トランプ氏とマスク氏、次元が全く違う2つの力技ディール

曲がりなりにも経営者として日々葛藤する中で次元が全く違うディールを見ると自分の仕事はずいぶんちっぽけなものだと感じてしまいます。特に北米にいると大型ディールが頻繁に起こり、弱肉強食というよりも強い者同士ががっぷり四つとなり、相手を倒すのではなく、双方が相乗効果を目指して誰も追いつけないようなレベルになる、そんな世界をずっと見ています。

今日ご紹介したい2つのディール、その主はトランプ氏とマスク氏であります。まずトランプ氏のディールです。

トランプ大統領とマスク氏 ホワイトハウスXより

実は私は半年程度月前から原油にご執心であり、原油関連の株にもそれなりに投資をさせて頂いています。あの当時、マーケットは下値模索でした。理由はOPEC+が増産の手を緩めず、世界需要に対して供給が多すぎるという懸念であります。しかし、私が見たのはそれはごく短期的な視点であり、原油の心地よい相場は70㌦台、アメリカはシェールオイルを新規開発するなら少なくとも60ドル台後半でないと投資家が誰も金を出さないという前提を考えると50㌦台は大バーゲンに見えたのです。

ご承知の通り物価はなんでもどんどん上がりました。特にコモディティは例外なく何倍かに価格上昇したのです。とするならば原油だけが取り残されることはおかしい、こう考えていたのです。

トランプ氏も同じ考えを持っていたはずです。ここからが氏の力技です。ベネズエラをまず押さえます。次いでイランを威嚇します。3つ目にインドにロシアからの原油を買わせないディールをします。こうなると世界で算出される原油に色がつくのです。あてにできる原油とできない原油です。当然原油市場は引き締まります。ここでOPEC+が増産を止めたのです。価格がピックアップしてきたので増産を止めるのです。考え方が真逆ですね。アラブの金持ちの発想でしょうか。

仮に原油がこのまま60㌦台から70㌦近辺まで上がるトレンドになるとします。アメリカにもたらすメリットは莫大です。まずベネズエラ産の高コストの原油の採算性が改善します。アメリカ国内のシェールオイルもリグ数が増えるかもしれません。そして大消費国家中国が原油の手当てで苦しむかもしれません。ロシア産はインド振り向け分を中国に振り向ければいいじゃないか、と思うかもしれませんがトランプ氏はそうさせないはずです。お隣を貧しくして自分が富む経済用語で近隣窮乏化政策というのがありますが、トランプ氏は「敵国窮乏化政策」を通じてアメリカの利益を極大化する、こう仕向けているとみています。

2つ目の力技ディールはイーロン マスク氏のグループ企業内企業再編であります。スペースXがマスク氏のAIの会社xAIを39兆円で買収するというもの。これ誰が儲かるか、といえばテスラとマスク氏で何一つ面白くないじゃないか、と思われるでしょう。私はロケット、人工衛星、スターリンク…の流れで絶対に必要なのがAIだと考えています。なぜなら宇宙空間は人が殆どいないので人間に代わり誰かが作業をしなくてはいけないのです。そのフィジカルAI(人型ロボット)はテスラ社が製造する、その知的ノウハウはスペースXが出す形で分業体制を敷き、宇宙空間ビジネスで圧倒的ブルーオーシャンを築くことができるのです。

アマゾン創業者のベゾス氏もブルーオリジンで頑張っていますが、私から見れば桁が二つぐらい違うのであります。

ではテスラはどうなるでしょうか?私はマスク氏よりIQが劣るので凡人の想像ですが、テスラ社はロボット製造販売の売上比率が今後急速に伸びて最終的にはEV販売部門を凌駕するとみています。10年後かもしれません。ではEVは諦めたのか、と思うでしょう。そんなはずがありません。トランプ氏が原油価格を政治的にどんどん引き上げればEVはまた注目されるでしょう。ロボタクシーも含めた自動運転化も進めば将来、日本の地方都市はロボタクシーだらけになっているかもしれません。

今日ご紹介した2つのディールは規模も金額も発想も普通ではありません。そのあたりの上場企業の社長の想像力では無理です。ではなぜこの2人には出来るのでしょうか?発想の原点が違うのだと思います。今までにない世界や社会を作りたい。そのためにはブレイクスルーをするのだと。その壁も1枚や2枚ではないし、厚みだってとてつもなく分厚いでしょう。彼らは時として蹴り上げて力技で壊そうとしますが、その裏には当然、周到な戦略も描いています。

ディール巧者はストーリーを作り上げ、明快なシナリオをもってすべての行動に関連性を持たせて展開します。思い付きの行動など1つもないのです。もう1つは誰も思いつかないことや「あいつはアホだろう」と思われることをせっせとやるのです。

天才のイメージはアインシュタインだと思いますが、実際はそうとも限りません。別に理数学に圧倒する能力だけがあるわけではないのです。考えるチカラ、逆転の着想、大衆思想と隔離し自分の頭で世界を描ける人であります。天才は特定分野に圧倒的強みがある一方、バランス感覚は極めて悪く、一般生活にはやや支障があるぐらいの人が多いのもまた事実です。トランプ氏は天才ではないけれど相当切れ者でディール巧者です。マスク氏は天才型でディールは無茶なやり方も多いけれど最後はナシをつけるタイプです。

日本ではこのようなぶっ飛んだ人にはチャンスがあまりありません。もちろん日本にも天才はいるはずです。統計的にはIQ130以上は人口の1-2%いるのです。(個人的にはマスク氏は150に近いと思います。そうなると比率は全人口の0.1%です。)日本の場合は社会がそれを好まず、才能に蓋をしやすいのです。よって単独で活躍しやすい音楽など芸術の世界でとてつもない才能を見せるのです。日本社会はギフテッドに与える道はビジネスではなく、違う世界に向かわせているとみています。日本もそのあたりの考えを変えれば面白いディールの話は開けてくるようになると思います。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2026年2月6日の記事より転載させていただきました。

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会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。