
lielos/iStock
昨日の夜中、ふと手に取った本がある。「母と娘の関係を変える魔法の言葉術」(WAVE出版)。タイトルからして胡散臭い(失礼)。でも読んでみたら、めちゃくちゃ刺さった。というか、痛いところ突かれまくった。
「母と娘の関係を変える魔法の言葉術」(松谷 英子著)WAVE出版
『7つの習慣』なんて知らんがな
「まず理解に徹し、そして理解される」だっけ? 有名なビジネス書の金言らしい。聞いたことはある。でも正直、朝の戦場で理解もクソもない。
パンにバター塗りながら弁当箱洗って、洗濯物畳んで、娘の髪結んで──そんな中で「まず理解に徹し」なんて無理ゲーすぎる。
というか、理解しようとしてるよ、毎日。でも娘は宇宙人だ。昨日まで好きだった服を今日は「絶対着ない」と言い張る。理由?「なんとなく」だと。
なんとなく、って何だよ(笑)。
本によると、著者の夫はすごく冷静らしい。著者が「宿題やった?」「明日の準備は?」って娘に聞いてる横で、新聞読んでる。で、著者がブチ切れそうになると、のんびりこう言うわけ。
「一度決めたルールなら、あとは本人に任せれば? 失敗して学ぶことも大切でしょ」
正論すぎて腹立つ!! これ、うちと全く同じ構図だわ。
でもさ、失敗するのは娘で、先生に怒られるのも娘で、クラスメイトに笑われるのも娘なんだよね。だから心配になっちゃう。これって過保護? でも放置するのも違うし。
結局、著者の家でも夫が「今夜は家族会議な」って言って、著者の愚痴大会になるらしい。娘と息子は「またママが爆発した」って顔してるって。あー、わかる。情けないよね。
ただ、道路に飛び出しそうになった時とかは容赦しない。理解もクソもない。「ダメ!」の一言で終わり。
こういう時に「まず理解に徹し」とか言ってる場合じゃないでしょ。子どもが死んだら元も子もないし。
でも、それ以外のこと──宿題とか片付けとか友達関係とか──は、できるだけ娘の気持ちを聞くようにしてる。つもり。実際はできてないこと多いけど。
要は、諭すってことなんだろうね。説教じゃなくて。
娘に救われた瞬間
本の中で一番グッときたのが、著者の娘さんが言った言葉。
「ママが育てると、みんな性格よくなるよね」
え? なにそれ? きっかけは、著者の家の犬(日本スピッツ)がご近所さんに褒められたから。「おとなしくていい子ですね」って。で、娘さんが「お兄ちゃんも私も、みんなに優しいって言われるし、ママの育て方がいいんだよ」って言ったんだと。
いや待て、犬の性格は絶対に天性だろ(笑)。著者も「犬の躾なんてまともにしてない」って正直に書いてるし。
でもその時、著者はハッとしたらしい。娘さんは自分のことを「人に好かれる性格」って思ってるんだ。それって、すごいことじゃない? 自己肯定感MAX状態。
この話を読んで思った。私たちの何気ない言葉って、娘の心に種を蒔いてるんだよね。
「あなたって優しいのね」→優しさの種
「またダメなことして!」→ダメの種
そして娘は、その種から育った実を一生食べ続ける。考えると怖くない?
昔、母に「あんたは要領が悪い」って言われた記憶、今でも残ってる。たぶん母は覚えてないと思うけど。で、実際に私は今でも要領悪いし、「私って要領悪いから」が口癖になってる。
これか。これなんだ。
大事なのは、言葉の力を知ってること。そして間違えた時は「さっきはごめんね」って言えること。娘も人間、私も人間。お互い様でしょ。
それに、母親だって学習中なんだから。娘が成長するのと同じスピードで、私も母として成長してる。多分。そう思いたい。
ちなみに今朝も娘に「早く起きて」って言っちゃった。進歩なし。でも今日は「昨日よく眠れた?」も付け加えた。これも種の一つになるかもね。知らんけど。
尾藤 克之(コラムニスト・著述家)
■
22冊目の本を出版しました。
「読書を自分の武器にする技術」(WAVE出版)








