世界最大の石油ガス開発サービス会社である米ハリバートン社が2016年第2四半期(2Q16)の決算発表を行った。各紙は、おおむね「米国石油産業は反転する」としてこのニュースを報じている。
(なお、サービス会社とは、石油開発事業全般に必要な資機材、人員、ノウハウなどを提供する会社を指す。)
筆者が読んだのはCNN Moneyの “Halliburton signals US oil drilling revival” (July 20, 2016 3:20pm ET)と、FTの “Halliburton predicts US oil turnround” (July 20, 2016 2:21pm) の記事で、両紙の要点は、当然のことながら同一だ。ハリバートン社の決算発表を、同社のCEOやPresidentのコメントを付して報じている。
この記事で筆者が注目したのは、同社が掘削事業の有力企業であるベーカー・ヒューズ社を280億ドル(約3兆円)で買収しようとしたが、米国および欧州の独禁法違反の可能性があるとして実行できず、契約解除費用(Termination Fee)として35億ドル(約3,700億円)を支払って損失計上し、2Q16 の決算で32億ドルの損失を計上した、という点だ。
石油価格は大幅に下落しているが、2Q16の決算は契約解除費用を除けば黒字だった、ということもさることながら、契約が実行できなかった費用として3,700億円も支払った、というのだ。
買収金額も契約解除費用も、サイズが桁違いですね。
両紙記事の要点は次のとおりとなっている。
・2Q16の収入(Revenue)は、38%減の21億ドルで、純損失は35億ドルの契約解除費用を含め32億ドルだった。なお前年同期は5,400万ドルの黒字。
・最重要な北米市場では、収入は43%減の15億ドルで、1億2,400万ドルの操業ロス(Operational Loss)を計上した。
・2月に発表した5,000人に加え、新たに5,000人の解雇を予定している。2014年の価格下落開始以降、26,000人を解雇している。
・市況が回復し、同社のサービスへの需要が増えた場合、対応できないのではないか、との懸念に対して、社長(President)のJeff Millerは、経験豊富な重要スタッフは確保しており、また必要なスタッフを短時間に集める経験にも長けており心配していない、と否定した。
・最高経営責任者(CEO)のDave Lesarは、北米における石油開発業界は底を打った、として次のように語った。
「生産業者は、今年初めには見られなかったことだが、ジャンプしながら歩いている」
つまり、生き残り策ではなく、掘削活動、資産購入あるいは他の方法で成長路線を取る計画をしている。
ある顧客は自分に言った、「Dave、トンネルの出口に明かりが見える。あれは、こちらに向かってくる列車の明かりではない」
石油会社幹部にとっては、50ドルが情緒的な節目(emotional milestone)になっている。
そういえば、ロシアは国家予算を「油価50ドル」ベースで作成していたはずだ。
サウジは国家予算の前提油価を公表していないが、2015年12月28日の2016年国家予算発表直後、ロイター電はBloombergが現地のJadwa investment情報として ”Saudi predict $29 oil price in 2016-report” (Dec 29, 2015)と報じていた。またJOGMEC調査部の濱田、増野伊氏は「35ドルが有力」(2016年1月21日、「石油に関する中東情勢」)とし、JBICドバイ事務所の桑原氏は「35~40ドル」(2016年1月JOI、「原油市場における『新常態』」)としていた。
主要産油国にとって、50ドルはとりあえず「御の字」なのだろうか?
編集部より:この記事は「岩瀬昇のエネルギーブログ」2016年7月21日のブログより転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はこちらをご覧ください。