黒坂岳央です。
ビジネスでもプライベートでも、最初はとても紳士的で丁寧な対応だったのに、やり取りの回数が増えるにつれて対応が雑になる人は一定数いる。一般的には「男性ほど慣れた相手を雑に扱う」という意見がよくあるが、筆者の肌感覚では女性でもそうなる人は存在すると感じる。
徐々に言葉遣いが崩れてきたり、約束にルーズになったり、明確に優先順位を下げられる。こうした態度は一見「親しくなった証」と本人は思っているかもしれないが、実際にやられる側はあまり気持ちの良いものではなく、信頼を大きく損なう行為である。
本稿は愚痴の発散ではなく、ビジネススキルの提供という意図を持って書かれた。

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信頼残高の目減り
人間関係は「信頼残高」で成り立っている。
最初に誠実な対応を積み重ねることで残高が貯まるが、慣れによって雑な対応をすれば残高は一気に減ってしまう。特にビジネスにおいては「最初は礼儀正しかったのに、少しずつ相手が手を抜くようになった」という印象を持たれると、短期間で信用が失われる。
具体的にいうと、時間の約束を守らなかったり、口調が崩れる。また、レスポンスの優先度が下げられるといったものだ。特に最初の方が気を使われて丁寧な人ほど、その落差が大きいのでたちまちその手抜きがあらわになる。
これは単に印象が悪いというだけで終わらない。「もうこの人と取引をしたくない」という明確な機会ロスになるのだ。実際、筆者は不愉快なだけでなく、ビジネスの遅延などの実害が生じるために、そのような相手との取引をクローズしたこともある。
でも本人は原因に気付けない。同じことはあちこちで起きているだろう。つまり、手を抜くと自分が損をするのだ。
ビジネスライクに対応するべき
慣れから来る対応の雑さが現れないようにするにはどうすればいいか?結論としてはビジネスライクな対応をスキルとして身につけるというのが筆者からの答えだ。ビジネスライクな対応、というと「真面目な性格」のように「性格という固定値」で解釈する人がいるのだが、実際にはスキル、技術である。
たとえば一流ホテルの接客のイメージである。何度来店してもVIP顧客として迎えてくれるはずだ。間違っても「おう、もう10回目の来店だな、いつもありがとよ」みたいな崩れたことはしない。たとえ100回目の来店でも、まるで初回来店顧客のように扱う、もしくはスマートに上客対応をするのがビジネスライクな対応というスキルだ。慣れて雑な対応になってしまう人はこのスキルが欠けているのだ。
筆者は良くも悪くも、仕事ではビジネスライクな対応を徹底している。そのため、初対面でも、3年付き合いのある相手でも、老若男女問わず、すべての相手に同じレベル感で対応している。
誤解から生じる距離感のズレ
双方の距離感の認識がずれの原因は「距離感の勘違い」にあると思っている。
相手を雑に扱いがちな人は「何度もやり取りをして、この人とは仲良くなったからこのくらい許してくれるでしょ」と考えてしまうのだろう。だがこちらは「最初から今までずっとビジネスライクな関係」と考えているので、そこで認識がずれる。
この場合、相手の雑な振る舞いは「仲良くなったがゆえの崩れ」ではなく、「無礼」としてマイナス評価をつけられる。もちろん、本人に悪気はない。だが、現実的に受け手が不愉快になれば確実に信用残高はゼロに近づく。
厳しい言い方をすると雑に扱う人は、ビジネスにおける信用の力を甘く見ており「この人なら多少は許してくれる」と相手に甘えているのだ。
良い慣れと悪い慣れ
お断りしておくと、信頼関係ができたことで生まれる「コミュニケーションの慣れ」は必ずしも悪いわけではない。
良い慣れは、やり取りをスムーズにし、安心感を生む。例えば、筆者はずっとやり取りしているビジネスマン相手とは、ビジネスチャットのやり取りを経て「ではぜひ、この企画を実現させましょう」とトントン拍子で話が進んで実現する、という具合だ。
これが初対面との初めての取引であれば、相手の信用調査からスタートするのでここまでスムーズにはいかない。
一方、悪い慣れは相手への敬意を欠き、約束を反故にするので信頼を損ねる。肝は「心の距離は縮めても、表の態度や行動を変えない」ことにある。
◇
慣れて対応が雑になることは、一見ささいに思えるかもしれない。しかしビジネスにおいては信用を失う致命的な行為である。特にハイパフォーマーほど、相手の使う語彙、振る舞い、約束など小さな行動や姿勢に対する解像度が非常に高いという特徴がある。そのため、小さな反故で大きな信用失墜が起きる。
要は仕事における信用を舐めるなと言うことなのだ。
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