勝負した経験がない男は弱い

黒坂岳央です。

先日Xで次の投稿が流れてきた。

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動画の内容を簡単にいうと、スポーツや部活で悔しい思いや勝負した経験がない男性は弱いという話である。リプ欄や引用欄では「事情があってスポーツができない人もいる」「なぜ男に限定する?」といった反発も見られたが、言いたいことの本質はよく分かる。

この動画で引き合いに出しているスポーツや部活は単なる一例に過ぎず、人生で強いプレッシャーがかかりプライドを持って勝負した経験がないといざという時に勝負に出られないという意図なのだろう。

ジェンダー問題が取り沙汰され、女性の社会進出が進んだ現代においても、男性が仕事という勝負の土俵を避けて生きることは現実問題かなり難しい。故に強さを持っておくためにも勝負経験は大事だと言いたいのだと思っている。

この動画の内容で言いたかったことは「勝負した経験がない男は弱い」という話だと解釈し、そこを踏まえて持論を展開したい。

Jan-Otto/iStock

戦闘経験が人を強くする

戦闘、というととても物騒なワーディングチョイスに思われるが、我々は資本主義社会という太古の争いとはフィールドを変えた戦いを繰り広げている。つまるところ、地球上の限られた資源や富を競って奪い合っているということだ。国家や会社、共同体とチーム形態は多様化したし、ゲームルールも武器で殴り合う原始的なものではないが、本質的な部分で先祖から連綿と続く競争社会に我々は身をおいているという現実がある。

そんな競争社会において、人生の早い感受性豊かな段階で戦いの訓練を積んだ人とそうでない人は確かに強さに差が生まれるだろう。実際、リクルート現場では新卒採用時に体育会系が好まれやすいという話に現れていると思っている。

スポーツ経験で体力がある、というだけではない。チームでの戦闘経験に加え、努力体質、理不尽な負けを喫する経験が、その人自身を強くするというメンタル面も考慮されての話だろう。野球でもサッカーでも、どんな競技でも勝ち負けを追求し毅然たる結果を突きつけられる経験を重ねれば人はメンタルが強くなっていく。戦闘経験が人を強くするのだ(もちろん、心折れてしまう人もいるので例外はある)。

自分自身、学生時代は部活どころか学校もろくにいかなかったが、勉強や仕事で強いプレッシャーをはねのけて勝負を繰り返す中で間違いなく強さを獲得していった実感がある。途中で何回負けても、とにかく最後に勝てばいい。この感覚を得たことで、諦めずに何度も挑戦する忍耐が身についたのだ。

ヒッチハイクと飛び込み営業の共通点

ヒッチハイク、それに飛び込み営業にはある共通点があるのだという。それは目標設定をして、膨大な試行回数の中からPDCAを回して最後に成功裏へ導くというプロセスである。これもスポーツや部活などとは分野は違うが、必要なプロセスにはいくつも共通点があり、自分を強くしてくれる一つの「戦闘経験」になると思っている。

たとえばヒッチハイクは、闇雲に「乗せてください」と書いた札を掲げるだけではなかなか止まってくれない。満面の笑顔を作るとか、最終目的地の遠方の地名を書くのではなく、近くの地名を書いて乗せてもらった後に改めて交渉するなど工夫すれば成功確率を高めることができるのだ。最初はドキドキ、断られることにショックを受けても経験を重ねれば次第に慣れてくるだろう。

筆者がテレオペレーターをしていた時は、利用者へ電話をかけて有料プランを案内して入会してもらうという営業の仕事があった。ただトークスクリプトを読み上げるだけでは「仕事で忙しいから営業の電話はやめてくれ!」とガチャ切りされてしまう。工夫して「◯◯さまはもう7年も長くご契約を頂いております。現在のプランは月々このくらいご利用されていますよね?Bのプランに変えるとこのくらいお得になるのでおすすめですよ」と具体的な年数や利用状況を伝えながらかけると、ガチャ切りされる確率はぐっと減り、まともに話を聞いてくれるようになった。人間は「自分のことをわかってくれてる」と思う相手は無下にはできないのだ。また、何度もガチャ切りを経験すると段々慣れてくる。

つまるところ、完全に自分の心を破壊してしまうようなトラウマレベルでないなら、失敗や挫折経験はある程度慣れておいた方がいい。失敗慣れがその後の人生で勝負できる礎にしてくれると思うのだ。

人生で勝負するタイミング

人生にはいくつも勝負のタイミングがある。

たとえば高いスキルが求められる上昇気流に乗る転職がその一つだ。条件や待遇はいい。だが、能力が足りずに研修期間中に首になったらどうしよう?厳しい社風のようだがついていけるか不安。物怖じする瞬間はいくつもあるはずだ。

その他にも起業、投資も始めてはドキドキするし、「自分にできるのか?」という不安は絶対に押し寄せてくれる。仕事関係だけではない。結婚や出産も大きな勝負になる。これらはうまくいかなかった時のダメージが計り知れない。

そんな不確定性が強く、逃げ出したくなるような局面で自分を立ち向かわせてくれるフロンティアスピリッツは、過去の勝負した経験であることが多い。自分はそうだった。

起業すると経験したことがない勝負をたくさんする。会社や上司という後ろ盾は一切ない。全責任、全ての結果は自分にそのまま跳ね返ってくる。これはとてつもないプレッシャーだ。しかし、何度も勝負を重ねていくと段々慣れてくる。勝負のタイミングで後退りする代わりに、前のめりになれる。

件の動画の主張はなかなか強く、反発する声も一部に見られたが自分自身はよく理解できるつもりだ。

どれだけきれいごとをいおうが、長い人生勝負するタイミングはかならずある。そんな時、過去の戦闘経験が立ち向かう強さを与えてくれる。永遠に勝負から逃げ続けることは難しい。そうなればジリ貧になっていき、もはや勝負のチャンスすら与えられなくなる。だから強くなるためにも、戦闘経験を積んでおくことは悪いことではないと思っている。

 

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。