黒坂岳央です。
「大人になると友達ができなくなる」と言われてきた。自分は若い頃、この言葉を信じなかった。会社で働いている時は年上、年下の友達がたくさんいたし、新しく入ってきた人とはすぐに仲良くなって一緒に遊びにいったりもした。自分なら、その気になればすぐ仲良しになれるはずだと思っていた。
だが30代半ばから急に新規の友達を作ることが難しくなったのを感じた。今や40代ともなると非常に難しいだけでなく、既存の旧友への連絡も返事が返ってこなくなり、ひたすら減っていく一方になってしまう。
なぜ40代以降は新しい友だちを作ることが難しいのか?
譲れない価値観がある
40代ともなると、人それぞれ譲れない強固な価値観を持っているのが普通だ。好きなもの、合わないものがハッキリしている。ジャンル自体は同じ属性でも、細かい点で合わないということが少なくない。
たとえば資産運用についての話を振られることがあるが、金融投資、不動産投資にわかれ、さらに金融投資でも株や債券その他のアセットクラスに細かく好みがわかれていく。これは個々人のリスク許容度、資産規模、時間軸によって異なるので当たり前なのだが、自分とはまったく異なる銘柄となると、その時点で分断されてしまうということが起こる。
資産運用の話に限らず、使用しているITデバイスや食の好み、住んでいる場所などあまりに価値観が多様化して固定化してしまう。つまるところ、お互いが違う世界の住人となるために、盛り上がる会話のマッチング確率が極端に低くなってしまうのだ。
人間は共感や情報交換を楽しむ生き物なので、それぞれ異なる価値観にわかれるとそれができなくなってしまう。結果として新規の友達を作る接点を失うことにつながるのだろう。
距離感の違い
そして人間関係を築く上で、相手との距離感は非常に難しい。
筆者のように「お互いに楽しいと感じる、わかりあえる部分だけで付き合う。合わない部分は出さない」とドライな人もいれば、「嫌なことも含めて何でも言い合える間柄を」とウェットな付き合いを好む人もいる。両者は決して交わることはない。どちらがいい、悪いと断じることはできず、相手との距離感が違うとそこで関係性が終わってしまう難しさがある。
実際、知り合ったばかりでいきなりヘビーなトラウマ話を涙ながらに吐露されてしまう場合などがあり、そうした時に自分は狼狽えてしまう。おそらく先方は相手とウェットな関係を望んでおり、誰かにしっかりと自分の話を聞いてもらいたかったのだろう。
そのような意図は良く理解できるつもりだし、自分としても、ある程度信頼関係ができ、お互いのことを理解した上での話なら冷静に聞くことができる。だが「はじめまして」で程なくしていきなり近距離になると、不器用な筆者のようなものはどう振る舞っていいかがわからず、フリーズしてしまうのである。
40代以降となると、距離感の難しさを相互認識しており、かつ慎重な距離感を図る過程で仲良くなる前の段階でなんとなく終わってしまう事が多いだろう。
だが若い人は違う。良くも悪くも、距離感をあまり考えないから友達がすぐできる。自分が子供の園や学校へいくと、子どもたちはフランクな話題でよく話しかけてくる。「その服変なのー!」「食べ物は何が好き?」と距離感を意識せずゼロ距離で接してくる。それが嬉しくて自分も同じように「給食は何が一番好き?」「一番好きな教科はなに?」といった具合に対応するようにしている。子供同士はとても気楽で、お互いに盛り上がる話題が見つかればすぐ仲良くなるのだろうなとわかる。
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大人になると自然に新規の友達は減って、「利害関係者と家族100%」となってしまう人は多い。人間は社会的な動物であり、誰とも関わらずに生きていくことは難しいが、中年以降は人間関係が減っていく一方になる難しさがある。
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