個人の成長戦略:自分の個性を知らないまま終わってしまう前に

国家や企業には成長戦略という言葉が常に付きまといます。そして国民なり企業の従業員はその戦略に乗り、より高い世界へのいざないというイメージがあるのでしょうか?まるで遊園地の乗り物に乗ってどこかに連れて行ってくれる、そんな感すらないないわけではありません。

私は国家や企業に成長戦略があるのであればすべての個人にもその戦略はあってしかるべきだと思うのです。ただそんな考え方はあまりポピュラーではなかったと思います。

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書店で自己啓発本のコーナーに行くと小難しいことを書いたまじめな書籍は書架に収まっており、平積みの書籍は軽いタッチで高齢者向けの本かと見間違うほどフォントが大きく、字間はスカスカ、おまけに黄色いマーカーで強調の印までついているいわゆる「読み流し系」の自己啓発本を手に取る人が多いようです。これも時代のニーズを反映しているのでしょう。時間の使い方やタイパ、お金の管理や投資といったものが並ぶのですが、それよりもっと大きな視点で人生をどう生きるのか、まさに「君たちはどう生きるのか」系の大きな課題に焦点を当てたものはなかなか平積みにはならないようです。

現代において「君たちはどう生きる」を考えた時、まず、人生を何段階かに仕切ってみるとわかりやすいと思います。本田健氏が提唱するような年齢区切りもよいのですが、自己を取り巻く環境の変化を一つの区切りにするのがわかりやすいと思います。その点では学生時代、就業時代前半、結婚や家族、就業時代後半、リタイア後で健康が維持できている時代、健康問題で外部活動がしにくくなり、最期を遂げるまでの時間というざっくりした括りがあると思います。近年は結婚されない方が増えているので就業時代において就業以外の刺激や環境変化が少なく、いつの間にか定年する年齢になっていたという方もいらっしゃるでしょう。

同窓会で独身のまま定年を迎えた方と話しているとあっという間の40年だったといいます。私の親戚には独身が多く、彼らも20歳代前半から始まった社会人生を波風なく終えつつあるところです。40年間のお勤めは本当に立派なことで、奥様が「長いこと、ご苦労様でした」というドラマなどで見かけるシーンはほろっとするものがあります。ただ、欲を言うなら人生、会社で40年奉公し、家族を養って子供を成長させるという献身の話ばかりでなく、もっと自分の持つ能力を花咲かせることもできるのではないかと思うのです。

最近はマラソン大会に何度も出場して自己タイムとの闘いをしてランク上位のレースへの出場権をかけた戦いをされる方もいます。山に登る人、何か研究に没頭する人など、いろいろです。

東京にいた際、小雨の中、いつもの荒川河川敷のサイクリングコースで外国人2人が程よいスピードで走っていたのでそれについていくことにしました。自転車に乗る方はご存じだと思いますが、基本的には風の抵抗を避けるため、2番手、3番手に付け、車間を50センチからほぼゼロ程度にまで寄せて走るのが楽なのですが、雨の日のロードバイクは先を行く相手の自転車の水跳ねが酷く、シャツも顔も泥だらけ。汗と雨でくちゃくちゃになりながら10数キロをカッ飛びます。2番手の外国人の息が上がったので、英語で「もっと早く、相方とちぎれたぞ」と叫びハッパをかけ、私が先頭を行くもう1人の外国人を立ちこぎで追い付いたところで「いいライドだった。ありがとー」と言葉を交わし別れました。ただ単に一人黙々と走るよりはるかに楽しさが増します。

私は運動が好きで自分の成長戦略の中でも重要なエレメントとしてとらえています。この歳になっても若い人について行こうというガッツはどこから生まれるのでしょうか?お前は血の気が多いのだろう、と言われるかもしれません。それ以上にどんなことにも興味がある、そしてこれをやりたいと思ったら達成できるまでやる、あるいは思いを遂げる、これが基本にあります。そして本当にやりたいことは先延ばししない、これがキーだと思います。

そんな私の悩みは時間がどれだけあっても足りないことです。物理的に一日を36時間にすることはできません。でも欲張りなので本も読みたい、雑誌も読む、ネットフリックスでジェイソン ステイサムの映画を見る、週2-3回は飲みに行く、ユーロビートにのせてジムで走る…エンドレスです。東京に行くとき、いつも「今度こそジャイアンツの試合を見るぞ」と思うも実現していないし、かつてAKBが流行っていた頃、秋葉原の劇場チケットをゲットするために何度も応募したの全部ハズレで一度もいけていないし。ラブライブのコンサートで光る棒をもって雄叫びなんて夢のまた夢であります。

個人の成長戦略とは生活前提である就労と家族との生活という基本の柱以外にあとどれだけフレーバーを乗せられるかだと思います。それらはわずかな経験でも将来、新たな切り口を開きやすくなります。要は何でもよいのです。アカデミックに限らず、趣味でも楽しいことでも何でもよいので外の世界に積極的に出て「面白いな」と感じる世界を見つけ出すことです。私はうどん好きなので先日も京都から東京に向かう時、きしめんが頭から抜けず、思わず名古屋の新幹線ホームにある「住よし」に飛び込んでしまいました。新幹線2本やり過ごすだけのちょっとしたことで「あぁ美味かった」になるのです。

これだけ様々なオプションが開かれている日本は本当に素晴らしいと思います。なんでもできるのです。政治が好きならお好きな政治家の後援をするというのもありでしょう。私が言いたいのは自己表現をしてほしいと思うのです。世界にいるすべての人は個性を持っています。その個性がどこにあり、自分は何が秀でているのか、多くの方は知らないまま終わってしまっているのです。

それはもったいないと思います。だからこそ、新しい世界に飛び込んでみる、すると全く違う絵図が見えてくると思います。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2024年9月29日の記事より転載させていただきました。

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会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。