韓国政府、職員共有のクラウドデータ 8年分 858TBが火災で消滅の教訓

韓国・大田市の国家情報資源管理院(NIRS)データセンターで発生した火災は、政府共用ストレージ「G-Drive」の全焼を招き、8年分・858TBもの業務データが失われた。「クラウドの安全神話」を問い直す教訓となりそうだ。

  • 韓国政府の「G-Drive」は職員共有のオンラインストレージで、1人あたり30GBが割り当てられていた。
  • 9月26日、大田市の国家情報資源管理院(NIRS)データセンターで火災が発生し、G-Driveを含む96システムが焼失した。
  • 火元はUPS(無停電電源装置)に使われていたリチウムイオン電池で、サーバー室と同じフロアに設置されていた。
  • リチウムイオン電池は発火後の消火が難しく、炭酸ガスや窒素ガスの消火システムでは鎮火できず、消火までに22時間を要した。
  • G-Driveのバックアップは存在したが、同じフロア内にあったために同時に焼失した。
  • 別拠点へのバックアップ(地理的分散)は、予算不足により整備が停滞していた段階で火災が起きた。
  • 被害は647システムに及び、行政サービスや証明書発行などが全国的に停止する事態となった。
  • 政府は復旧を急いだが、初期段階の復旧率は1~2割にとどまり、完全回復には数週間を要する。
  • この火災を受けて国家のサイバー脅威レベルが引き上げられ、ハッキングや情報流出の二次被害が懸念される。
  • 運用担当の公務員が庁舎から飛び降り死亡する事件もあり、組織的責任追及と精神的負荷の問題が浮き彫りになった。
  • 専門家は「UPSをサーバーと同室に設置」「リチウム電池の過密配置」「オフサイト・オフライン・バックアップの欠如」など設計上の欠陥を指摘した。
  • 「クラウドだから安全」という思い込みが、リスク分散・バックアップ確認を怠らせた面があると批判された。
  • バックアップは「存在」するだけでなく、「地理的分離」「異種メディア」「復元テスト」などが伴わなければ意味がない。
  • データセンター設計では、バッテリー設備を別棟に隔離し、リチウム対応消火システムを併用する必要がある。
  • リチウムイオン電池は「危険な過渡期技術」とみなされる懸念。

この火災は、技術的事故であると同時に「国家的データガバナンスの失敗」でもあった。リチウム電池の危険性、冗長化の不足、そして「クラウド=安全」という幻想が重なり、不可逆的な損失を生んだ。教訓は明確だ。データ保全は技術ではなく組織文化であり、分散・隔離・検証を怠れば、どんな国家システムも一夜で崩壊しうる。

李在明大統領はどう対応するのか? 同大統領インスタグラムより