中盤以降の下馬評の通り、今回の解散総選挙は高市自民が大勝した。勝因はにわか作りの中道改革連合の噓臭さが有権者に見透かされたという敵失の要素が大きいが、結果的に日本よりも中国の国益を代表しかねない公明と立憲の媚中野合勢力を一先ず喰い止めた事は日本にとって明るい兆しとはなった。
もっとも、大勝は白紙委任を意味しない。むしろ本番はここからであり、本稿は高市総理への要望を「注文書」として突き付けるものである。

高市首相 同首相Xより
消費税減税財源は、歳出改革を以てせよ
まず消費税減税である。高市政権が掲げる減税路線は評価するが、財源論を曖昧にしたままでは、かつての「減税ポピュリズム」と同じ袋小路に陥る。財源は国債でよい、という雑な議論では国民は納得しない。高市首相は減税を給付付き税額控除導入までの繋ぎとして食料品のみの2年間0%課税としたが、では給付付き税額控除には追加の財源はいらないのだろうか? もしそうならトータルで減税して増税して行って来いとなり国民の財布が多少なりとも温まったのは束の間だったという事となる。
消費減税含め積極財政の財源は、基本的に国債増発でも他税目の増税でも「ジャパンファンド」でもなく、男女共同参画事業や子供家庭庁予算等の中の冗費の削減と予算の組替え、なかんずく社会保障改革であるべきだ。ここから逃げてはならない。医療・介護・年金の給付と負担の歪み、高齢者偏重の給付構造、効果検証なきバラマキ施策――これらにメスを入れずして減税を語る資格はない。意味曖昧な「責任ある積極財政」というキャッチフレーズに具体的な目鼻を付け魂を入れるにはそこに踏み込まねばならない。
高市政権には「嫌われる改革」をやり切る政治的体力があるはずであり、ここで逃げれば大勝の意味は消える。
中露一体視の「ちゅーろ病」からの脱却を
次に外交・安全保障である。最大の懸念は、依然として日本の保守言論に蔓延る「中露一体化しての敵視」という思考停止である。
高市首相は、トランプの中露離反・拡大中国包囲網構築の基本戦略をよく理解しておらず、中露を一体で敵視し「ちゅーろ、ちゅーろ」と一つ覚えで鳴く、いわば冷戦頭の「ちゅーろ病」が治るとよいのだが、というのが筆者の願望である。
ロシアは中国の同盟国ではない。利害が一致する局面で便宜的に接近しているに過ぎず、長期的には中央アジア、北極海、極東で構造的対立を抱える。これを一括りに「中露枢軸」として敵視することは、米国の戦略とも齟齬をきたす。
その意味で、速報として報じられた「トランプ大統領が3月19日に高市氏と日米首脳会談を予定、衆議院選挙での高市総理と連立政権への支持表明も」というニュースは極めて重要である。
トランプの基本戦略は一貫している。第一に中露分断、第二に実質的な米露関係改善、第三に同盟国を巻き込んだ拡大中国包囲網の構築である。イデオロギーではなく、取引と勢力均衡で世界を動かす発想だ。トランプはこれを上策としており、それが叶わぬなら次善として米中露の三国鼎立、ともすれば習近平とディールして世界覇権を分け合う「G2」体制を容認する風情も見せるが、それは下策であり中国抜きでレアアース供給確保の体制が整うまでの偽装だろう。
その表れとして、トランプは新年早々、中国が勢力を伸ばすベネズエラへ侵攻し政権をソフト転覆。デンマーク自治領グリーンランドについては、買収もしくは武力行使のオプションもちらつかせ併合を画策。ウクライナ戦争ではプーチンに肩入れし、領土のロシアへの大幅割譲で決着させ「米露同盟」体制構築により中露疑似同盟に楔を打ち込む。イランデモに加勢し軍事攻撃オプションも含め政権転覆を狙い、進んではイスラエル側の立ち位置からのアプローチで中東平定を目論む風情である。挙句の果てには国連に代わる新国際機関「平和評議会」構想も打ち上げた。
高市政権の帰趨
高市政権がこの戦略を正確に理解出来るかどうかが、日本外交の分水嶺となる。ロシアを頭ごなしに敵視する「冷戦保守」を一掃できるか。ちゅーろ、ちゅーろと鳴くだけの思考停止を切り捨てられるか。そこに高市政権の真価が問われる。
内政の要諦は「ナショナル・ミニマムを伴う自立社会の構築」にあり、外交の要諦は「国際的大義を伴う長期的国益の追及」にある。そしてその「国際的大義」とは、各国、各国民がまずまず妥協して納得出来る継続的秩序である。既存の国際秩序が耐用年数を迎える中、不動産屋上がりのトランプは、多方面でのディールによってその構築を試みている。
今回の選挙結果は、高市早苗という政治家に対する「期待」と同時に「試験紙」である。減税はできるか、社会保障改革から逃げないか、対中戦略を語れるか、そして「ちゅーろ病」を克服できるか。
大勝した総理に必要なのは喝采ではない。注文である。ここに記した注文書にどう応えるか。それがJ高市政権の成否を決めると筆者は考える。






