米軍は陸自が幼稚すぎるので日本本土では地上戦はやらない

論文から見えた米軍の本音「共同作戦に支障をきたす恐れがある」とまで論じられていた<陸上自衛隊の問題>とは 自衛隊に告ぐ-元自衛隊現場トップが明かす自衛隊の不都合な真実

論文から見えた米軍の本音「共同作戦に支障をきたす恐れがある」とまで論じられていた<陸上自衛隊の問題>とは 自衛隊に告ぐ-元自衛隊現場トップが明かす自衛隊の不都合な真実|教養|婦人公論.jp
1945年8月15日の終戦から、2025年で80年を迎えます。その後、国防のために創設されたのが自衛隊ですが、元・海上自衛隊自衛艦隊司令官(海将)である香田洋二さんは、「規律一辺倒の自己批判なき現在の自衛隊に一抹の...

私は2010年から2018年までの間、米海軍大学が発行する『Naval War College Review』という機関誌の掲載論文の審査員を務めていた。

私は日本とアジアに関する論文を読み、「掲載に値する」「掲載に値しない」「補強すれば掲載に値する」というジャッジを下し、その理由も付して編集部に返すという仕事をしていた。

ある論文では米海兵隊の中佐が日本の南西諸島防衛について論じていた。

彼が疑問に感じたのが陸上自衛隊の階級構成だった。陸上自衛隊は、ある程度経験を積んだ陸曹が多い。ところが、困難な状況に直面した際に、陸曹の下で黙々と任務に専念することを期待される陸士となると、圧倒的に人数が少ないというのだ。

これはぼくも2012年に上梓した「国防の死角」でも指摘しています。1、2士は定員の4割しかいない。士長合わせても充足率は7割に過ぎない。

現実の戦闘では、部隊は3割を喪失すれば戦闘力を失って壊滅しますから、戦闘前から壊滅状態です。これは曹クラスの質の低も下げています。分母が小さい中から曹に昇進させれば質が下がるのは当然の話です。

陸上自衛隊上級幹部(将校)が多いことも問題視していた。それはそうであろう。海兵隊の場合は大佐の連隊長が2000人を動かすのに対し、陸上自衛隊は大佐に当たる1等陸佐の連隊長が600人を動かすとなれば、陸上自衛隊が2000人を動かすためには3人以上の上級将校が必要となる。

それだけ指揮する人間が多ければ、無駄な時間とスタッフが増えてしまうことになりかねない。

ぼくや文谷さんがたびたび指摘しておりますが、陸自の普通科連隊は事実上の大隊にすぎません。指揮官は本来3佐かせいぜい2佐でしょう。ところが「わが帝国陸軍自衛隊」では1佐すなわち、大佐が指揮を執っている。これではまともに共同作戦が取れるわけがないでしょう。子供と大人が同じチームでサッカープレーするようなものです。

しかも普通科で大隊長を経験していない「経験不足の大佐殿」です。

陸上自衛隊は命令が出るのが遅いし、その命令自体も、結節ごとに理解を確認しながら進めるので、全体としての敏捷性に欠ける、というのが海兵隊中佐の論文の主旨だった。

米軍の海兵隊や陸軍の旅団以下の規模が自衛隊の規模です。同じ規模の部隊ならば命令系統も複雑になります。

陸上自衛隊は那覇市に司令部を置く第15旅団を南西諸島有事が発生した場合の初動担任部隊と位置付けているが、現在の人員は約2500人だ。これに1個連隊を追加して師団に格上げすることになった。

問題はその規模だ。新たに生まれる「第15師団」は3000人規模になるという。これでは陸上自衛隊の特殊な基準に当てはめても、旅団レベル、しかも小さめの旅団ということになってしまう。米軍から見れば連隊レベルの代物であり、師団はおろか旅団と呼ぶのも憚られる規模だ。

陸自や防衛省は自分たちの組織しかみていない。「自閉隊」です。かつて石破さんがそう呼んだことがありますが、差別的に聞こえるといわれてひっこめましたが、「自閉隊」こそ自衛隊の実態を一言でズバリ言いあらわしています。そういう批判をする人たちは物事の本質に興味がなく、揚げ足をとることに嬉々としているのでしょう。

