共産党の議席減少を見て思うこと

衆議院選挙が終わった。裏金問題で自民党が大きく議席を減らした選挙であった。

一部で話題になっているのが、裏金問題を明らかにした調査報道をしたのが「赤旗」新聞であり、その他の自民党を追い込む活動をしていたのが共産党であったのに、結果として共産党が議席を減らしたのは奇妙だ、という点である。

日本共産党・田村委員長
NHKより

確かにそのような言い方をすれば、その通りである。私は国政選挙について研究しているわけではないので、投票行動の詳細及び変化を把握しているわけではない。

ただ立憲民主党が大幅に躍進し、れいわ新選組が共産党の議席数を追い抜く、という現象を見ると、共産党が衆議院選挙の制度の中で埋没したことは明らかである。よく知られているように、共産党は地方議会議員の数などでは、堅調な存在感を見せている。ただそれも下降気味だといえば、そうなのかもしれない。

国際関係を専門にしている学者の視点からすると、気になることがある。平和安全法制の取り扱いである。集団的自衛権を違憲と主張する野党の反対に遭いながら、平和安全法制が成立したのは2015年だ。それからほぼ10年たつ。この法律の存在を前提にした現実が進展している。自衛隊の編成などにも影響しかねず、今から廃案にしたら、日米同盟の運営体制に大きく影響するため、大混乱は必至である。こうした事情もあり、国民の理解度も進んでいる。

「自衛隊・防衛問題に関する世論調査」の概要

しかし共産党は、廃案を主張している。今この立場を取っているのは、共産党だけだろう。

当時、共産党と歩調を合わせて違憲を唱えていた民主党の流れをくむ立憲民主党は、平和安全法制の違憲部分のみを見直す、などと説明している。玉虫色の説明で、これはこれで政権担当するような場合に持ちこたえられるのかは不明だ。

ただこの立場をとる同党の意図は明瞭である。憲法論上の立場を変えたという経緯をとることなく、なるべく現状変更を避けたい、ということだろう。

同じように左派として分類されることが多いれいわ新選組は、日米地位協定を抜本改定することを公約にしていたが、特に平和安全法制についてはふれていない。基地周辺の犯罪問題などがあり、地位協定改定の方が具体的な意味が想定しやすい公約である。新興の政党であるため、2015年当時のしがらみを持っていない、という点も自明である。

ガザ危機を憂慮した対応などにおいて、れいわ新選組の議員と並んで、共産党の議員の方々の中には、熱意がある方が少なくない。共産党の方々が、現在進行形の国際問題にも関心をお持ちであることがうかがえる場面に何度も出くわしたことがある。しかし党として国際問題に取り組んでいる、というイメージは、あまり持たれていない。むしろ憲法学通説の絶対性を前提にした憲法論に拘泥しているという印象が強い。

私自身は、もともと日本国憲法は集団的自衛権を禁止していない、という立場である。それを主張するために、平和安全法制成立の後の数年で、著作を何冊か出した。私の学説に納得さえしてくれれば、集団的自衛権違憲論と引き換えに、憲法改正の必要はなくなる、というのが私の立場である。国際問題に関心を持ってくださる政党の存在は貴重であるだけに、集団的自衛権違憲論の主張は、私個人は、非常に残念である。

年齢別の投票行動を示す資料を見ると、共産党は高齢者層の方に強く、れいわ新選組は若年者層の方に強い。衆議院選挙をへて、非自公政権の可能性も出てきただけに、平和安全法制の取り扱いについて各政党に柔軟な思考がありえたら、それは日本にとって望ましいと私は感じている。

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