米国式強欲資本主義では製造業は生き残れない勝てない

エアバスがボーイング超え 主力機の導入数、半世紀で初の逆転

欧州エアバスは主力航空機「A320」の累計納入数が米ボーイングの「737」の機体数を上回った。米航空産業に対抗するためフランスと旧西ドイツの共同出資で始まったエアバスにとって、逆転は約半世紀で初めて。品質問題に揺れるボーイングは新型機開発で遅れ、差はさらに広がる可能性がある。

エアバスの躍進はボーイングの「敵失」が大きい。

ボーイングは2018年、19年と新型機「737MAX」で連続して墜落事故を起こし、24年にも飛行中の機体からドアが吹き飛ぶ事故を引き起こし品質問題が長引いている。

米連邦航空局(FAA)は改善のため737MAXに月産38機までの生産上限を課した。生産数が伸びず現金流出が続く悪循環に陥り、12四半期連続の最終赤字に陥っている。

日本の航空部材メーカーは伝統的にボーイング向けを主軸とし、エアバス向けは少ない。737シリーズでは三菱重工業が羽の部品となる内側フラップ(高揚力装置)、ジャムコがギャレー(厨房)などを供給する。ボーイングの苦戦は日本の航空部品産業にも打撃となる。

買収したマクドネル・ダグラスの経営陣が入り込み、強欲資本主義経営を追求した結果です。かつてのモノづくり至上主義で堅実だったボーイングの哲学は忘れ去られました。

ひたすら固定費を減らすため、工場や従業員を削減し、過度なコスト削減を行い、さらに研究開発や設備投資も削りました。

それでバランスシートを見た目だけきれいにして株価を吊り上げ、新型機の開発には金を使わず、配当を増やしてきた。これは戦闘機も同じです。既存品の手直しで凌いできた。利益が出れば自社株買いです。製造現場が細るのは当たり前です。

無論、株価や利益に応じて経営陣は報酬を得られます。退職までなんとかなれば、あとは知ったことではない。

これはボーイングだけの話ではなく、米国の兵器産業、ひいては米国製造業全体の問題です。

外資のBAEにしても、買収したユナイテッド・ディフェンスの装甲車両は、装甲車にしろ自走砲にしろ、ほとんど既存品の手直しです。国内で新規に新型を作る能力はなく、製造ラインへの投資もなく、生産性は低いまま。兵器も欧州やイスラエルなどのものを米国内で作らせるケースが非常に多い。

いくらトランプが力んでも、兵器産業を含めて米国の製造業は復活しない。復活のためには今の強欲資本主義をやめなければならないが、それはできないでしょう。

日本の航空機ベンダーも頭が悪かった。私は以前からボーイング一本足打法の商売は危険だと申し上げており、エアバスの仕事もすべきだと述べてきました。防衛省から仕事が落ちてくるのと同じ感覚でボーイングの下請けをしてきた。まともな経営センスはなかったということです。

ボーイング社 Wolterk/iStock

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編集部より:この記事は、軍事ジャーナリスト、清谷信一氏のブログ 2025年10月10日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、清谷信一公式ブログ「清谷防衛経済研究所」をご覧ください。