高市首相の「トランプ無条件支持」は日独伊三国同盟より悪質

私が高市首相の訪米を日独伊三国同盟を結んだ松岡洋右外相以来の愚行だといったら極論だという人がいたが、道義的にみれば、トランプやネタニヤフがやっていることを高市首相は知ったうえで、「世界に繁栄と平和をもたらすのはトランプ大統領だけだということを世界に伝え、応援したい」といっているのだから、もっと悪質かもしれない。

戦時中の日本や東条英機元首相ら指導部は、ヒトラーの行ったホロコーストを理由に同盟国として罪を共有していると批判されることがある。

ただ、ヒトラーが最初から人類史上に残るような悪行を行っていたわけではないし、それを予測することも難しかった。

ヒトラーのガス室などホロコーストが本格化したのも1944年以降だし、しかも、ドイツの敗北の後にその事実が知られるようになったのだから、日本やイタリアが三国同盟を結んでいたからといって責任を問われても困る。

一方、そのトランプ大統領を無条件で応援すると宣言している高市首相を日本国民は選び支持しているのだから、高市首相だけでなく歴史法廷で弁解できないことになりかねない。

その意味で高市の訪米は日独伊三国同盟以来ではなく、それ以上の恥さらしだ。特に自民党の良識派の人たちも、内心どうかと思っているだけで行動しなければ共同責任を負うことを自覚してほしい。

ローマ教会とイスラエル政府・米国政府との対立も激化

ネタニヤフ首相の蛮行とそれを支持するトランプ大統領に対する批判は「中東の戦争は誰が悪いのか?どうすればいいのか?」で書いたし、より詳しくは『国家の興亡史からわかる現代地政学――西欧の衰退』(さくら舎)で論じたが、もはやナチスと比べるのも過剰な批判ではなくなる段階に入ってきている。

イスラエル国会がパレスティナ人だけに死刑を復活する人種差別法案を可決した。イスラエルでは、死刑を事実上廃止してきたが、これからは反イスラエル・テロで死者が出たら懲役刑の選択をなくし、無条件に死刑にし、執行も超短期間で異議申し出をする時間を与えずに行うという。

米国出身のレオ14世教皇が棕櫚の日のミサで、トランプに宣戦布告した。戦争を始める者たちの「手に血がまみれている」から神がその祈りを無視すると宣告した。ヘグセス国防長官は、こともあろうか「主よ、賛美せよ、私の岩よ、私の手を戦いに、私の指を戦闘に鍛えられるお方。我が愛する神、我が要塞、我が砦、我が救い主、我が盾、私が身を寄せるお方」などとしたのに対して、「兄弟姉妹たちよ、これが我らの神です。平和の王イエスは戦争を拒絶し、戦争を正当化するために誰にも利用されないお方だ。彼は戦争を仕掛ける者たちの祈りに耳を傾けず、それを拒絶する」と反撃した。一方、イスラエルはエルサレム大司教がミサのために聖墳墓教会に立ち入ることを禁止する暴挙を働いた。

ヒトラーの蛮行にいつ気がつくべきだったか

ドイツでは、ナチスの活動ができないだけでなく(共産党も非合法だが)、ジェノサイドの存在を否定すること、ナチス式の敬礼をすること、鉤十字などを販売することなどを禁止してきた。

しかし、この神経質な扱いの裏には、臭いものに蓋をしている側面もある。欧米のほかの国でも、ヒトラーやナチスを評価したり、協力したりした人は多かった。「王冠を賭けた恋」で退位したウィンザー公とか、ケネディ大統領の父で駐英大使だったジョセフ・ケネディなどその典型だが、そのあたりをあまり議論したくないらしい。

そもそも、ラインラント進駐、オーストリア併合、ミュンヘン会談でチェコのズデーテン地方を獲得するまでは英仏も融和的だった。だが、1939年のポーランド侵攻を機に宣戦布告し第二次世界大戦が始まった。緒戦はドイツ有利で、フランスが降伏し、ペタン政権が樹立された。しかし、ソ連、ついでアメリカとも開戦し、敗戦までに、ユダヤ人に500万人の犠牲者が出た。

人類史上でも希有な悪魔的人物であることはいうまでもないが、どこで危険性に気づき、止めるべきだったのかを回答するのは簡単ではない。

ヒトラーの考え方は、「陳腐で空想的で、従来からの右翼過激思想を通俗的にまとめ上げただけだった」とキッシンジャーは言っているが、演説はカリスマ性にあふれ、敵を作り出していじめっ子的な快感を与える一方、知的な人にはそれなりに穏やかに好感を与える術を心得ていた。メディアや芸術家を活用した効果的な宣伝の天才だった。

ユダヤ人排撃にしてもマダガスカルあたりにユダヤ人の国をつくって移住させようとしていたらしく、1942年あたりから急にガス室送りが始まったので、早くからあの悲劇を予想できたわけではないということが大事なのだ。

つまるところ、大衆扇動型のカリスマで、みずからの民族や国家のことを過度に称揚したり、特定の民族や国を標的に集中非難する政治家がいたら警戒し、一線を越えた非人道的行為がないように情報収集を怠らないようにすることが大事だということだ。なんでも不幸のたねは中国にあるような保守系言論人の言説は、まことにナチズムと共通するところが多いのである。(この部分は『歴史の定説100の嘘と誤解』扶桑社新書より)

