参院選は「改憲勢力」で2/3になったが、先週のこども版でも書いたように、安倍首相の念願である第9条を改正できる状況にはない。また国民投票法では改正案ごとに投票を行なうことになっているので、現在の自民党案が過半数を得ることは考えられない。
現実的なのは、必要最小限の問題について逐条的に改正することだろう。この点で優先順位がもっとも高いのは、第9条ではない。自衛隊も日米安保条約も存在しており、それをあらためて合憲と認知することは緊急の課題ではない。もちろん現在の変則的な状態は好ましくないが、国民の圧倒的多数が改正に反対している状況で国民投票にかけると、否決されて現状が固定されてしまう。
憲法の最大の欠陥は、国会制度である。特に衆議院と参議院がほぼ同格で、約1.5年に1度も国政選挙が行なわれる制度が、与野党ともにポピュリズムに傾斜する原因だ。参議院を廃止することが望ましいが、これは参議院が賛成するとは思われないので、衆議院の優越を明記し、参議院との役割分担を明確にする必要がある。具体的には第59条2項の
衆議院で可決し、参議院でこれと異なつた議決をした法律案は、衆議院で出席議員の三分の二以上の多数で再び可決したときは、法律となる。
という条項を改正し、条約や予算と同じように「参議院で衆議院と異なつた議決をした場合は、衆議院の議決を国会の議決とする」のである。これによって衆議院を通った段階で法案は成立するので国会運営は効率化され、「ねじれ国会」はなくなる。参議院は衆議院のつくった法律をチェックする機関となるので、衆議院の各党派が推薦する名簿から選挙する有識者会議のようなものにしてもよい。
ところが自民党案には、参議院についての改正案がまったくない。これは参議院自民党が反対したためだが、これでは改正する意味がない。逆に59条だけに限った改正案であれば、野党が政権をとったときも国会運営が楽になる。超党派で参議院を説得すれば、国民投票で可決される可能性もあると思うが、どうだろうか。