絶対に怒らない人の頭の中

黒坂岳央です。

下記の記事が大きな反響を読んでいる。内容は「怒らない人から思考を教えてもらった」というものだ。

絶対に怒らない人の思考の仕方を教えてもらった話
夏の初めくらいから集中的に、他人から絶対に怒らない人、と職場で評判の人たちに話を聞く機会を得た。絶対に怒らないの基準としては、どんな…

大変参考になるとともに、「人それぞれ、怒らない技術は違うのだな」と興味を惹かれた。

現在、筆者は絶対に怒らない。元々は瞬間湯沸かし器のように怒りっぽくて攻撃的だったが、技術を獲得したことで全く怒らなくなったという方が正しい。紹介した記事とは別角度から筆者独自の怒らない技術を取り上げたい。

alvinburrows/iStock

1. 腹を立つ相手と関わらない

これはなかなか即日で真似することが難しい部分もあるが、最も効果が高い方法だ。ズバリ、一緒にいて不快になる相手とは距離を取る。

もちろん、面と向かって「あなたは自分とは合わない人だ!」なんてケンカを売るマネは絶対にしてはならない。どんな人も自尊心を持っているので、そんなことを言われたら相手の恨みを買って大変なことになる。だからさり気なく、静かに距離を取るのだ。

多くの人は「でもこの人にも悪くない部分もあるし…」「付き合う人を選ぶなんて上から目線では」と躊躇するだろうが、ここでの判断基準は本当にシンプル。「一緒にいたくないと思うかどうか」だ。これだけでいい。

本当は気の優しいという人でも、たとえば愚痴が多くて一緒にいると萎える、みたいな不快指数を急上昇させる要素があるならそれは距離を取る十分な理由になる。

人間は自分でも気づかないうちに健全で前向きな気持ちは徐々に削られてしまうものなので、不快な相手と一緒にいると知らず知らずのうちに自分が怒りっぽくなったりストレスを抱えてしまう。

世の中にはたくさんの人がいる。せっかく一度しか生きられない人生なら一緒にいて楽しい人と関わるようにすればいい。一緒にいて愚痴ばかり出る人より、前向きな言葉が多い人といたほうが良い。外に出れば世の中、いい人はたくさんいるのだ。

2. 相手に期待しない

これもよく言われることだが、相手に期待すると四六時中、思い通りにいかない相手に腹を立ててしまうようになる。だから相手には期待してはいけない。

もちろん、これは内容による。仕事のチームでビジネスなら話はまったく別だ。約束していたことや、それぞれの役割を全うする動きをすることは当然期待していいし、それが想定と違うなら相手にその旨伝えるべきだろう。仕事はお金という対価があるので、当たり前に取引先や顧客からの期待値を超えていく「義務」がある。

ここでいう「期待」とは契約外の話だ。たとえば「そのくらい言わなくても気を回してほしい」といったものだ。厳しい言い方をすると、これはテイカーの思考であり「それならあなたは逆に相手の期待値を満たす行動を全部できているんですか?」という反論を呼ぶことになる。

イチイチ言わないだけで、人はみな許し合っていかねば誰とも付き合えない「不完全な生き物」である。自分は不完全なのに相手に完全性を求めるのは、子供が親に期待する幼い思考から成長していない証拠だ。相手に期待して腹を立てるなら、その未熟な部分を改善しなければ一生周囲の人間に対してムダに怒り続けることになる。

思い返せば筆者が四六時中、いろんな人に怒って食って掛かっていた頃は、とにかく期待値が異常に高かった。「以前、こちらの身の上話をして自分の立場をわかってくれているのだから、そのくらい分かって手を貸してほしい」みたいな非常に身勝手な期待値があった。

周囲には迷惑をかけたと今では反省しているが、期待値がなくなるのと連動して、本当に怒りもなくなった。

3. 怒りはリスクが大きい

最後は「怒りはリスクが大きいということを理解する」である。これは以外に気づいていない人も多いのではないだろうか。イマドキ、人前で怒ることは想像以上にリスキーだ。

普段からよく怒る人は勘違いしている。それは「こちらが怒れば相手を意のままに動かせる」という思い違いだ。たとえば店員さんに怒鳴りつけている人は怒りの発散とともに、「自分の欲求を飲ませたい」という動機で行動している。極めて暴力的であり、文化的な行動とは言えないだろう。

ある程度、社会的地位が高くなってきて、年齢を重ねると怒りはドンドンデメリットしかなくなっていく。若者が怒っていても「若さゆえのエネルギーだ」と周囲も許してくれる。ところが中高年で怒っていると周囲は黙って避けるようになる。だから加齢とともに怒りっぽい人格を抜いていくことは極めて重要だ。周囲が怒る人にドン引きする理由は2つある。

1つ目は人前で怒りを見せることは人格の未熟さの露呈そのものだからだ。ある程度、年齢を重ねているのに怒りを上手に操る技術がない人生を歩んできたという履歴書になってしまうわけだ。

2つ目は老化だ。一般的に前頭葉が萎縮すると、感情をコントロールできなくなる。老化現象は不可逆要素なので、そうなれば相手は変わらない。つまり、原因が未熟であれ、衰えであれ、こちらに攻撃が飛んでくるのは御免被るということで相手から避けられる。

長年生きてくれば、仕事なり家庭なり守るものができてくる。そうなると人前でみっともなく怒るのはとんでもないリスクだ。

声を荒げる、なんて論外でイマドキは一億層ジャーナリスト社会で、録画や録音でSNSに流されたらビジネスマン生命は絶たれる。メールやチャットなどテキストもスクショされたら終わりだ。

中高年以降の人間が公衆の面前で怒ることは、「未開の原始人」のような扱いを受けるのが令和なので、その場で怒りを発散できるという小さなメリットにデメリットがまったく見合わない。日本に限らず、海外でも店員さんに怒る動画がSNSで拡散され、本人に批判コメントの雨あられ、みたいな光景はよくある。

なので、腹を立てそうな相手とは距離を取ることがリスクヘッジになるという1に戻る。

怒りは一瞬の快楽を与えてくれるかもしれないが、代わりに信頼・信用・人間関係といった長期的な資産を確実に削り取る。だからこそ、「怒らない技術」を持つことは、単なる感情コントロールではなく、人生をより豊かにする投資そのものだ。

 

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働き方・キャリア・AI時代の生き方を語る著者・解説者
著書4冊/英語系YouTuber登録者5万人。TBS『THE TIME』など各種メディアで、働き方・キャリア戦略・英語学習・AI時代の社会変化を分かりやすく解説。