日本の知人からメールを頂いた。曰く「こちらは、体温と同じくらいの気温の中で毎日を過ごしています。熱中症警報はずっと前から出っぱなし。また日本海側は線状降水帯とかで洪水騒ぎ。台風がちらほらと。いやな季節ですねえ!」という挨拶を読んで驚いた。特に、「体温と同じぐらいの気温の中で」という箇所を読んだとき、うまく表現するものだと感心する一方、人間の平均体温は36度から37度だから、外の気温が同じぐらいとすれば、やはり大変だなあと同情せざるを得なくなった(メールの日付が10日前だから、現在は少しは気温が下がっているかもしれないが・・)。

「地球」NASA公式サイトから
欧州は現在、フランス、スペイン、ポーランド、そしてギリシャなど南欧で山火事が発生し、森林、家屋は燃え、人間だけではなく、動物たちも避難している。山火事の一部は放火の疑いもあるという。ここ数年、欧州各地で山火事が多発している。空一帯が火で真っ赤になり、消防士たちが必死に放水している姿がニュース番組で報じられる。その風景は終末の時を感じさせるほどだ。
気象学者は「異常気象の原因は地球温暖化など環境汚染による可能性が高い」という。スイスのジュネーブの国連でプラスチック汚染を防ぐ国際条約の策定に向けた政府間交渉が15日、参加国の意見の対立から合意を見送る形で閉幕したばかりだ。ニュース番組で海洋に浮かぶ無数のプラスチックを見ると、人間が海洋を汚染してきた、という自省の念が沸いてくる。
ただ、異常気象の背景には、産業革命から進められてきた人間の経済活動、社会活動が原因の場合だけではなく、地球レベル、宇宙レベルの変動が起きているのではないか。一つは地軸の変動だ。
4年前、実業家として活躍され、世界の経済界に通じられている松本徹三氏が書かれたSF小説、題名「2022年地軸大変動」(早川書房)を読んだことがある。異星人の地軸大変動という計画を詳細に、地球が直面している未曾有の危機に立ち向かう人類の姿が冷静に描写されている。このコラム欄でも書評を書いた(「『2022年地軸大変動』を読んで」2021年11月07日)。
思想的な相違や国益の対立で機能しなかった国連が地軸大変動に直面し、必死に解決を模索し出す。例えば、地軸の大変動で熱帯地域から極寒帯地になるアフリカ大陸の人々を救うために世界の指導者たちは英知を結集して、地軸の変動が開始する前にアフリカ国民を安全な地域に移住させようと史上最大規模の移住計画が立てられる。アフリカは多くの犠牲を払いながらも、アフリカ連邦共和国として存続していく。世界の指導者、そして宗教界ですら、“地球の地軸大変動”という事態の前に、結束して、最善の解決策を見つけるめに腐心していく、というストーリーだ。
ビックバンの大爆発で宇宙が形成されたのは今から約138億年前という。私たちが住む地球が誕生したのは約46億年前だ。その地球に人類が誕生したのは約500万年前だ。
地球物理学者によると、地球が恩恵を受けてきた太陽は50億年後、消滅するという。数年先、数十年先ではないため、その意味がピンとこないが、太陽が消滅すれば、地球に送ってきた熱エネルギー、光は数分後、消滅し、地球は暗黒の世界に取り残される。ただし、地球の寿命はあと30億年という説があるから、太陽の前に地球が消滅するかもしれない。
さて、地軸の変動についてだ。松本氏の本では異星人による地軸大変動が生じるが、地球学者によると、地軸の傾きは、約22℃~24.5℃の範囲で周期的に変化し、この変化は、約4万1千年周期で起こるという。すなわち、過去も現在も地軸は変動しているわけだ。ただ、1995年頃から地軸のブレが加速していることが観測された、という研究報告があった。その結果、世界的に海面が0.24インチ(約6ミリメートル)上昇し、生物の分布、四季の変化、気候不順などを変動が生じるわけだ。地軸変動の原因として、地震による地殻変動から地下水の取りすぎなどさまざまな説がある。
問題は、地軸が大変動し、気候が激変した場合、世界は思想や国益の相違を超えて、結束できるだろうかだ。松本氏の小説のように、世界の大国が結束して、地球レベルの危機の克服に乗り出すことができるだろうか。いずれにしても、「地軸の大変動」についてクールに考えてみることは効果的な猛暑対策となるかもしれない。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2025年8月17日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。






