技術系人材確保に赤信号:国家公務員採用試験が2年連続定員割れ

2025年度の国家公務員一般職採用試験(大卒程度)で、技術系区分の人材不足が深刻化しています。土木は合格者数が前年度より26%減の231人にとどまり、採用予定数に対する充足率は52%と半分程度に落ち込みました。建築も43%に下がり、技術系全体でも充足率は72%にとどまっています。

受験申込者数も2年連続で減少し、土木は20年前の半分ほどにまで減りました。背景には、民間企業による理系人材の早期採用競争の激化があります。

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人事院は8月の勧告で、技術系人材確保のための新たな採用ルートを設け、試験合格者を早期に確保する仕組みや専用試験の導入を検討すると発表しました。

さらに、総合職の初任給を5.2%増の24万2000円、一般職を5.5%増の23万2000円に引き上げ、超過勤務の縮減や勤務環境の改善にも取り組む方針です。ただし、大手建設会社などが初任給を30万円台に引き上げる中、公務員の給与は依然として見劣りする水準です。霞が関特有の長時間労働もあり、就職先としての人気低下が進んでいます。

実際に、中央省庁では若手官僚の早期退職が相次いでいます。総合職では入省10年未満で退職する人が6年連続で100人を超えています。国会対応や「質問取り」による深夜勤務が常態化し、答弁作成が午前2時近くまで及ぶケースも多く、働き方改革は急務です。

人事院は給与の平均1万5000円加算や業務調整手当の対象拡大などを提案しましたが、年功序列型の人事制度や国会運営の非効率が改善されなければ、志望者の増加にはつながりにくい状況です。

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一方で、国家公務員試験の難易度は大きく下がっています。たとえば国家一般職(関東甲信越・大卒)の筆記試験倍率は2012年度の7.19倍から2025年度には1.85倍に低下し、国税専門官も3.38倍から1.21倍まで下がりました。合格最低点も大幅に下がり、短期間の学習で合格できる試験が増えています。

待遇改善や年齢制限の緩和により、公務員は転職希望者や30歳前後の社会人にとっても魅力的な選択肢となりつつあります。最終合格後は採用候補者名簿に5年間登録されるため、30歳で合格しても35歳まで採用のチャンスがあります。

しかし、民間企業との人材獲得競争に打ち勝つためには、給与の引き上げだけでなく、人事制度改革や働き方の抜本的な見直しが欠かせません。