憲法は改正できるの?

このごろ世論調査では、参議院選挙で自民党が単独過半数をとり、公明党など「改憲勢力」が2/3を超えるという調査結果が出ています。しかし憲法改正って、本当にできるんでしょうか?

憲法第96条では「この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行われる投票において、その過半数の賛成を必要とする」と書いてあります。

つまり衆参両院の2/3が賛成するだけでなく、国民投票で過半数が賛成しないと改正できないのです。このうち衆議院では与党が2/3を超えているので、参議院で与党とおおさか維新などの憲法改正に賛成する党を入れると、両院の2/3を超える可能性はありますが、問題はどんな改正案を出すのかということです。

自民党の改正案は全面的に改正するもので、特に自衛隊を「国防軍」として認める点が最大のポイントですが、公明党はこれに賛成していません。特に第9条については「改正反対」の立場を何度も明らかにしています。

第9条以外にも緊急事態条項とか環境権とかマイナーな話はありますが、あまり意味はないでしょう。意味があるのは、強すぎる参議院が国会運営をややこしくしている点ですが、自民党案は(参議院自民党が反対して)この問題には何もふれていません。つまり自民党の改正案に他の党が乗ってくる可能性はないといってもいいでしょう。

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憲法改正についての世論調査(NHK)

おまけに国民投票で、憲法改正に賛成する人はいつも少数派で、図のように安倍内閣になって大きく減っています。これは安保法案をめぐる騒ぎの影響でしょう。特に第9条については「改正する必要がある」という人は3割以下で、国民投票をやったら否決は確実です。

つまり今回の選挙で与党が両院の2/3をとっても、憲法第9条を改正する発議はできず、できたとしても国民投票で否決されるのです。いったん国民投票で否決されると、二度と発議できないので、現状で安倍首相が改正を発議することは考えられません。

そんなわけで今回の参院選は、民進党がひとり負けする以外はほとんど変化のない選挙になるでしょう。これで彼らがこりて共産党と手を切り、自民党に対抗できる新しい野党として出発するなら、不幸中の幸いです。

だめな自民党がここまで強いのも、もっとだめな野党のおかげです。自民党はこれ以上強くならないので、野党にしっかりしてもらわないと、選挙は税金のむだづかいです。アゴラの夏の合宿では、日本の民主主義をどう立て直すかを考えます。