トランプが日本に突きつけた"踏み絵"の正体

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2025年7月7日、トランプ大統領は日本からの輸入品に対して25%の関税を発表し、8月1日からの実施を通告しました。この決定は、1970年代のニクソン・ショック以来の深刻な通商危機となる可能性があります。

米国通商代表部(USTR)によれば、今回の関税は「相互主義的貿易政策」の一環として実施されます。日米間には大きな貿易不均衡が存在し、米国側はこの是正を強く求めています。

トランプ大統領は石破首相宛の書簡で「この25%という数字は、貴国との貿易赤字を解消するために必要な水準には及ばない」と述べました。さらなる関税引き上げの可能性も示唆しています。

ここで注目すべきは、中国の動向です。習近平指導部は昨年10月の石破政権誕生以降、日中関係が好転したと評価し、政権存続を望んでいます。米中対立が深まる中、この状況は日本の対中姿勢が米国との関係にも影響を与えていることを示しています。

トランプ政権は同盟国に対して、対中政策での明確な立場表明を求めています。しかし、親中派とされる現政権が米国との厳しい交渉を有利に進められるとは考えにくい状況です。

日本経済への影響は甚大です。日本の対米自動車輸出は経済の重要な柱であり、25%関税が実施されれば、自動車メーカーの収益に深刻な打撃を与えることは避けられません。影響は自動車メーカー本体だけに留まりません。部品供給網全体に波及し、日本経済全体に大きな影響を与える可能性が指摘されています。

特に懸念されるのは、自動車産業の裾野の広さです。部品メーカーから物流、素材産業まで、幅広い関連産業が連鎖的な影響を受けることになります。中小企業を中心に、経営への打撃は計り知れません。

現在の政治状況を考えると、参院選後の新たな政治的枠組みに期待が集まっています。米中対立が激化する中、日本には明確な立場と強いリーダーシップが求められています。

7月の参院選を経て、日米同盟を重視し、国益を最優先に考えるリーダーが誕生することが、この危機を乗り越える鍵となるでしょう。現政権の限界が露呈する中、新たな政治的展開が待たれます。しかし、この危機は同時に、過度な対米依存からの脱却と、より均衡の取れた通商関係の構築に向けた転機ともなり得ます。

重要なのは、米中対立という国際環境の中で、日本が明確な立場を示すことです。国益に基づいた冷静な交渉を継続しながら、産業構造の高度化と通商関係の多角化を進める必要があります。外的ショックに対する経済の強靭性を高めることが急務です。

8月1日の関税発動まで残された時間は限られています。参院選後の新たな政治体制の下で、日米両国が建設的な対話を通じて、相互利益に基づく解決策を見出すことを期待したいと思います。日本の未来は、この数週間の対応にかかっています。

尾藤 克之(コラムニスト・著述家)

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