株高に新NISAのスタートも重なって株式投資への関心が高まっています。一方、投資するなら不動産のほうがいいという意見を持つ人も。どちらがいいかと迷うとしたら、それぞれの特性を知る必要があるでしょう。
韓国で100万部の大ヒット。とてつもなく貧しい境遇から成り上がり、韓国人として初めて、アメリカの外食産業で大成功した希代の起業家、キム・スンホ氏が語る「伝説のお金の授業」を邦訳版として書籍化した『お金は君を見ている 最高峰のお金持ちが語る75の小さな秘密』(サンマーク出版)から一部抜粋、再構成してお届けします。
不動産と株、投資するならどちらだろうか?
過去10年間の韓国の不動産指数と株価指数を比べて見ると、そう大きな違いは感じられない。
もちろん、過去20年間を見れば株式市場のほうがよい結果を残しているのは事実だが、不動産指数には株の配当にあたる賃料が含まれていないので、どちらがいいか決めることは難しい。
一般に不動産投資と株式投資はまったく違うものだと思われているが、そのような見方は誤っている。
不動産投資は保守的で安定性が高く、株式投資は攻撃的で高成長を見込めると思われがちだ。
しかし、不動産市場にも賃料の収益を基準にして売買する市場があるし、不動産開発によって収益を生む市場もある。
賃料に注目した不動産投資は、いわば高配当の優良株への投資と同じであり、不動産開発への投資は有望なテーマ株への投資と同じ性格をもっている。
つまり、投資市場の違いで投資の性格を分けるのではなく、投資スタイルによって分けるべきだ。
株の配当を受け取るのは、家賃を受け取るのと同じだ。家賃収入を目的にする家主は、不動産価格を毎月確認する必要はない。
配当目当ての株式投資も、配当の額が重要なのであり、株価の変動はあまり問題にならない。
そうした人は、今年の不動産価格が上がらなかったとか、株価が上がらなかったからといって焦らない。不動産価格は賃料更新に従って上がるものであり、株価は実績に従って上がるものだと思っているからだ。
だから、どちらの投資者も同じ性質をもっていると言える。
株と不動産のどちらがよい投資先なのかと尋ねられたら、彼らは配当と賃料とを比べてより多いほうがいいと答えることだろう。
「いま株を買うべきか?」への答えがバラバラな理由
株に投資する人も、大きく2種類に分かれる。
両者はまったく違う部類の投資者だ。
会社の内在価値に注目し、実際より低く評価されている会社の株を買っておき、成長するのを待つ長期投資を好む投資者がいる一方、群集心理に基づく株価のテクニカルな変動に目をつけて売買するトレーダーもいる。
同じ会社の株を売買するにも、その会社とともに仕事をするつもりの人もいれば、右から買って左に売り抜けるトレーダーもいる。
テクニカル分析により売買する人は、優秀なトレード・ツールと取引高だけに神経を使えばいいので、どんな会社で、その会社の将来はどうなるかなどには関心がないこともある。
そういうわけで、株式投資の初心者が誰かに「いま売るべきですか?」とか「いま買ってもいいですか?」と質問をしても、てんでばらばらの答えが返ってくるのだ。
尋ねるほうも自分がトレーダー(Trader)なのか、投資者(Investor)なのかを知るべきだし、答える人も質問者がトレーダーなのか、投資者なのかを知ってから答える必要がある。
質問するのはいい。
勉強ができれば必ず成功するというわけではないが、質問する人は成功する確率が高い。
ところが、投資の世界は別だ。
投資はお金に直接結びついているので、言葉ひとつによる決定が損益と深く関係している。
いちばんの問題は、答える人が答えを知らないことだ。
銀行員、証券会社の社員、会計士、プロの投資家、さらには有名なファンドマネージャーでさえ、本当の答えを知らない。
彼らが言えるのは自分たちの展望や噂だけだ。
新聞やテレビでよく見かける「投資プロの必殺技」「推薦銘柄」「狙い目」「投資のコツ」「値上がり予想銘柄」「実践投資法」「テクニカル分析による秘法」などの魅惑的な言葉は、すべて詐欺だと言っていい。
彼らはこうした方法によって自ら投資した結果、むしろこれを教える側に回ったほうが儲けになると知った人たちだ。
または、証券会社がスポンサーについた番組で、取引量を増やすために雇われた人たちだ。証券会社は、取引量さえ増えれば利益になるからだ。
預金通帳を公開すると言って偶然の成功を自慢したり、ネズミ講の頂点にいる者が高級車や通帳を見せびらかすのと変わらない。
本来、慎重な投資家であれば、自分の投資方法を自慢したり、通帳を人に見せたり、他人に投資を勧めたりしないものだ。
こうした行動は、周囲に思わぬ被害者を生み出すこともあるし、アドバイスを聞いて成功しても長続きせず、失敗すれば恨みを買うので、家族や知人に対しても慎重に接するしかない。
聞く前に尋ねるだけの資格を備えるべきだし、その資格を備えるために勉強していると、なぜ尋ねてはならないのかおのずとわかるようになる。
そうすれば、「不動産投資と株投資のどちらがいいのか」という質問がどれほど恥ずかしいものかもわかるだろう。
恥ずかしい質問であることがわかった瞬間、あなたは投資をする基本的な資格を備えたことになる。
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キム・スンホ (スノーフォックスグループ会長)
韓国人として初めて、アメリカでグローバル外食企業を成功させた実業家。創業したスノーフォックス社は、世界11カ国に3900の店舗と1万人の従業員を抱えるグローバル企業。年間売り上げ1兆ウォンの目標を達成、米ナスダック上場を控えている。出版社、生花流通業、金融業、不動産業も営みながら、農場経営者の顔も持つ。韓国中央大学校ではグローバル経営者養成コースの教授も兼務。韓国と世界を行き来しながら、最近5年間で3000人あまりの事業家を養成。「社長を教える社長」として知られる。本書は、インターネット上で動画が1100万回以上再生された「伝説のお金の授業」の書籍化。2023年まで4年連続でベストセラーとなり、100万部に到達した国民的な「お金の教科書」。
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