18日に公表された4月のFOMC議事要旨によると、大半の参加者が、第2四半期の成長が加速し雇用や物価が改善を続ければ、6月の会合で追加の利上げをすることが適切だ、と判断していた。これを受けて18日の米国市場では6月のFOMCでの利上げ観測が再燃した格好となった。ただし、6月の利上げの可能性については、最近の地区連銀総裁の発言を確認してもそれが伺えるが、市場が半信半疑となっていたに過ぎなかったようにも思われる。
5月17日にサンフランシスコ連銀のウィリアムズ総裁は、米経済の緩やかな成長継続と失業率の低さを踏まえれば、FRBによる年内2、3回の利上げが引き続き「理にかなう」との見解を示した(WSJ)。
アトランタ連銀のロックハート総裁も利上げペースに関して「(年内に)2回もしくは3回を想定している」とした(日経新聞電子版)。
ダラス連銀のカプラン総裁も17日にFRBが今年6月か7月に利上げすることを支持する可能性があると語ったそうである(WSJ)。
ウィリアムズ総裁、ロックハート総裁、カプラン総裁は3人とも今年はFOMCでの投票権は持ってはいない。だから彼らの意見に耳を傾ける必要がないとの見方はできない。発言の方向性が皆何故か同方向であり、これは6月のFOMCの利上げに向けた下地作りとみてもおかしくはなかった。
投票権を持つボストン連銀のローゼングレン総裁、カンザスシティー連銀のジョージ総裁、クリーブランド連銀のメスター総裁も以前にFRBの利上げスタンスに変化がないことを示していた。
中央銀行の金融緩和については日銀の黒田総裁のサプライズ型が市場に対してはそれなりに効果が出ることがあるが、金融引き締めについては批判が出ることも多く、マーケットがネガティブが反応をしかねない。このため事前にその可能性を織り込ませることが必要であると思われる。
17日に発表された4月の米消費者物価指数は前月比0.4%の上昇と予想を上回り、前年比では1.1%の上昇となった。食品とエネルギーを除くコア指数は前年比2.1%の上昇となった。FRBの物価目標はCPIではないが、この数値はそれほど高いとは言えないものの、FRBの利上げの動きを妨げるものではなかろう。
英国のEU離脱問題などもあるが、市場に大きな動揺が起きない限りは6月のFOMCでの利上げの可能性は高いとみている。そしてこの追加利上げを前に米政府も為替の動向に神経をとがらせているように思われる。
5月20日・21日にG7財務大臣・中央銀行総裁会議が仙台の温泉地である秋保で開催される。それを前に米財務省高官が16日に最近数か月の円の動きは秩序的だと述べたそうである。これに対して浅川財務官は16日に、外国為替市場の動向に関して「過度で無秩序な動きは経済に悪い影響を及ぼしうる」と強調していた。日米が為替動向を巡って火花を散らしている構図となっているが、米国政府としても大統領選挙も控え、米利上げなどによるドル高の動きは阻止したいところであろう。もちろん日本政府としても年初からの急速な円高の動きを危惧しているものと思われる。
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