黒坂岳央です。
リアルでもネットでも「距離感」がバグった人の対応に困ることがある。人にはそれぞれ、パーソナルスペースと呼ばれる快適空間がありそのラインを踏み越えられると不快感を覚えるようになる。
情報化社会になり、不文律やマナーは影響力を持つ人によって様々な角度から発信されているが、依然として距離感のバグった人と対峙することがある。本稿ではその特徴の言語化に挑戦したい。
1.いきなりマウント
これは主にネット上で起きる現象なのだが、初めての会話が「こんにちは」すらない説教やマウントである。
原因は自分の記事や動画でそれを見た人の一部が「お前は間違っている!」「自分の方が優秀だ」といった趣旨のメッセージを送ってくる。発信者と視聴者の関係性において、視聴者はいつも自分を動画や記事ごしにみているのでよく理解している気になってしまうのだが、発信者の立場からすると視聴者は見えないので「どちらさま?」と感じてしまうことになる。
我が国には言論の自由があるので、批判は個人の権利でありこちらの見えない場所で怒ったりマウントしたりは自由にしてもらっていいと思っている。だが、直接挨拶も目的不明でこのようなメッセージだけが来ると本来、伝わるものも伝わらず「面倒な人に絡まれた」という認識以外に持たれることはない。
積極的に関わり合いになりたいと思う人は少ないので、ブロックやミュートされてしまい、怒る側も「自分の怒りや優秀さを理解してほしい」という願望が実現することもなくなってしまう。これではお互いに不幸になるだけだ。
以上の理由から、初対面の相手と直接メッセージを送る場合はまず最低限の挨拶と、なぜこのようなメッセージを送っているのかという目的を明確にするところから入った方が良いだろう。
2.重すぎる話題
仕事柄、毎日勉強や仕事についての相談や悩みを受ける。すでに何度かやり取りを経た人や、解決可能で分かりやすい内容の相談をされる分には何も問題はない。むしろ、自分を深く頼ってもらえることに嬉しく感じるし、できるだけ相手の悩みを解決したいと考える。こちらのアドバイスが役に立って、相手から喜びの声が届いた時には至福のひとときになることもある。誰しも人から頼られたり、社会の役に立つ実感を得ることは嬉しいのだ。
問題はあまりに重すぎる話題を持ち込まれた場合である。詳しくは書けないが、「ひどい裏切りにあい、人生を閉じようと思っている。人生最後の話し相手になってほしい」とか「多額の借金があって困っている。至急、資金援助してほしい」といった話だ。
本人にとっては進退窮まる状況で、最後の拠り所として相談してくれているのかもしれない。なるべくその心境は理解したいし、何度かやり取りを経た相手なら心情を吐露してくれたことは信用の証として喜ぶべきかもしれない。だが、さすがに難しく重すぎる話題は対応に困ってしまう。自分は人様を窮地から救えるような大物ではなく、できることなど極めて限定的である。こうした質問を受けて、相手の素性がよくわからない状態で下手な回答を出すと、相手の人生に大きな影響を与えてしまいかねない。
こうした問題が生じた時は、まずは法の専門家への相談が推奨される。
3.議論大好き
これは多くは中高年の男性のパターンが多いが、あるべき論や正論の議論を持ちかけられることが少なくない。これまで女性から議論を申し込まれたことは一度もない。ほぼ100%が50代以降の男性である。
過去記事に書いたことがあるが、自分は他人との議論は最初から一切しないと決めている。理由はほとんどの議論は時間と労力のムダに終わるからだ。お互いにメリットのある議論とは、相手を理解したいというリスペクトの姿勢に立脚しており、尚且つお互い自分が持たない知識や技術、斬新な視点やユニークな思考を相手が持っており、議論を通じて価値交換される場合に限ると思っている。
「こいつを打ち負かしてスカッとしたい」「自分が優秀と周囲に思われたい」といった多くの議論好きの持つ願望を成就するために限られた時間と労力を差し出したい人はいないだろう。
こうした議論好きの人が持つ価値感は「議論を申し込まれて受けないのは逃げである」という一方的で単願思考、視野狭窄に陥っている事が多い。それでいて議論が始まると相手をマウントしたい欲求が顕在化し、ひたすら攻撃的な対応に不快感を覚えることが少なくない。有効な対応方法は無視一択である。個人的にはよく知らない他人と議論するより、自分の人生の方向性とこれからの行動を心の中で自分自身と議論する方がよほど生産的に思える。
◇
人間の価値感はあまりにも多様すぎ、距離感も人によって全然違う。初対面からいきなりパーソナルスペースに土足で踏み込むことは誰しも不快感を覚えるだろうが、少しやり取りをして親密になるといきなり難しくなる人もいる。親しき仲にも礼儀ありという言葉通り、踏み込む前に相手の立場を想像し、相手が不快に思える行動は控えるのが望ましいと思うがどうだろうか。
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