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正直に言う。この話を聞いたとき、最初は「きれいごとだな」と思った。
「妊活期間は、神様が与えてくれた人生を見直す時間」
あるカウンセラーの言葉だ。赤ちゃんを待つ女性に、こんなことを言うのか。残酷じゃないか、と。
「癒やしのカウンセラーが見た 赤ちゃんを迎えた人がしている10のこと」(金丸綾花 著)健康ライフ選書
でも、違った。知人の話をする。30代後半で妊活を始め、3年。クリニック通い、漢方、サプリ、何でも試した。結果は出なかった。彼女は「私の人生、何だったの」と泣いた。
これだ。「授かれば幸せ、授からなければ不幸」。この二元論が、どれだけ多くの女性を追い詰めているか。
あのカウンセラーが言いたかったのは、たぶんこういうことだ。赤ちゃんがいてもいなくても、あなたの人生には価値がある。妊活の時間は、それを確認するための時間でもある、と。
きれいごとか? そうかもしれない。でも、きれいごとが必要なときもある。
月1回、1時間のカウンセリング。食事、生活習慣、そして「マインド」。漢方やサプリの効果を最大化するには、心の状態が決め手になるという。これは科学的にも裏付けられている話だ(調べた)。
もうひとつ。母体の健康は、将来生まれてくる子どもに直接影響する。つまり妊活中の体質改善は、「今の自分」と「未来の子ども」、両方のためになる。二重の意味がある。
「授かること・産むことが目的」。そう考える人には、このアプローチは回りくどく見えるだろう。わかる。私もそう思った。
でもさ。
思うような結果が出ないとき、「それでも、この時間には意味があった」と思えるかどうか。それって、ものすごく大きいんじゃないか。
焦りやプレッシャーから解放される。夫婦の絆を深める時間になる。——言葉にすると陳腐だが、実際にそうなった人を知っている。
妊活は孤独な戦いじゃない。というか、孤独な戦いにしてはいけない。正しいサポートを受けながら、心と体の両面から自分を見つめ直す。それが、結果がどうあれ、幸せへの第一歩になる。
たぶん、なるんだと思う。知らんけど。
※ ここでは、本編のエピソードをラノベ調のコラムの形で編集し直しています。
尾藤克之(コラムニスト、著述家、作家)
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