私が北米に来てしばらくして日本とのギャップを大きく感じた一つが投資家の投資姿勢でしょうか?投資とは知らない会社を分析し、可能性を探り、資金を投入するというそのたくましさに驚きとともに格好良さを感じたのはまだ若かったからかもしれません。
まだ、証券会社がネットでサービスをする前の80年代、日本における投資家のイメージは証券会社にたむろする小金持ちのオヤジがその象徴であった気がします。株価ボードの前に陣取り、株式新聞を片手に似たような投資ポジションを持つ隣席の人と株の話であぁでもない、こうでもないと盛り上がります。最近では中国でも同じような絵面が見られます。
日本の投資家の姿勢は現在に至るまで大なり小なり大して変わりませんでした。それは投資という教育が今日に至るまで十分ではなかったからかもしれませんし、日本人に血液型A型が多く、堅実で元本保証型の定期預金のようなものを好む性格であるからかもしれません。かつて証券会社が中期国債ファンドという商品を売り出した際、そのブームが尋常ではなかったのは高利回りで比較的元本割れリスクが少ないという触れ込みだったと記憶しています。
証券会社のビックバンで株式の取引手数料が何分の一から十分の一ぐらいまで下がった際、多くのギャンブラーが信用取引による投機に目覚め、株式市場の活性化につながったことは事実です。が、投資ではなく投機である点において、私が北米で感じた本来あるべき投資とは全く違うものでありました。
2000年代になり、私の知人や友人が北米でベンチャーキャピタルに投資したという話をするようになる一方、勝率は柳井正氏の本ではありませんが、「一勝九敗」、それでも勝ち抜ける計算に懐の大きさを感じたものです。
日経に「ベンチャー投資、最高に 1-6月2割増」とあり、日本国内のベンチャーに928億円の資金が廻ったそうです。実に結構なことです。大手企業は現金をため込み、いざというときのために持っておくという思想を染みつかせました。バブル崩壊やリーマンショックがそうさせたとも言えます。
ところが、孫正義氏はこれでもか、これでもか、と投資し攻めの姿勢を崩しません。英国アーム社を買収発表した際には株価が10%強も下落したのは「そんなに借金しても大丈夫なのか」という日本人独特の懸念も背景にあったと思います。
海外では借金はいいことだ、という発想があります。逆に金融機関の借金に対するセキュリティ(担保)の取り方は尋常ではなく、2-3年である程度の形を付けないと会社が倒産するリスクを背負います。それゆえの攻めの姿勢なのかもしれません。ROEなどの指標で日本が欧米に届かないのも借金に対する思想がまるで違うこともあるかと思います。
私の友人がひと月ほど前、「こんなのが出たよ」と教えてくれたのがTrackRという携帯型GPSです。日本のベンチャーが開発したものでこれを持っていると自分のものがどこに行ったかその居場所を追うことが出来ます。徘徊する老人にも応用できるし、自分の自転車など盗難リスクのあるものに着けることも可能です。しかも一つ3000円程度でまとめ買いすれば半額になります。こういうものはベンチャーだからこそできるアイディアだと思います。
日本は大手企業主導で国内経済を引っ張ってきました。しかし、その組織は巨大化し、組織の血管が詰まり、かつての勢いはなくなっています。まさに老化現象です。今、そのバトンは若い企業が夢と希望を背負い引っ張り上げ、中国や韓国などの量的追撃に技術で太刀打ちしなくてはいけません。
日本人はもともと器用で発明発見の能力も優れています。お金持ちの人も企業もため込むばかりが能じゃありません。リスクはあるけれど良いものを見抜き、資金を投じていく姿勢は日本の次の世代を支えるために意味あることではないでしょうか?
では今日はこのぐらいで。
岡本裕明 ブログ 外から見る日本、見られる日本人 9月7日付より