空母は時代遅れか 「いずも」型実質運用、同盟の象徴や離島防衛の力に 日本経済新聞

「空母」は時代遅れだとの見方もある。無人機の性能が上がりコストが下がれば、そもそも有人の戦闘機の必要性が乏しくなる可能性もある。大型艦は建造や維持整備に多額の費用がかかり、ミサイルの標的にもなりやすい。
一方で「安保上のプレゼンスを発揮することにつながる」と利点を挙げる。「特に空母を持っていない友好国に抑止面で頼られることになる」と話す。
同盟国の米国、準同盟国とも呼ばれる英国の空母との連携を強化できる。部隊運用の技術が上がり作戦の幅も広がる。自衛隊と各国軍の信頼を高めることにもつながる。
艦上で戦闘機を使う際の懸念もある。元自衛艦隊司令官の香田洋二氏は「艦上作業に不慣れな空自隊員が狭い場所で燃料を入れたり、ミサイルを搭載したりすることで事故の要素が相当ある」と指摘する。
基本的に20年以上前の常識で凝り固まった記事です。唯一評価できる点は最後のパラグラフです。空母は「政治的」「外交的」な兵器といえます。そのプレゼンスは機能云々以前にその文脈でのアセットとして価値があります。
記事を読むとF-35を常用的に運用するかと読めますが、現状必要な時に搭載する、あるいは中継地点として使用する方向です。ぼくは、それは正しいと思います。地上基地から出撃して攻撃を行い、空母に着艦して燃料や弾薬を補給できれば航続距離を稼いだり、反復攻撃が可能となります。
上陸作戦の指揮艦や、輸送ヘリを多数搭載しての揚陸艦としても使用が可能です。また軍事以外での災害派遣でも使用できます。
さらに重要なのは固定翼無人機の運用が可能であることです。ヘリ型無人機や有人ヘリに比べて固定翼無人機の滞空時間は圧倒的に長い、そして整備も楽です。早期警戒用の無人機を常時艦隊上空に張り付ければ水上部隊を見越しての監視が可能となって圧倒的に有利になります。それはF-35よりも価値があるはずです。
また同様に対潜哨戒用に使用してもよろしいわけです。有人ヘリに比べて何倍も滞空時間があり、クルーの負担も少ない。運用によっては艦載用の有人ヘリを大幅に削減できます。
いうまでもありませんが、ヘリ搭乗員の養成には時間がかかります。更に艦載機ならば尚更厳しい条件にパスしないといけない。人手不足の自衛隊、中でも海上自衛隊ではヘリ搭乗員、特に艦載ヘリの削減は急務のはずです。本来三機のヘリが搭載されているはずのひゅうが級DDHに搭載されているヘリは1機で、これが故障したらDDHとしての機能を失います。実際にそれは海外派遣で発生しました。
そもそも1機しか搭載しないのであれば通常のDDでよかったはずです。DDよりも個艦戦闘力の大きく劣り、建造費も乗員も多いDDHを調達する理由はなかったでしょう。
極論言えば、いずも級に有人ヘリを集約し、併せて早期警戒、対潜哨戒用固定翼無人機を搭載して、DDにはVTOL式の対潜無人機を2機ずつぐらい搭載する方が合理的です。
そして必要に応じてF-35をテンポラリーで搭載する。その比率は任務によって変える。
ひゅうが級はDDHあるいはヘリ空母、DDとしても中途半端なので、飛行甲板に代わりに大量のVLSを搭載してアーセナルシップとして改造すれば艦隊の火力は大幅に向上するでしょう。
いずれにしても日経の記事は無人機の運用と海自の人手不足という視点が抜けています。

護衛艦「いずも」 海上自衛隊HPより
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10年ぶりに空自からの統幕長となった内倉浩昭統幕長は鹿児島出身で、俳優の哀川翔の高校の後輩、との噂。
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防衛大臣記者会見|令和7年06月13日(金)で質問しました。
https://www.youtube.com/watch?v=BX64YTsuBIU
12日の陸幕長、空幕長会見で質問しました。
6月12日陸幕長会見での質問。
https://www.youtube.com/watch?v=6yUSZHIIYls
空幕長会見2025年6月12日
https://www.youtube.com/watch?v=kNHiSikwqqs
Note に有料記事を掲載しました。
内張り装甲とスポールライナーの区別がつかなかった防衛省とJSF君
https://note.com/kiyotani/n/n5f35d980fc82
東洋経済オンラインに寄稿しました。
墜落事故の「搭乗員らしきもの」発言は謝罪したが…事実誤認は訂正しない防衛省の”二重基準”
財政制度分科会(令和6年10月28日開催)資料
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防衛(参考資料)
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編集部より:この記事は、軍事ジャーナリスト、清谷信一氏のブログ 2025年9月14日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、清谷信一公式ブログ「清谷防衛経済研究所」をご覧ください。