以前から申し上げておりますが、普通科連隊は普通科大隊に改編すべきです。そして小さいだけでなく、あれこれ種類の多くて不便な師団や旅団をいったん廃止にして、旅団に統一すべきです。その旅団をいくつか集めて師団にすべきです。

こうすれば陸自はせいぜい3〜4個師団で十分ですし、当然地方方面隊など必要ない。東北方面隊など旅団規模の師団が二つで、方面隊すなわち軍団(ARMY)ですから詐欺みたいなものです。こうすれば高級将校のポジションを減らすことができます。余った将校は調達や統合司令部にでも配属すればいい。何なら防衛駐在官を倍増してそれに使ってもいい。

そもそも少子高齢化で16万人の陸自の体制の維持は無理です。10万人以下に減らすべきです。充足率が50パーセントを切る部隊がいくつあっても役に立ちません。

第15師団に格上げされれば陸将が師団長を務めることになる。この場合の陸将は、米軍で言えば中将ということになる。同じ沖縄で海兵隊の第3海兵遠征軍を率いるのは中将である。第15旅団の格上げは、司令官の階級をそろえることが狙いだとも報道されている。

米海兵隊や米陸軍の指揮官が「陸上自衛隊は沖縄に師団を置いている」と聞けば、少なくとも1万人以上の大規模部隊が駐屯していると誤解してもおかしくない。こうした認識のギャップが「戦場の霧」をさらに濃くしてしまうことを私は懸念する。

同じ「師団」や「連隊」と名乗っていても、その規模が全く異なれば、作戦に支障をきたしかねない。

軍隊ごっこに米軍が付き合っているだけのように見えます。米国は我が国がまじめに南西防衛に取り組んでいるとは思わないでしょう。戦える組織になることよりも内輪の利益を重視する、動脈硬化した組織だと思っているはずです。

連隊長を務めるのは、どこの陸軍でも大佐クラスが一般的である。陸上自衛隊の場合は「1等陸佐」ということになるのだが、英語では「Colonel(大佐)」である。「連隊」の規模が違い過ぎれば、作戦現場における日米間の調整を大佐同士で行う際に齟齬が生じかねない、というのが私の懸念だ。

同盟国同士の対話においても階級は極めて重要であり、しかも階級に見合った経験を積んでいなければ話はかみ合わない。2000人を統率する経験を有している指揮官と、600人しか率いていない者の経験値はおのずから異なる。

III MEF司令官と第15師団司令官とでは見える景色が全く違う。第15師団長が緊密にIII MEF司令官と意見交換することは、良い勉強になるであろう。だが、中国と対峙する最前線である沖縄の師団長は、勉強するためにいるのではない。有事ともなれば、米軍と肩と肩を組んで戦わなければならないのだ。この時に、司令官同士の間で経験、識見、力量に大きな違いがあれば、問題が生じるのではないだろうか。

全くお説ごもっともであります。

以前、ある提督がおっしゃっておりましたが、「自衛隊は張り子のトラではなく、引っ掻く猫になれ」と。まさに陸自は張り子のトラそのものです。

海上自衛隊は、私の時代に世界水準に合わせるように改変している。

最終的には、私が防衛部長離任後の2004年に改定された中期防衛力整備計画で、各護衛隊群の下に2個護衛隊を置き、各護衛隊には護衛艦4隻を配する編制に改めることとされ、ようやく実現した。

航空自衛隊も1個飛行隊は約18機が所属しており、米空軍との齟齬はない。また、海空自衛隊で同格の護衛艦艦長と飛行隊長は共に2佐であり、部隊規模は国際標準でも名と体が一致している。

これに対し、陸上自衛隊は国際標準とは関係なく部隊編成を行うガラパゴス化が起きているのは前述した通りだ。

外国軍では少将が指揮する師団であっても、陸上自衛隊では中将が指揮し、しかも師団の規模は旅団以下のレベルにとどまっているといういびつな状況なのだ。

ちなみに、海空自衛隊の護衛艦隊や航空方面隊司令官は海将や空将(中将に相当)、護衛隊群司令や航空団司令は海将補や空将補(少将に相当)が務めている。護衛隊群司令や航空団司令のレベルであれば少将ではなく准将が務める場合もあるが、海空自衛隊の配置は国際標準に沿っている。

