防衛費大幅増額に安定財源などない

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防衛費を現在の5年間で43兆円も、更にGDPの2%まで引き上げるための安定財源なんて存在しません。それ以前に年間5千億円ダダ漏れ「ふるさと脱税」をやめるべきだとおもいますが、自公政権にも野党にもその気はないようです。

防衛費、安定財源に懸念 所得増税時期の決定先送り 法人・たばこは26年4月 自公合意

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO85471240U4A211C2EA3000/

自民、公明両党は13日、防衛力強化のための増税のうち、所得税について増税開始時期の決定を先送りした。政府はことし3税の増税を決めれば、2027年度時点で当初想定に近い1.1兆円の税収が確保できると計算していた。法人、たばこ両税は26年4月からの増税開始の方針が決まったものの、安定した財源確保には課題が残った。

防衛費の増額を決めたのは22年末だった。23~27年度の総額を43兆円程度と定め、必要な追加財源を14.6兆円と見込んだ。内訳は(1)税外収入で4.6兆~5兆円強(2)決算剰余金で3.5兆円程度(3)歳出改革で3兆円強(4)残りを増税――で賄う枠組みとした。

法人税とたばこ税の増税を先駆けて決定したことで、27年度の1.1兆円確保に望みはつないだ。

繰り返しますが、「ふるさと脱税」やめるだけで、増税なくその半分の税収が確保できるんですよ。それをやらずに増税するといっても国民の支持は得られないでしょう。

そもそも毎年3兆円社会保障費用が増えて、既に財政赤字はGDPの2.6倍です。地方を入れればもっと膨らむでしょう。しかも少子高齢化が進んで国内市場と納税者の数も減少していきます。

火の出る玩具を買うよりも、社会保障の抑制案と借金の返済を考えた方がよろしい。ですが医療費にしても未だに有害不要な湿布のバラマキすらやめることができない。危機感がないのでしょう。それでいて補正予算では延々とバラマキをやっています。

以前指摘しましたが、防衛費GDP2%には何の軍事的な整合性もありません。アベノミクスが失敗したので、安倍晋三がそれを隠すために、周辺脅威を煽っただけです。無批判にそれに乗っかった安全保障界隈の「専門家」も同罪ですよ。

安倍晋三はどうせ国民は馬鹿なので、軍拡といっても借金ですれば痛みを感じないから大丈夫、と思っていたのでしょう。だから国債でいくらでも軍拡が可能だとうそぶいた。それは将来の国民への付け回しだし、財政が悪化すれば更に円安が進んで防衛費どころか、エネルギーや食品の輸入も難しくなり、国民は困窮するでしょう。

かといって党内最大派閥の安倍派には面と向かって逆らえないので、岸田政権ではGDP比2%は公約に掲げたものの、軍拡には財政の裏付けが必要だということになりました。それでも屁理屈を付けて建設国債で5千億円以上もつけています。

そして石破政権ではGDP比2%の公約を下ろしました。

やるべきことはまず社会保障費の削減であり、無理な軍拡はやめるべきです。個人的には防衛費はせいぜい7兆円程度でしょう。

それから人的資源の面からもいまの自衛隊の規模維持は無理でしょう。人員を減らし少数精鋭化すべきです。例えば陸自を5万人程度削減すれば相当の人件費が削減できます。現状まともな装備も支給できない状態ですから、むしろ兵力を削減し、装備の高度化を図るべきです。人件費を減らせばその分防衛費の抑制も可能です。

【本日の市ケ谷の噂】
海自がしょうがなく導入するSPY7を採用したイージスシステム搭載艦だが、海幕ではコンポーネント供給が既に危険視されており、導入同時にお荷物化が確定、との噂。

財政制度分科会(令和6年10月28日開催)資料
防衛
防衛(参考資料)

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防衛
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編集部より:この記事は、軍事ジャーナリスト、清谷信一氏のブログ 2024年12月17日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、清谷信一公式ブログ「清谷防衛経済研究所」をご覧ください。