生活やビジネスで活用できる知識を、大人の教養として蓄えていきたいと考えている人は多いはず。そこで本を読もうと思ったはいいけれど、自分に適している本を選ぶのに悩んで、結果的に失敗してしまう……という経験をしたことはないでしょうか。選書にも、経験や能力が必要だということに、最初の段階で気づくのです。
そこで今回は、会計士であり、大手コンサルティングファーム出身の経営者であり、youtubeの書籍紹介チャンネルは登録者が13万人超、自著の累計販売部数は55万部と、多彩な分野で活躍をする金川顕教氏の著書「世界の研究事例×100冊のベストセラー 科学的に正しい読書術」から一部を抜粋・再構成して選書の技法を紹介します。
ひとつのジャンルにつき複数冊選ぶ
自分にとって未知の分野の本を読む場合、最初に選んだ1冊をじっくり読むのもいいのですが、ぜひ取り組んでほしいのが、ひとつのジャンルについて最低3冊の本を読む「多数冊読み」です。
多数冊読みをすることによって、その分野に共通した重要なポイントを把握できます。
当然のことですが、同じジャンルについて書かれた本であっても、著者によって主張が違います。一方で、その分野で欠かせないこと、絶対的に重要なことというものもあるのです。
仕事を例にして考えてみましょう。今まで開発部門にいて、会社の数字にはまったく関心がなかった人が、経営企画部に異動になり、来期の必達目標である売上増のための事業計画を立てることになったとします。
会社の売上を増やす方法には、たったひとつの式しかありません。売上=単価×販売数です。単価か販売数のどちらか、あるいは両方を上げるということになります。
それくらいに共通認識である「単価×販売数」の式ですが、もし異動してきた社員が1冊だけ買ってきた本が、読者の意表を突くような「売上を増やしたかったら小さな会社を買いなさい」という主張をしている本だったら、どうでしょう。
もちろん、長期的にはM&Aで売上規模を拡大していくという方法もあるでしょうが、初めにするべきことではありません。
しかし、もしその本に書かれていることだけを鵜呑みにして、その社員がM&Aの計画書などを提出してしまったらどうなるでしょう。部内では笑い者になり、評価は確実に下がるのではないでしょうか。
そうではなく、もし3冊の本を買ってきて一通り読んでいたら、おそらく、どの本にも「単価×販売数」の話が出てくるでしょう。すると、その通りに、単価を引き上げる方法や販売数を増やす方法を考えることになるはずです。
多数冊読みでその分野の基礎を固める
この例は少し極端ですが、つまり言いたいのは、特に自分が知らない分野の本を読むときには、何が標準的な知識なのかを把握するために、最低でも3冊の本を読み比べてほしいということです。
その3冊すべてに共通して書かれていることが、すなわちその分野で重要なことで、押さえておくべきことだからです。
別の言い方をすれば「多数冊読み」は、そのジャンルにおける「常識」を身につけることでもあります。その常識がわかったうえで、どの本に書いてあることを取り入れるか、幅広い視点を持って考えればいいのです。
単価を引き上げるためには、商品デザインを変える、使っている材料を高級なものにしてみるというのもいいでしょう。販売個数を増やすのは、販路を拡大するか、イベントなどを頻繁に行って商品の認知を広げるなど、方法はいろいろとあります。
そこで、顧客の抵抗なく単価を上げる方法や、販売個数を増やす方法について、各著者でオリジナル性が出ている部分を見つけ、自分たちにはどのような方法が有効なのかを考えればよいのです。
未知のジャンルの常識を知ることが多数冊読みの目的でもあるので、3冊を選ぶときには、内容が極端に違うものは避けて、できるだけ同じようなものにしましょう。先の例で言えば、根本的な部分「単価×販売数」を増やす方法について論じている本を3冊選ぶということです。
まずは多数派の意見を知るための読書をすること。そしてそのジャンルについての基礎固めをすることです。意外な発想を学ぶのは、その後で十分なのです。
ぜひ実践してみてください。
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金川 顕教(かながわ・あきのり) 公認会計士・税理士
公認会計士、税理士、『YouTube図書館』運営、作家。
三重県生まれ、立命館大学卒業。大学在学中に公認会計士試験に合格し、世界一の規模を誇る会計事務所デロイト・トウシュ・トーマツグループでの勤務を経て独立。現在、会社7社のオーナー業の傍ら、起業家育成プロデュース、出版プロデュースを行い、1人でも多くの人に読書の大切さを伝えるため、『YouTube図書館』の運営及び執筆活動を開始。『YouTube図書館』では、毎日更新、年間365本の書籍解説動画をアップし、これまでに解説した書籍は1,640冊以上、チャンネル登録者は132,329人、動画再生数は2,656万回を突破(2023年1月現在)。執筆活動では、ビジネス書、自己啓発書、小説など多岐にわたるジャンルでベストセラーを連発し、累計部数は55万部以上。
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編集部より:この記事は「シェアーズカフェ・オンライン」2023年5月8日のエントリーより転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はシェアーズカフェ・オンラインをご覧ください。