優しい人と冷たい人は見分けがつかない

黒坂岳央です。

Xで「優しい人ほど怒ると怖い」という趣旨の投稿がバズっている。

投稿に対する反応が、とてもよく理解できるものばかりなのである。「本当に怖いのは、感情を見せずに静かに切り捨てるタイプ」「相手に一切期待しないから、汚名の挽回の機会すらない」といった内容がならんだ。

自分はこれまでビジネスでいろんな人とコミュニケーションを取ってきたが、このテーマについて個人的な感覚を一言でいうと「優しいとされている人ほど、冷たい人でもあるのでは?」である。ときに両者はまったく見分けがつかないことすらあるのだ。

NORIMA/iStock

怒るのは相手への期待があるから

「感情をあらわに怒鳴る」こういうタイプは昨今、ななかそのような振る舞いが許されることがなくなってきた。それでも一部の職場では存在するだろう。

自分も会社員の頃はこうしたタイプから叱責を浴びることが少なくなかった。でも彼らはフォローアップも忘れることはなかった。激しく怒られた日はそのまま退社後に飲みに連れて行ってもらい、「あの時は思わず言い過ぎたが、君はもっと頑張れるんだよ。簡単に諦めるなよ!」といった励ましももらい、あまり尾を引くことはなかった。確かに怒られた時は心臓がキュッと縮まる感覚になるが、人の温かみのようなものを感じた。

怒る人は相手への期待値があるからである。期待値がゼロの相手に怒るということはないのだ。

優しい人は冷たい人?

「優しい人」という言葉は、主観的な文脈で用いられる事が多い。ある人にとって優しいと感じる人も、また別の人にとっては冷たいと感じることがあるのだ。

ここから完全に独断と持論の展開となるのだが、怒るタイプより周囲から優しい、紳士的といった評価を受ける人こそ一番怖いと思っている。特に他者に依存せず独立しており、論理的かつ冷静なタイプだ。全員ではない。本当にただただ優しい人もいるが、一部には一見優しげだが意外と厳しい人もいると思っている。

こうしたタイプは自分の中で「関わるメリット/デメリット」の明確なラインを持っていて、デメリットが上回った瞬間にスパッと損切りする。独立心が非常に強いため、相手に頼らなくても一切困ることはなく、取引先などの場合はたちどころに労働力の代替手段を見つけ出してしまう。また、「自分は変えられるが、他人は変えられない」の本質を徹底的に理解しているので、汚名挽回のチャンスも絶対に与えない。

冷たい、という評価は別の言い方をすると「人間臭い温情さがない」といえる。他人は感情と個性を持った一人の人間、と見ているのではなく労働力を持った代替可能なコモディティという認識である。彼らは正論だが、温かい血の通った交流が難しいタイプと言えるだろう。

筆者が過去にいきなり冷たく豹変するような変化を見せた相手は、例外なくそれまで「優しい人」「紳士的な人」と評価が高かった人物ばかりだ。彼らとの距離感を間違えると損切りされるので、コミュニケーションを取る時はとりわけ懐に入りすぎたり、依存心を見せないほうが良いだろう。

 

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。