ているので全数把握をすると政府方針と違う会見をしていたからで、小池さんは死亡者数を利用しているな、と思ったのです。つまり自分の個性を出すためにデータを活用したわけです。これはおかしいと思うのです。

旧統一教会問題もコロナも根は同じで日本人特有の「不安意識」が異様に高いことが背景にあります。セロトニンが少ないと言ってしまっては元も子もないのでそうではなく、不安の要因を突き詰める、メディアが不安を無下にあおるような内容を書けばそれを読者やニュースポータルが厳しく管理する、あるいはメディア情報の運営者が品質の高い内容に取捨選択するなどの転換を図るべきではないでしょうか?

モーニング娘の「Loveマシーン」の歌詞、覚えていますか?「あんたの笑顔は 世界がうらやむ 夢があるんじゃないか」「日本の未来は 世界がうらやむ 恋をしようじゃないか」です。最後の恋の部分、これは外交だという意味で読んだらどうでしょうか?

岸田首相はまじめすぎるのだと思います。表情がなさすぎます。もっと笑顔を、もっと幸せを発信してもらいたいものです。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2022年9月1日の記事より転載させていただきました。

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会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。