米海兵隊や陸軍は、おそらく陸自と共同作戦を行わないでしょう。というより、足手まといの素人なので「戦域に入ってくるな」とすら思っているはずです。

本当に共同作戦をする気があるなら、陸自のメディックが長年にわたり「児戯レベルであること」に苦言を呈してきたでしょう。陸自の衛生部隊が負傷者を手当すれば、米軍なら10人に1人の死亡で済むところが、10人中5人や8人が死ぬことになるのは目に見えています。恐ろしくて共同作戦などできないでしょう。

陸自がアパッチを導入したとき、リンク16を「高いから」という理由で外しました。それでも英国などよりはるかに高コストになりました。アパッチの最大のセールスポイントであるネットワーク機能を、自らダウングレードしたのです。当然、米軍と共同作戦など取れるはずがありません。また陸自はいまだにほとんど音声無線だけで、米空軍や陸軍、海軍、海兵隊の航空機に火力支援を依頼できません。

現代的な戦争をしているのに、腰蓑と槍で武装した、言葉の通じないズールー族のような部隊が横にいて戦えますか。

つまり米軍は、日本本土で地上戦を行うつもりなど全くないということです。

防衛省・自衛隊HPより

■本日の市ヶ谷噂■
殆どのF-2戦闘機がリンク16を搭載しておらず、米軍から戦域に入ることを拒否されているのはよく知られた事実だが、海自が自画自賛していたが、稼働率が3割に過ぎないP-1哨戒機もアジアの演習では米軍以外も殆どP-8を採用しているので、データ相互のやりとりができずにしばしば仲間外れにされている、との噂。

Japan In Depthに寄稿しました。

失策を隠蔽し「大本営発表」繰り返す防衛省:自衛隊の予算を増やすべきか
https://japan-indepth.jp/?p=88343
虚偽報道問題から考える記者クラブの存在意義
https://japan-indepth.jp/?p=88339
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https://japan-indepth.jp/?p=88343
会計検査院P-1報告書を読む その1
https://japan-indepth.jp/?p=88204
会計検査院P-1報告書を読む その2
https://japan-indepth.jp/?p=88215
会計検査院P-1報告書を読む その3
https://japan-indepth.jp/?p=88221
会計検査院P-1報告書を読む その4
https://japan-indepth.jp/?p=88227
P-1哨戒機失敗の本質
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陸自に砲兵装備開発と運用能力はあるのか:19式装輪自走155mm榴弾砲は失敗作。
自衛隊のヒートマネジメントは遅れている
https://japan-indepth.jp/?p=87990

防衛大臣記者会見|令和7年06月13日(金)で質問しました。
https://www.youtube.com/watch?v=BX64YTsuBIU
12日の陸幕長、空幕長会見で質問しました。
6月12日陸幕長会見での質問。
https://www.youtube.com/watch?v=6yUSZHIIYls
空幕長会見2025年6月12日
https://www.youtube.com/watch?v=kNHiSikwqqs

Note に有料記事を掲載しました。
内張り装甲とスポールライナーの区別がつかなかった防衛省とJSF君
https://note.com/kiyotani/n/n5f35d980fc82

東洋経済オンラインに寄稿しました。
墜落事故の「搭乗員らしきもの」発言は謝罪したが…事実誤認は訂正しない防衛省の”二重基準”


防衛破綻 – 清谷 信一


専守防衛 – 清谷 信一

財政制度分科会(令和6年10月28日開催)資料
防衛
防衛(参考資料)

財政制度分科会(令和6年10月28日開催)資料
防衛
防衛(参考資料)


編集部より:この記事は、軍事ジャーナリスト、清谷信一氏のブログ 2025年8月21日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、清谷信一公式ブログ「清谷防衛経済研究所」をご覧ください。