noteの収益化が抱える理想と現実

mapo/iStock

「お金をもらっていいのだろうか」。

noteで有料記事を書こうとした人なら、一度はこの問いにぶつかったことがあるはずだ。本書はこの迷いに対して、受け取っているのはお金ではなく”信頼”だと言い切る。

なるほど、いい話だ。いい話なのだが——微妙だ。

noteの始め方―言葉で世界とつながる」(末吉宏臣 著)きずな出版

noteの公式レポート(2024年)によると、収益を得ているクリエイターは20万人超。有料記事の年間平均収益は約1万円。トップ1000人では平均1332万円。

……ちょっと待ってほしい。冷静に見てみよう。

20万人の平均が1万円で、トップ1000人が1332万円。ということは、残りの19万9000人はどうなっているのか。推して知るべし、だろう。数百円の「ありがとう」が経済を回していると本書は説くが、回っているのは上澄みのほうだけじゃないのか。

そういえば、先日noteで自分の記事の売上を確認した。まあ、金額は言わない(言えない、が正しい)。「信頼を受け取っている」と思えば聞こえはいいが、缶コーヒー数本分の信頼で生活はできない。

本書が紹介するエピソードは印象的だ。両親との関係に悩んだ経験を980円の記事にまとめた女性クリエイターが、100万円を超える売上を達成した話。有料記事を買う人の約7割がノウハウではなく”共鳴”を求めているというデータ。読者が読みたいのは「あなたにしか書けない言葉」だ、と。

わかる。共鳴は大事だ。正直な言葉は人を動かす。それは否定しない。

でも、その共鳴をどうやって届けるかが問題なんだ。書けば届くわけじゃない。noteに投稿したところで、誰にも読まれずタイムラインの底に沈んでいく記事が、いったいどれだけあるか。そこを書いてくれないと、ただの精神論で終わる。

はじめてnoteを触る人には、この本はいいかもしれない。「お金を受け取ることは悪いことじゃないよ」と背中を押してもらえるから。ただ、すでにnoteやブログで発信している人間からすると、「それはもう知ってる」としか言えない。知った上で、売れなくて困っているのだ。

概念は満点に近い。でも概念だけでは記事は売れない。

結局のところ、この本が教えてくれるのは”心構え”であって、”戦い方”ではない。心構えだけで戦場に出たら、どうなるか。答えは、書かなくてもわかるだろう。

もう一歩踏み込めたら80点台の一冊だった。

※ ここでは、本編のエピソードをラノベ調のコラムに編集し直しています。

尾藤克之(コラムニスト、著述家、作家)

<書籍評価レポート>

■ 採点結果
【基礎点】36点/50点(テーマ10点、論理構造7点、完成度9点、訴求力10点)
【技術点】22点/25点(文章技術10点、構成技術12点)
【内容点】21点/25点(独創性12点、説得性9点)
■ 最終スコア 【79点/100点】
■ 評価ランク ★★★ 標準的な良書

【高評価ポイント】

テーマの訴求力:「お金を受け取ることは信頼を受け取ること」という再定義は、有料記事への心理的ハードルを下げる力がある。収益化に後ろめたさを感じるクリエイターの背中を押す哲学として、一定の普遍性を持つ。

データの説得性:noteの公式レポート(2024年)に基づく収益クリエイター20万人超、有料記事購入者の約7割が”共鳴”を求めているというデータの提示は、主張に客観的な裏付けを与えているSNS発信の経験がない読者にも抵抗なく読める。noteの世界観を理解するための入門書としての役割は果たしている。

【課題・改善点】
方法論の欠如:
概念に終始し、具体的な収益化の手法が書かれていない。タイトルのつけ方、価格設定、SNS連携、マガジンの構成本数など、実践者が知りたい情報が不足している。

対象読者の限定性:すでにnoteやブログで発信経験のある層には物足りない内容であり、一方でまったくの初心者にとっては本を購入せずとも代替可能な範囲にとどまっている。書籍としての独自の存在価値が希薄である。

■ 総評
noteの収益化を「信頼の受け渡し」として捉え直す哲学的な視点には一定の価値があり、有料記事への心理的障壁を取り除く入門書としての役割は果たしている。公式データや具体的エピソードの挿入も効果的だ。

「信頼を重ねれば収益はついてくる」という主張は美しいが、どう重ねるかを示さなければ読者の行動は変わらない。はじめてSNSに触れる層には入り口として機能するものの、すでに発信経験を持つ読者にとっては既知の域を出ない。ただし、良著であることは間違いない。そこは誤解のないように。

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