「予約困難店」が必ずしも美味しいとは限らない

食べログやインスタグラムが普及したことで、世の中には「予約困難店」というのが増えています。中には次の予約が2年先といった超人気店も出てきています。

確かに、予約困難店の中には唯一無二の唸る美味さのお店もあり、私も必死に予約を取ったりします。その一方で、やっと予約が取れて出かけてみると意外にがっかりするお店も少なくないのです。

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その理由の1つは、美味しいから人気な訳ではないからです。

最近はいわゆる「インスタ映え」のお店に人気が集まるようになっています。豪快な盛り付けや派手なパフォーマンスで盛り上がるお店は楽しいかもしれませんが、美味しいとは限りません。味が伴わないと1度出かけるともう気が済んで満足してしまい、リピートしようとは思わないのです。

また、人気店になると「人気店だから美味しい」と思い込む人も増えてきます。テレビのグルメ番組やバラエティで有名人が紹介したり、フーディーと呼ばれる有名な美食家がグルメサイトで絶賛すると、それに妄信的に追随する人も出てきます。ワイン評論家に翻弄されるワインの世界と似ています。

そして、そもそものキャパシティの問題から予約困難になることもあります。

特に寿司店はカウンターだけ営業する場合、8席程度が限界で1日2回転しても16名しか予約を取れません。人気店になると予約が取れなくなることを恐れて、常連が予約を先々まで入れてしまうと、新規の顧客を入れることがほとんどできなくなってしまいます。

既存客のリピートだけで営業する、実質的な会員制のような状態になっているところもあります。

更に予約困難店の中には、圧倒的なコスパで人気となっているお店もあります。

低価格で営業する料理人としての努力は素晴らしいと思いますが、材料や手間暇にコスト面での限界があります。妥協のない味やサービスを追求することはできません。高くても良いから美味しいものを食べたいという人にとってはニーズに合っているとは限らないのです。

予約困難店は運よく予約が取れたとしても、ピンポイントに決められた日時に行かなければなりません。当日体調が悪かったり、別のものが食べたかったりしても変更はできないのです。そこまでの制約を受けてもわざわざ行ってみたいと思えるお店は、実はそれほど多くはありません。

むしろ、いつでも簡単に予約が取れるお店の中に素晴らしいお店がたくさんあったりします。

食の好みは人それぞれです。人の意見は参考にはしても鵜呑みにしない。そして、自分が好きなお店に気が向いた時に、気の置けないメンバーとふらりと行けたりするのが実は一番満足できたりします。

料理はロジカルなものですが、外食は気分で決まる極めてエモーショナルなものなのです。


編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2024年7月14日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

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資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。