無人配送ロボットは日本で普及するのか?

最近、晴海・勝どきエリアを歩いていると、歩道に無人のロボットが走っているのを見かけます。

ロボットというよりはカートのような配送車両で楽天のマークが付いています。近づくと「ここにロボットがいます」と音声が流れる何ともユーモラスで愛くるしい無人車両です。

調べてみると、楽天グループがこのエリアで無人配送の実証実験を行っているようです。

私はまだ使ったことがありませんが、ネットで注文をすると近くにあるスターバックスコーヒー、吉野家、ファミリーマートなどの商品を30分程度でデリバリーしてくれるようです。

車両は建物の中には入れませんから、注文した人は指定された近くのデリバリーポイントまで出向いて、暗証番号でケースを開けて商品を受け取る仕組みです。

配送料はわずか100円なので、雨の日のような天候の悪い日には重宝しそうです。

しかし、今後本格的に普及するためにはかなりのハードルがありそうです。

まず配送サービスに参加する企業が増えなければ利用しようと思う人は増えません。取り扱い店舗数はこれから増えるのかもしれませんが、そうなる前に採算が合わず、撤退してしまう可能性も低くはありません。

また、無人配送とはなっていますが、おそらく規制があって遠隔管理で安全対策を取らなければならなくなっているはずです。

1人の監視員が複数の車両を同時に管理するようにならなければ、人間が配送した方が低コストになります。スケールメリットが必要になるのです。

今は屋外の配送ポイントまでのサービスですが、技術的には建物内のエレベーターなどと連携させて、無人配送車を玄関の前まで走行させる事はそれほど難しいことでは無いようです。

しかし、これも建物の管理会社との交渉やエレベーター会社との連携の調整など気が遠くなるほどのプロセスがありそうで、実現にはかなり時間がかかりそうです。

人口減少による人手不足の中で、無人運転や無人配送といったテクノロジーによる問題解決は有力な選択肢です。

にもかかわらず、日本ではこの手の新しい技術の導入がなかなか進みません。変化を好まない国民性なのかもしれませんが、スピード感のない対応をしていると、この分野もアメリカと中国に席巻されてしまうことでしょう。

技術力があってもそれを実用化する力がない。そして、失敗を恐れるあまり過剰なコンプライアンスでがんじがらめにしてしまう。

誰もがわかっているはずなのに、力を合わせるとナゼか間違った方向に動いていく何とも不思議な国民です。


編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2025年8月日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

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資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。