【目次】
第1章・日本古代史――古代史に謎などない
第2章・日本中世史――愛と欲望に生きた中世人
第3章・日本戦国史――信長・家康より秀吉
第4章・日本江戸時代――江戸時代礼賛論の死角
第5章・韓国史――韓国は日本の兄という嘘
第6章・中国史――中華思想史観の虚構
第7章・西洋史I(古代・中世)――誤解だらけの西洋史
第8章・西洋史II(近世)――米国独立と仏革命の裏側
第9章・世界と日本の近代史――明治日本の世界史的偉業
第10章・世界と日本の現代史――平成日本の危機と世界史
◎『日本書紀』の万世一系が「史実」である証拠
◎南朝正統説は徳川氏が新田一族だったから
◎本能寺の変をマキャアベリに倣って分析する
◎江戸300藩の大名は愛知県出身者が過半数
◎日本統治が書き言葉としての朝鮮語を与えた
◎中華人民共和国の国名は日本語からの輸入
◎ジャンヌ・ダルクは男系男子継承の守護神だ
◎フランス革命の原因はマリー・アントワネット
◎明治憲法は当時の欧州でも超先進的な憲法
◎ゾルゲに憧れてKGBに志願したプーチン

エルサレムのゴルゴタの丘があったとされる聖墳墓教会にて

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コメント

  1. 早川蒼真 より:

    まず、私は軍事圧力や空爆を称賛すべきだと言うつもりは全くありません。

    筆者が高市首相の“トランプ無条件支持”という姿勢に懸念を抱く気持ちは理解できます。
    ただ、本稿には足りない視点があります。では、核拡散や中東の武装勢力拡大という現実の脅威に、具体的にどう対処するのか、という問いです。

    国際政治は、ウルトラマン対怪獣のような善悪二元論では動きません。リアルポリティックスがはびこる世界です。
    かつて平沼騏一郎は「欧州情勢は複雑怪奇」と嘆いたが、イラン問題の複雑さはそれに輪をかけている。
    綺麗事だけでは平和を守れない局面があり、時に不快で非人道的に見える選択肢を迫られるのが国際政治の姿だ。
    まさに「うんこ味のカレー」vs「カレー味のうんこ」
    実際、例えば西側も1999年のコソボ空爆で、国連安保理の承認を得ることなく78日間の軍事行動へ踏み切りました。
    「武力行使は常に悪」とは言い切れない現実がそこにある。

    筆者はナチスのホロコーストを引き合いに出していますが、イランもまた自国民への苛烈な弾圧を行っています。
    1988年の政治囚大量処刑(推計2,800〜5,000人)
    2019年の「血の11月」での抗議デモ弾圧(約1,500人死亡)
    2022年のマフサ・アミニ事件後の弾圧(子供を含む500人以上死亡)
    上記のようにイラン体制は自国民に対しても苛烈な暴力を行ってきました。これがイランの統治の現実です。
    このような国家やヒズボラのような武装組織が核兵器を保有することを、国際社会は容認できるのでしょうか。

    「核を持たせてはならない」という点では各国概ね一致している。だが長年の外交的アプローチは結果を出しきれませんでした。その限界に対するトランプ政権なりの回答が、軍事的圧力や空爆という選択肢です。(これを賛美するつもりは毛頭ないが)これを批判するならば、「では代替案は何か」を考えないと無責任だと思うのです。

    「トランプは悪」と断じた瞬間に、核拡散という現実の脅威から目が逸れる。
    それこそが最も危ういのではないでしょうか。
    「核を持たせないために何をするのか」を正面から論じるべきだろう。

  2. 高橋悦夫 より:

    プーチン対応で動かなかったトランプ大統領の戦略脳がイラン核施設空爆で目覚めた。クリントン・オバマ・バイデン・トランプ
    1.0は北朝鮮の核施設攻撃を躊躇し宥和策で対応した結果北朝鮮に核を持たれてしまった。核を持とうとする独裁者を止めることは
    出来ない。ウクライナの併合を目指すプーチンも侵略を止めはしない。力で解決するしか道はないのです。力の出し具合を戦略家は
    知っている。イランの核施設及び軍事施設の空爆ですでに初期の目的は達している。大規模地上戦までして全土を占拠する必要はない。後はイランの石油輸出の生命線を確保すればイランは立ち行かない。ホルムズ海峡封鎖で脅しても米国の知ったことではない。
    石油が欲しい国が対処すれば良いと突っぱねる。イランが封鎖すれば自滅。欧州・アジア諸国の存立危機的状況で戦艦を出すしかな
    くなる。日本を含む6カ国はすぐに存立危機的状況に至る。米国戦略に自由民主主義陣営を引き込む全く優れた戦略をトランプ大統
    領は展開出来るようになっている。イランも戦略を理解出来るので海峡封鎖はできない。自滅をとるか核を放棄するかはイラン次第。
    イスラム革命防衛隊ブァヒディ司令官(ヒトラー型)とペゼシュキアン大統領(頼朝型)どちらの策に帰結するかそのうち分かる。
    仲介のパキスタン首相が信長型なのですべての核査察を受け入れる可能性も強い。
    最強の米国と同盟強化を徹底する高市戦略に欧州も共同歩調を取らざるをえない。
    日独伊の三国同盟は最強の米国・ソ連などと対峙する無謀の同盟。最強の米国と組む高市戦略は最高の策。悪いとは何とすっとぼけ
    た理屈。こうした質が見分けられないのがヒトラー・東條型思考で真逆に飛び出す。